北朝鮮海軍の動向など(日本海側)
亜覧澄視、小泉悠(@OKB1917)
はじめに
前回に新浦南造船所における新潜水艦の建造の兆候を世界に先駆けてお知らせしましたが、今回はその続報を含めて日本海側の北朝鮮海軍艦艇(東海艦隊の艦艇)の動きなどを衛星画像を交えて紹介します。
新潜水艦建造の続報など
結論としては、「現在も継続して建造の動きがキャッチされている」ということになりますが、興味深いことに、昨年9月に北朝鮮が進水させた戦術核攻撃潜水艦こと「金君玉英雄」号が新浦港でドック入りをしている様子が確認されました。
新浦南造船所の状況
前回紹介した大型の部品が移動されたほか、別の部品が置かれるなど建造が進んでいることが見受けられました。
新潜水艦基地の状況
この基地の詳細については以前に紹介したため、今回は衛星画像を中心に変化をお知らせします。写真の通り、海沿いの護岸や整地作業が概ね終えたように思われますので、今後は道路が整備されるかが注目されるでしょう。
SLBM潜水艦の状況
新浦南造船所の一角には、コレ級こと「8.24英雄」艦と新浦C級こと「金君玉英雄」艦が停泊しており、昨年9月以降から変化が見られなかった。ところが、24年5月に「金君玉英雄」艦が付近のドックに入るという特異な動きが見られたので、紹介します。
通常の停泊場所に「金君玉英雄」艦が見られなかったことは特異なものであったため、就役前の公試などがあったのではないかと思われたことから付近を捜索した結果、停泊地から約3.5km東側のドックに入っている状況が確認されました。この軍民両用のドックは以前にも「ロメオ」級潜水艦や「8.24英雄」艦が整備を受けた場所であるために入っても不思議ではありませんが、通常は屋根の下に隠されていた潜水艦が無蓋式のドックに入っている状態というのはやや珍しく感じました。
進水から比較的早い時期にドック入りというのは不自然な気がしますが、入念に取り扱っていくという北朝鮮側の意思を感じます。ドック入りの後は航行や潜水などを含む実用化に向けた公試に入っていくのではないでしょうか。
文川基地周辺の状況
元山の北に位置する江原道文川基地に併設された10月3日工場(船舶修理工場)に、昨年秋から「トゥマン」級コルベットが移動したという情報はありましたが、最近になってようやく鮮明な衛星画像で事実を確定させることができました。
現時点では文川基地に配備されたものと思われますが、この場所に停泊している理由は判然としません。
南浦港で建造された「トゥマン」級と異なり、こちらは船体中央のミサイル格納塔が無蓋式となるなど設計の変更が行われています(これは「アムノク」級コルベットとの共通事項)。また、艦橋前には対潜ロケットか機銃が搭載されるなど新たな装備が確認されました。
元山造船所
元山港の西側に位置するもので、直近の停泊場は金総書記用のレジャー船や哨戒艇が停泊していることで知られています。造船所自体は民生のみならず上の「ヘサム」級高速ミサイル艇や「ナルチ」級高速戦闘艇(VSV)、最近では新型ミサイル艇も建造した実績があります。
今回は久しぶりに軍用艦(「ナルチ」級)が確認されたため、紹介します。
このVSVが新たに建造されたのかは判然としませんが、過去に元山と清津で建造されたVSVが35m級であったことを踏まえると、新しいものと考えてもいいと思われます。
旧金剛山観光地区
ここは以前は韓国資本で観光関連施設が建設・運営された場所でもありますが、2019年に金総書記が撤去を命じた結果、北が運営するホテルを含めて解体・更地となった経緯があります。
地区の埠頭には海金剛海上ホテルがありましたが、これも撤去されました。
驚くべきことに、ここの埠頭に東海艦隊の旗艦であろう「アムノク」級コルベットが停泊し続けているという情報がありましたが、これも鮮明な衛星画像で確認することができました。かつては南北融和の地として開発が進められてきましたが、結局は北朝鮮側に軍事利用される形となったことが明らかとなったわけです。
ただし、周囲が更地となった今、ここが拠点となったというより(以前から湾内の北側にある)別の基地から移動して常駐する形となっているのかもしれませんが、結論を出すには様子見が必要となります。
羅先港付近の基地
北朝鮮の北東にある羅先のすぐ南側には哨戒艇や旧式のフーガス級コルベットを配備する小さな海軍基地があります。
最近、ここに比較的新型の40m級対潜哨戒艇が配備されたことが確認されました。
参考資料:シュタイン・ミッツアーとヨースト・オリーマンズ . 朝鮮民主主義人民共和国の陸海空軍 . 大日本絵画 . 2021.
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