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『違国日記』感想。小説家の切り口で語られる、異物と孤独への文学的表現
漫画「違国日記」が面白過ぎて全巻読んでしまったので、面白さへの整理を付けるために感想を書きました!
※有料記事ですが、無料でほぼ全て読めます
全体を貫く雰囲気から来る面白さ
全くタイプの違う人間である、小説家の叔母・槙生と遺児・朝が一つ屋根の下で暮らすことによって起こる、いわゆる化学反応によって醸し出される文学的でコミカルな雰囲気が根幹の面白さだと感じています。
特に下記のような要素。
・朝の大っぴらな(例えば日記を開きっぱにする)様子、それに対する槙生の困惑。
・逆に、槙生の生活のできなさ(例えば、連絡をかえさない)に対する朝の困惑。
・槙生とその友人たちの、大人が大人として、親として振舞わないに交流にを見る朝のとまどい。
・槙生の才能に対する朝の畏敬。それを見た読者は、そうなんだよ! 普段はダメなんだが槙生は凄いんだ! という気分になり高揚する。
・槙生の語り口の文学的表現から来る高雅さ。そして生活のできなさを突っ込まれたときの、SNS口調のような弁解から来るコミカルさ。
・朝の犬のようなかわいさ。なんとなく物心ついていないような、ぼんやりとした丸っこい表情
話の進行から来る面白さ
朝の成長
朝は子供としてどれほどの恩恵を受けていたかを、両親の喪失というイベントにより徐々に知っていきます。その成長を追うことが、単なる雰囲気とは別軸の面白さとして存在しています。
それは家事であったり、無償の愛であったりするわけですが、特に後者を失った深い悲しみや孤独が槙生により丁寧に言語化され、かつそれが安易に解決されるではなく人間が広く持つ共通のしかし分かり合えない悩みであるということが諦観と共に表現されることが、この物語ならではだと感じます。
朝の両親の謎
朝の母親は槙生や朝に対して本当はどのような思いを抱いていたのか? 朝の母親と槙生の間には何があったのか? 朝の母親と父親はなぜ結婚していなかったのか? それには仄暗い闇の理由があるのではないか?
母親の日記という惹かれるオブジェクトを呼び水として、その謎が明かされていく過程を追うのも大きな面白さでした。
その他、良かったシチュエーションを箇条書き
・盥の感じのところ。カッコよさとクスッとくる面白さ、シリアスな笑い
・朝がまどろみながら槙生を見て、女王の片隅で眠ると言うところ
・朝、両親が死んだ悲しい過去があるのに特別感がでないことに悩んでいるのが正直すぎてかわいい
・笠町が男らしさの勝負から降りたと言ったところ
・笠町が槙生のそばに置いてもらえるだけで嬉しいと言うところ
・えみりが友達やめらんないじゃん、というところ
・槙生のひどさも見えてくるところ、朝に愛さないというところ、姉への当たりのつよさ
・槙生がおばあちゃんとの一杯を時間食うからという理由で拒否るところ
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Not For Me だったところ
以下は作品を貶める意図は全くなく、主に自分自身の整理と今後の創作への参考のための記載になります。
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