【ツアーレポート】 《岩手・二戸/夏②》子どもと旅をする 大人も楽しむ旅を
2023年8月開催の岩手県二戸市への「ほんものにっぽんをさがしのこどもたび」の記録(続き)をお届けします。
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岩手県二戸市でのキッズツアーは、夏、冬、春の展開を予定しています。ご参加希望の方、フォローすることで次のシーズンのお知らせ記事をぜひチェックしてみてください。
キッズツアーのすべてのコンテンツは、子ども目線でありながら、子どもだましではない、ほんものでありたい。大人たちにも保護者としての同伴者ではなく一人の旅行者として心躍らせてもらえるほんものでありたい。
そんなふうに考えて、その土地の食や手仕事、産業、暮らしの文化を見ることから地形や気候、風土を感じ、今と昔の文化を行き来するような旅を構成しています。
南部鉄器でおばあゃんとてんぽ焼き
この日訪ねたのは、金田一温泉郷のおばあちゃんたち。教えていただいたのは郷土のおやつ「てんぽ焼き」。アツアツの南部鉄器に、練った小麦粉をのせてギュッと挟んで焼く。季節風による冷害でお米の穫れなかったこの地域の貴重なおやつです。
「てんぽ」の名前の由来は、「足らない」「半端」という意味だそう。背景にあるのは、天保時代の銅銭(天保銭)。この天保銭、100文の貨幣価値であるところ、実際には80文としてしか通用しない、“少し足りていない”通貨だったことから、実際よりも足りていないものを、人々が「てんぽ」と呼ぶようになったのだとか。
素朴ながらほんのり塩味ともちもちとした食感がクセになる味わい。昔はこの道具が各家庭にあって、お母さんやおばあちゃんがおやつにてんぽを焼いてくれたのだそう。
オノオレカンバで木工体験
標高500m以上の山肌に根を張る堅い木です。「斧が欠けるほど堅い」と言われたことからその名が付いたというオノオレカンバ。例えば、馬ソリや船を漕ぐ魯、そろばんの玉など耐久性の求められる日用品に加工されてきたそう。
そのオノオレカンバでのキッチンツールをはじめとするプロダクトをつくるプラム工芸では、職人さんのお話を聞きながら、子どもたちがお箸作りを体験。
平らな面に指をのせることで自然に正しい持ち方になるようにと考えられた五角形のお箸。それぞれに長さや表面を整え、絵柄を描いて仕上げました。ここまでの行程に全力投球しすぎてウトウトしながらなんとか頑張る子の姿も。大人のように後ろの行程のために疲れないようにとセーブするなんて考えはなく、目の前の一つひとつに全力でエネルギーを注ぎ切る姿、子どもにしかできないなんとも素敵なこと。
プールが広い、空はもっと広い
金田一温泉郷の真ん中に位置する宿泊施設「カダルテラス金田一」には、大きなプール。到着するなりこのプールに飛び込んだ子どもたち、実は滞在中毎日入っていました(小学生50円、未就学児は無料)。プールはここじゃなくても入れるから……と大人としては言いそうになるのですが、子どもたちいわく、これだけ広くて空の下のプールで、それでいて都会のプールより空いているなんて、ここじゃないとないんだから!と。
大人も楽しむテロワール御膳
おもてなしの宿「おぼない旅館」で登場したのは、「まるごとテロワール御膳」。
二戸には、良質な肉から雑穀まで、この土地ならではの食材があります。「三大ミート」として誇るのは、雄大な稲庭高原でのびのび育つ「いわて短角和牛」、口溶けの良い脂が強みの「佐助豚」、こだわりの飼料で育てる「あべどり」や「菜彩鶏」といったブランド鶏。そんな恵を丸ごとのせて迎えてくれるのが「まるごとテロワール御膳」なのです。
この夜の時間は、大人たちにとっての大きな楽しみ。温泉のあと、ご馳走と地酒「南部美人」を楽しみ、あとはお部屋に戻ってぐっすりと眠るばかり……。小さな子どもたちとの子育てライフの中でなかなかそんな時間が取れなくて、この夜ばかりはと楽しみに。
地域文化を追いかける旅のなかで、土地の文化を支える人たち、地元の小学生、お宿の子どもたちと、さまざまな出会いがありました。そして、その出会いや学びを子どもたちそれぞれが、研究テーマとして追いかけて小学校の自由研究として発表してくれる姿も。旅を通じて子どもたちの研究心を応援することができたら、と思い、キッズツアーの企画を続けています。
同時に、子どもたちがワクワクと目を輝かせる姿、没頭する姿、そんな姿を見られれば親にとってはそれが旅のハイライトと分かっていながらも、共に旅する大人のみなさんたちにもたっぷり楽しんで欲しいと、たらくさ文化旅行舎は考えています。
私たちは、旅する大人と子どもの姿が大好きです。