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骨髄ドナーになった話④(骨髄採取)
前回までの話はこちら
いよいよ入院の日です!
事前の説明で、特別病棟に入院になると聞いていたのでスーツケースに荷物を詰めていきました。
自分が病気になっても特別病棟に入院することはまずないと思うので、ちょっとワクワクしていました。
個室でテレビも冷蔵庫も使い放題、有難い……
ちなみに病院によっては相部屋の場合もあります。あくまで病院なので患者さんが優先ですし、ドナーの希望を聞いてくれるとかはないです。
私が入院した病院は、ドナーが特別室に入院できるよう配慮してくれているようでしたが、部屋代を患者さんが負担しているのか、あくまで病院の厚意なのかは敢えて聞いてないのでそこは何とも……
1.入院(骨髄採取1日前)
朝10時に入院です、と言われていたので時間通りに病院へ行くと、骨髄バンクのコーディネーターさんが待っていました。
コーディネーターさんの顔を見るとほっとします。大の大人の通院や入院に付き添ってくださって有難い。
最初に入院支度金として5000円を現金で受け取りました。
(結局そんなに使わなかったので、残りは造血幹細胞移植関連のクラファンに入金しました)
特別病棟に向かい、入院手続きをしたらコーディネーターさんとは退院まで暫しお別れです。
コロナ禍前は採取後に病室へ来たりしてたようですが、まだ面会もかなり制限されてますしね。
看護士さんが部屋まで案内してくれましたが、ベッドに柵がついてたりする以外、ホテルのようでした。
午前中に薬剤師さんと看護士さんが来て、採血を行いました。レントゲンを昼から撮りに行くよう言われ、採取当日着るための手術着を受け取りました。
昼ごはんを食べてからレントゲンを撮りに行き、その後は部屋に院内コーディネーターさん、調整医師、担当医が手術の説明などをしに来てくれました。
売店をのぞいてみたりもしましたが、ほぼ病室内で過ごしました。
病気ではなく元気なので、なんかベッドでゴロゴロするのも気が引けて、ほぼソファーで動画配信を見て過ごしました。
晩御飯のあと、血圧や体温などの測定と、21時からは絶食+明日の6時からは絶飲という念押し、そして、下剤を受け取りました……
私が入院前、恐れていたのが尿道カテーテルと下剤でした。
尿道カテーテルはこの病院では使わないということで安心してましたが、生まれてこの方、下剤なんぞ飲んだことがない(健康体だから)ので、ほんとに嫌で……
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あとはシャワーを浴びて翌日の手術に備えてすぐ布団に入りました。
……が、
……眠れない!!!
普段どこでも寝られて寝付きもめちゃくちゃいい私なのに、全然寝られない。
緊張しているのと、2時間おきに看護士が見に来るのが気になってほんとに寝られない!
明日は手術なのに……
結局ほぼ寝てない状態で朝を迎えました。
2.骨髄採取
前日、看護士から「明日は朝5時50分に採血しますからね~!」と言われていたので、寝てないけど5時半に起きて顔を洗いました。
入院してる人は大変だな……朝から叩き起されていきなり採血されるんだもんな、と思うなど。
時間通りに看護士さんが来て「最後に水分摂られますか?」と聞かれたので、お願いするとお水200mlをコップに入れてきてくれました。
これがいま飲める上限らしく、必ず6時までに飲み終わるよう言われました。
その後、採血を済ませるとあとは手術まで何もすることがないので、ゴロゴロしたりテレビ見たり。
9時から手術なので、10分前くらいに迎えに来ますねーと言われていたため、8時半くらいには手術着に着替えておきました。
手術着の下はパンツと靴下のみで!と言われていたのですが、何とも心許ない……
紐とマジックテープでとまってるだけだし、足がスースーする。
ここで採取を担当してくれる2人の医師が挨拶しに来てくれました。
先に手術室でまってますね!と爽やかに言い残して行かれました。
迎えに来てくれた看護士さんと一緒に歩いて手術室へ向かいます。
こんな姿、他の人に見られたくないよーーーと思っていたのですが、手術室へは専用のエレベーターで向かうので普通の服装の人は乗ってきませんでした。いまから手術する手術着の人が次々に乗ってきましたが、これはこれでシュールだ……と思いました。
「中央手術室」と書かれた大きな自動扉を入ると、中には広い空間があり、手術室自体は更にもう1つ扉の向こう側にあるようでした。
椅子がいくつか並んでいてそこで案内される順番を待ちます。
名前を確認されたあと、いよいよ自分の手術室へ向かうのですが、ここでなんと眼鏡を預けなくてはならず……
裸眼視力0.05の私、眼鏡がないとほんとに何も見えません。
手術室見られるの楽しみにしてたのに!!!!!
しょんぼりしつつ、ぼやぼやした視界ながら看護士さんが進む方へと向かいます。
でかい廊下の右手に手術室がいくつも並んでいるようで、いくつか通り過ぎたあと、看護士さんが足で何かを踏むと自動扉が開きました。
中の様子は、とりあえず広くて真ん中に手術台、壁にでかいモニターがあって、人が10人くらいいるのは分かりました。
手術台の隣の小さいベッドに仰向けになるよう言われ、寝転がった瞬間からめちゃくちゃ手際よく心電図の吸盤やら血圧計やら色々ひっつけられます。
麻酔科医が左手の甲に点滴の針を刺していますが、何か嫌な予感……何回も刺し直してるが……?
