見出し画像

no me amo

コインランドリーは制約が多い。
禁煙、ゴミのポイ捨て禁止、飲食不可、撮影禁止、おむつ・ペット用品・油汚れなどによる汚れのひどい衣類・屋外マット等の洗濯禁止。8つの赤い禁止マークが嫌でも目にはいる。

昼夜逆転した生活を送るとき、私はよくコインランドリーを使う。誰もいないひっそりしたコインランドリーは時計の音とドラム式洗濯機が回る音しかしなくて、清潔だなってイメージ。まだ読みおわってない小説を携えて乾燥が完成するまでの時間を待つのもいいし、広告を見ることと引き換えに漫画を読めるアプリを使って時間を潰すこともいい。でも私が好きな過ごし方は、隣のコンビニでちょっとしたつまみとstrongzeroを買ってくることだ。しかし、コインランドリーはもちろん上記にある通り飲食禁止なので、強制でテラス席に座ることになる。テラス席と言ってもそこに椅子はない。しゃあないから駐車用のパーキングブロック(というらしい)に座る。酷く惨めだ。まるで田舎の周りの迷惑を考えないヤンキーになったのかと錯覚する。いや、錯覚じゃねぇか。これがお昼とか夕方とか健全な人たちが活動する時間であったら、私はたちまち近所の人から変人DQN認定を受けてしまう。まぁ、深夜だから許してくれや、と軽率な気持ちで昨夜もささやかな一時を送らさせて頂いた。アジフライ、コロッケ、ストゼロ。最近揚げ物と酒の組み合わせに妙にハマってしまってる自分がいて怖い。これは肥る前兆や!!それにしても中濃ソースとタルタルソースを付け合わせにくれた店員に乾杯だった。おそらくアジフライ用に存在していただろうタルタルソースとコロッケの組み合わせは予想外のマッチだった。今日は良い発見をした。満足なお気持ちで少しうかれつつコインランドリーに再入場したらちょうど私の洗濯物が仕上がったようだ。なんともタイミングの良い話。

好きなスペインポップのプレイリストをspotifyで流しながら乾燥機を開けて、洗濯物を鷲掴みした瞬間に電流が流れた。静電気は神様からの小さな警告のよう。浮かれてんじゃねえぞ。って脳内に直接語りかけられてるみたい。うずまき管が内側から揺れていく。

酒が回った頭は考えるべきことと考えずに放置した方が生きやすいことをぐちゃまぜにして眼前に突きつけてくる。思考は非論理的に感傷的に構築され、一気に他者が妬ましく感じられた。才能があるものたちの生活。愚直に自分の幸せを追い求められるものたちの生活。私にないものを持っているものたちの生活。同時に私を満たしてくれる周りにひたすらに申し訳なくなっていく。与えられた幸福を素直に受け取れない自分が嫌になる。

洗濯物を畳終え、帰路についたとき肌寒い空気の中で真っ赤な色のパトカーが近くの八百屋の前に停まっていた。

そんな夜があった。

いいなと思ったら応援しよう!