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あまりにも陳腐に

好きなアーティストさんが「冬の匂い消えた」と呟いていたように、新しい春がまた来訪する。
愛しのモラトリアム期間にさよならを伝える時間が来たのだ。

4年間腰を下ろした地から、日本の中心へと職を求めて転居する支度を淡々と進める日々に飲み込まれていく。

思えば時間の経過というのはいつも苦痛を伴うものだった。
慣れ親しんだ人、場所、風景から引きはがされる感覚で、殊更以前のそれらを好んでいれば後になって悲しみが湧いてくる。

わたしは鈍い性分なので、いつも人よりワンテンポ遅れて憂鬱な気分に陥る。
阿保らしいことこの上ないが、生活から当たり前の存在が消えたその時にやっと有難さに気づくような人間なのだ。

「社会人」の前夜、母と兄と月島でもんじゃを食べた。
食事の間の会話は程ほどにしかなかったが、そこに私の不安を吐露する余白は残されていなかった。

共有できるトピックが、いつのまにかごくわずかに限られてしまっていた感覚を覚える。
いつからだろう、この場が油断できないものに取り替わってしまったのは。

3人が離れていたその期間に、各々が見つめてきたものが違いすぎたのかもしれない。
前にもこんなことが他のコミュニティであった気がする。

変化に翻弄されて発生する戸惑いから解脱できるのはいつになるのだろう。

結局は、徐々に段階を踏みながら、新しい環境に慣れていくことしか道は残されていない。

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