「痛いですよね、すみません!ちょっと右手に変えてもいいですか?」
まだ麻酔効いてないし普通に痛いよ!と思いつつ仕方ないので右手に変更してもらいました。
そうこうしてる間に口元にマスクがあてられて「ふかーく深呼吸してくださいね、3回くらい呼吸したら点滴から冷たいのが入ってきて眠くなりますからね」
いよいよ全身麻酔だ……!
会社の同僚が「全身麻酔は気持ちいいよ~!」と、言っていたのでちょっと楽しみにしていました。
深呼吸して腕に冷たいものが入ってきて……
?あれ??眠くならんぞ?
これ目を閉じたらそのまま手術始まるのでは(そんなことはない)
そう思って瞬きを何度かしました。
次の瞬間……
「起きてください!終わりましたよ!」
???!?!
え??ほんとに???いつの間に?
気管に入ってたはずの人工呼吸の管も抜かれて、いつの間にか手術室に運び込まれた自分のベッドに寝ていました。
「無事に取れましたからね」
そう聞いて何故か涙が出たのを覚えています。
ベッドのまま病室に戻ったのは11時過ぎ、病室を出てから約2時間でした。
点滴と酸素吸入を続けたまま、14時まで安静にするよう言われました。そしてまた採血しました。
あとは足にエアーマッサージ??のようなものがつけられました。
喉がイガイガするのと、腰に鈍い痛みがありましたが、どちらも思っていたほどじゃないなと思いました。
とりあえず家族や会社の上司にLINEで連絡し、仰向けでうとうとしました。
その後、調整医師が部屋に来て、私の骨髄液の細胞数がとても多く、採取予定量より少ない量で済んだことや、自己血輸血を行ったこと、腰の穴は2箇所で、骨には7箇所穴が空いているということを説明してくれました。
最後には「この度は本当にありがとうございました」と深深と頭を下げて出ていかれました。
医師からお礼を言われることなんて、人生でなかなかないよなー、逆はあるけどさ。
14時頃、医師の診察があり傷口から出血がないことを確認して消毒したあと、トイレに行けるようになりました。
トイレに行って採取したところを見てみると、意外と小さなテープが貼られているだけで、あとはマーキング跡が残っていました。
このとき、テーブルの上に小さな封筒が置いてあることに気づきました。中には病棟スタッフからのサンクスカードが入っていて、とても嬉しかったです。
夕方頃、院内コーディネーターさんが来られ、移植施設に無事に骨髄液が届いたことを伝えられ、移植施設からの手紙を受け取りました。
そこには、お礼の言葉と、私の骨髄液で患者さんを絶対に助けますという内容が書かれていて、なんだか本当に嬉しくて泣いてしまいました。
ずっとベッドで横になっていましたが、昨日の睡眠不足からか頭痛があり、今日こそはゆっくり眠りたかったので看護士に鎮痛剤くださいって言ったら案の定医師が来て診察になりました……
まぁ結局ほんとにただの寝不足だったので、ぶじに鎮痛剤はいただけました。
晩御飯は特別メニューでしたが、疲れていたのと絶食明けで、お腹はペコペコでしたが少しだけ残しました。
この日はシャワーもできないので、ボディシートで体を拭いてドライシャンプーして就寝。そしてこの日もわりと眠れなかった……
3.退院
採取翌日はほんとに一日ダラダラ過ごしました。
血液検査や医師の診察があるくらいで、あとは腰がまだ少し痛くて歩くのがノロノロだし、出歩くのも面倒なので部屋にひきこもりました。
あとは麻酔の点滴後が内出血で両手の甲がわりと大変なことになってましたね……真っ青だったよ。
退院日はまた朝6時に採血(……)、朝ごはん食べた後に医師が来て診察して、問題なかったので退院許可が出ました。
院内コーディネータさんや看護士さんなど、色んな方がお礼を言いに部屋まで来てくれて、病棟から出る時もみんなで見送ってくださいました。
どちらかというと自分の好奇心でやる気満々だった骨髄ドナーですが、本当にやってよかったなって思いました。
骨髄バンクのコーディネーターさんが出迎えてくれて、少し話したあと、病院を出ました。
このとき、コーディネーターさんから「患者さんと、患者さんのご家族の希望になって下さり、本当にありがとうございました」と言われました。
家に帰ると骨髄バンクを介して患者さんからのお手紙も届きました。
内容は詳しく書けませんが「ドナーさんがいてくれたから辛い治療を頑張れた。命を分けてくれてありがとう」といった内容が書かれていて、治療で辛い中、私に手紙を書いてくれたことが嬉しくて、泣きながら何度も読みました。私からのお手紙も出しました。
これで骨髄提供は終わりました。
採取後は、たまに腰が少し痛かった程度で、日常生活に問題なく戻れました。
腰にはほくろのような小さな傷跡が2つ並んでいますが、これもそのうち消えるのだと思うと少し寂しい気もします。