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数日前の夕食のとき、妻が遠くの本棚に横たわっている巨大な本を見つけて、あれは何、と聞いた。それは『本の雑誌』創刊45周年記念に出た本の雑誌社の『社史』だった。「本の雑誌社という会社の社史だよ」と言うと、そんなものいるのか、と言われたので、「いや、あれは社史といっても普通の社史じゃなくて、中身は『本の雑誌風雲録』(著:目黒考二)『本の雑誌血風録』(著:椎名誠)という2冊の面白い本なんです」と答えて、なんとかその場を収めることができた。 その2冊の本を、僕はそれぞれ文庫本でも
最近の冬は張り合いがない、水たまりも凍らなくなったしダラシナイ、などと毎年のように言っていたら、今年の冬はなかなか骨のある冬になっている。おまけに数日後には大寒波襲来らしい。こうなると、待て待てそこまでしろとは言っていませんよ、と急に態度が軟派になってしまい、だらしないのはどちらだという話になる。でもまあ、夏にしろ冬にしろ、ちょっと極端ですよね。温暖化というか異常気象の常態化を感じます。 東京およびその周辺で暮らして干支一周ちょっと経ったけれど、都心でマイナス6℃の予報な
(その2から続く) 『映画を早送りで観る人たち』稲田豊史/光文社新書 かなり話題になった本のようで、僕が買ったのは初版1刷発売から約3ヶ月後に出た7刷だった。映画、あるいはテレビドラマやアニメなどを「早送り」や「飛ばして」観る人達についての論考だ。 いつだったか「映画館で映画を観られない人」についての記事を読んだことがあって、そこでは映画を観ている間に友人から何か連絡が来たりSNSで何か投稿があるんじゃないかと気が気でないから、という理由が語られていた(その記事でそう語
(その1から続く) 『宮脇俊三の紀行文学を読む』小牟田哲彦/中央公論新社 2021年の刊行だが、元は2019年にNHKラジオで放送されたの同名の連続講座がベースになっている。10章に分けて宮脇俊三作品を論じていて、おそらくここまで真正面から総合的に宮脇作品を論じた本はいままでなかったはずだ。僕もかなり宮脇俊三作品を愛読している自負があるけれど、これはかなりよくできた本だと思った。入門にもいいし、ファンにも読み応えのある一冊だった。 『台湾鉄路千公里 完全版』宮脇俊三/中
2022年に読んで印象に残った本を振り返りました。最初はサクサクと書こうと思っていたのだけど、終わってみれば長くなってしまったので3回に分けて投稿します。 『貨物船で太平洋を渡る』田巻秀敏/私家版 2022年の最初に読んだのがこの本だった。海上流通に強い興味を抱く著者が「何とかして、コンテナ船に乗船出来ないものだろうか」と思い、幾多もの手続きを経て実際にオーストラリアから日本へのコンテナ船に乗船した記録だ。 よほどの強い意志がなければ一般にはまずできない旅の記録でもあ