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変な意地

ラーメン屋のテーブルに置いてある胡椒や高菜などの類を付け加える奴の気持ちがわからなかった。あんなものは外道だ。貴様らにラーメンを食う資格は無い。そんな風に思っていた。私は絶対に付け加えなかった。店が出したそのままのものを味わいたいからだ。ここ数十年ずっとそれでやってきた。やってきたのだ。

小一時間前、ラーメン屋に行った。味噌ラーメンチャーハンセットと餃子を頼んだ。カウンターに胡椒、醤油、ラー油、自家製の高菜が置いてあった。ふっ。外道が。彼らに一瞥をくれてから携帯をいじる。数分が経ち、餃子とチャーハンが来た。それぞれ半分ほど食べた頃に味噌ラーメンが到着。食す。不味くも美味くもないラーメンを完食後、半分ほど残っている餃子に手をかけながら自家製の高菜に目をやる。ふっ。外道が。壺の蓋を取り中身を見てみるとめちゃくちゃ美味そうな自家製の高菜が詰められていた。蓋を戻す。揺らいだ。ここ数十年張ってきた意地が揺らいだのだ。5分ほど考え、私はあろう事か自家製の高菜を半分ほど残っているチャーハンに付け加えた。自分でも驚いた。なぜだ。なぜこのタイミングで?今までの意地はなんだったのか?恥ずかしくないのか?貴様は外道に成り下がったのだぞ!恥を知れ!自家製の高菜入りチャーハンは、死ぬほど美味かった。

最近こんな事が多々ある。変な意地を張らなくなってきている。なぜかはわからない。

エナジードリンクを今まで飲んだことがなかった。あんなものは自分で自分を鼓舞できないような弱者が飲むものだと思っていたからだ。数ヶ月前、前日によく眠れなくてこれでもかというほど襲ってくる睡魔と戦いながら仕事をしていた日があった。自分の意識が体から離れていき銀河系に到達する手前、血迷った私はエナジードリンクを買ってそれを飲んだ。翼が生えた。文字通り生えたのだ。あの時の私は間違いなく飛んでいた。翼を授けられたのだ。こんなにもエナジーを与えてくれるの?

女性と歩く時は必ず車道側に立つ。必ずだ。意地でも立つのでウザがられる時もあった。もう何億年も女性と一緒に道を歩いてないな。この話はもうやめよう。誰も幸せにならない。

缶ビールは缶のまま飲んでいた。グラスに移して飲んでる人間にろくな奴はいないと思っていたからだ。これは偏見ではない。なぜなら今私が氷の溶けにくいタンブラーに缶ビールを移して飲んでいるからだ。

外で飲む時は必ずビールから飲む。よく1人でカラオケに行き、飲みながら歌っているのだけれどもこないだ行ったお店に生ビールが置いてなかった。ブチ切れようかと思ったが渋々頼んだ1杯目のハイボールは美味しかった。



色々なことがここ最近どうでもよくなってきた。昔より生きやすくなっている。意地というか自分ルールというか、そんなもの達が崩れてきた。それでも軸はブレていない。そもそも軸はちゃんとあったのかなんて言うんじゃない。ぶち飛ばすぞ外道共が。

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