島と私と君
「島っぽ過ぎずに、落ち着いてるね」
高校2年の頃から憧れてた五島列島福江島へ、
大学4年になって初めて向かうことができた。
福江に向かう船は、到着地に待つ人もいれば、私たちのように余所者として島に訪れる人もいたようだった。いずれにせよ、波が、風が、鈍い光が、私たちを運んでくれた。
島、というと何だか開放的で、それこそウチナータイムじゃないけど時間がゆったりと流れているような印象を抱く。けれど、私が五島に求めていたのはそういった「ゆるさ」みたいなものではなかった。
きっかけは「この作品は自分でお金を出して全ストーリーを集めたいと思えるし、これからも手にしていたい」と思う作品の1つ。
愛しいキャラクターたちの瞳に写っていた海、木、街、建物、空気。ただそういった環境的な要素を摂取したかったんだと思う。私の心には、「島」という言説よりも、「あの作品の」というロマンの方が魅力的だった。
それ以外の存在に、作品に現れた彼ら以外の存在に、邪魔などされたくないとさえ無意識下で思っていたかもしれない。共に築き上げていく場所としては、そこはあまりにも憧れが強すぎた。
人は、今を見据え続けることよりも、過去や未来を空想して過ごすことが多いと言う。きっと私は後者にいたのだろう。
君と一緒にあの地に身を寄せることができたのもまた嬉しかったのも事実なのだったけど。思い出してほしい。旅は私にとって逃避だった。
未だ、2人で過ごした記憶を処理しきれず、戸惑うじぶんがいる。
思い出作りのために、これまでの記憶を愛しむために赴いた旅ではなかった。私は、私と彼らを見つめる場としての五島に思いを馳せていた。
君の目を見て、まっすぐ伝えられない己の矮小さが、どうしようもなくって。いつも通り最低な私だ。
だから、2人でじっくり積み上げる余白があるところへ行こう。過去や未来をほじくるようなまねは、もうやめよう。どの口が、って笑われるかもしれないね。