戦術核弾頭から北朝鮮の核無人水中攻撃艇『ヘイル-1』の大きさを推測する
亜覧澄視
はじめに
令和5年3月24日に、北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)は3月21日から23日まで、新しい水中攻撃型兵器システム「ヘイル-1」に関する実験を行ったと報じました。
何年も前から北朝鮮が「核魚雷」または「核機雷」の開発を進めているという韓国の報道がありましたが、おそらくはこの「ヘイル-1」を指すと考えられます。 この「ヘイル-1」のサイズを推定するウェブサイトなどが見当たらなかったため、今回の記事はそれを行っていきます。
結論
「ヘイル-1」の大きさは、
直径約80.7~92.3cm、
全長約502cm~574cm
と思われます。
結論に至るまでの流れ
1 まず、3月24日に朝鮮中央通信がリリースした画像に注目しました。金正恩総書記が「ヘイル-1」の横で幹部らに指示を出していると思しき状況を撮影したものです(下の画像)。 背景には、「ヘイル-1」の図面らしきものが掲示されています。ここで、この図面から直径と全長の比率を出します。
マイクロソフトのペイントを用いて直径と全長がそれぞれ何ピクセルで構成されているかを確認します。
直径23ピクセルで全長143ピクセル、つまり、
直径と全長の比率は1:6.22
でした。
2 次に、3月28日に、朝鮮中央通信が3月27日に金正恩総書記が核の兵器化活動を指導したと報じた件に注目しました。
ご存じの方が多いと思われますが、この指導では「火山-31」と呼称される戦術核弾頭が登場したほか、これを搭載した「ヘイル-1」を含む各種誘導兵器の内部を示した一覧図が掲示されていました(下の画像)。
ここで、その図に掲載されているKN-25 600mmロケット弾と「火山-31」の図が役立つことになります。
ここで、事前に口径が判明しているKN-25から「火山-31」のサイズを割り出し、そこからさらに「ヘイル-1」を割り出すことを試みました。
これもマイクロソフトのペイントを用いて直径と全長がそれぞれ何ピクセルで構成されているかを確認します。
KN-25の直径(600mm)は13ピクセル、つまり、
1ピクセル=46.1mm
となるため、「火山-31」は直径507mm(11ピクセル)で全長が1106mm(24ピクセル)でした。
ここで、本題の「ヘイル-1」の図もピクセル数を出すと、
直径が20ピクセルなので、923mm
となり、上で紹介した「ヘイル-1」の直径と全長の比率(1:6.22)に当てはめると、
全長は5741mm
となるのです。
ちなみに、「火山-31」と「ヘイル-1」の直径の比率を確認したところ、
507:923=1:1.82
でした。
これだけでは正確性に欠けるので、もう1枚の画像から「火山-31」を通じて「ヘイル-1」の全長の算出もしてみます。
口径が確定しているKN-25と「火山-31」が同一に収まっている画像が、算出に使える便利なものになることは言うまでもないでしょう。
上の画像の右側最前列にある「火山-31」と左端のKN-25を比較して見ます。ここでは、可能な限り前者の延長線上にあるKN-25の部位を比較対象に用いなければなりません(ただし、どうしても誤差は生じます)。
これも直径と全長がそれぞれ何ピクセルで構成されているかを確認すると、KN-25の直径(600mm)は23ピクセル、つまり、
1ピクセル=26.1mm
となるため、「火山-31」は直径443.4mm(17ピクセル)で全長が939.6mm(36ピクセル)でした。
前述の「火山-31」と「ヘイル-1」の直径の比率=1:1.82を上の画像から得られた数字に適用してみると、
443.7:807
となり、これも直径と全長の比率である1:6.22を当てはめると、
807:5020
が導かれます。
結論(その2)
以上の計算で得られたものを当てはめると、
「ヘイル-1」:直径約80.7~92.3cm
全長約502cm~574cm
「火山-31」: 直径44~50cm
全長94~110cm
と推測することができました。
おわりに
この「ヘイル-1」はロシアの原子力無人潜水兵器「ポセイドン」.の影響を受けたものと思われているものの、「ヘイル-1」の開発開始が「ポセイドン」が初登場した3年前とのことから、その実際の運用方法を含めて今後も注目していく必要があるでしょう。