『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』感想。王道の妖怪バトルと大人の世界を繋げた作品
一月ほど前なのですが、映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を見たので、その感想です!(なので新生版ではありません)
ゲゲゲの鬼太郎を題材に素直に映画を作ると、妖怪大バトルになってしまうところ、「水木」というキャラをフックにして上手く社会的要素も入れ込んだ映画になっていました。
ターゲット
上の繰り返しになってしまいますが、いくら「ゲゲゲの謎」というお題があろうとも、「ゲゲゲの鬼太郎」の映画を普通に作ると、やや子供向けの妖怪バトルものになってしまうと思います。
ところがこの作品のターゲットは、小さいころに「ゲゲゲの鬼太郎」に触れていたような3,4,50代くらいの人がターゲットだと思われるので、単なるバトルものでは満足されないところ、「水木」という「ゲゲゲの世界」と「リアリティある大人の世界」を繋げるキャラクターを出すことで、その問題を上手く解決できていると感じました。「水木」と「戦争」という「リアリティある大人の世界」が切り離せないのは、NHKのドラマなどのおかげで、かなり共通認識になっているためです。
「水木」のキャラクターの登場のおかげで、昭和の経済成長とその闇であったり、後継ぎのお家騒動であったりの、大人的や社会的テーマが出てきても、違和感なく鑑賞を続けることができるようになっていますし、シンプルに『作者が映画に出るってどういうこと!?』というような、ミスリードじみた広告効果も高かったと思います。
演出
まず特徴的なのはグロ演出。感情を揺り動かされる要素であることは間違いないですし、上記の水木の登場により心構えが出来ているおかげで、下品な印象もさほど受けない仕組みになっています。
あとはカラスについばまれる死体の下りで目玉が加えられていたり、目にパイプが刺さって目玉がぽんと出たりと、目玉周りの表現が強調されていました。目玉おやじを彷彿とさせる、ゲゲゲ感のある演出になっていたと思います。
シンプルに、盛り上がってほしいところを盛り上げる、ベタな演出もしっかり入っていて、ラストへの盛り上がりが出ていました。
ややNot for meの話になって恐縮なのですが、自分は水木と紗代の話の解決が、その後のゲゲ郎の話に関係していないという点で、ストーリーに無理があったと思っていますが、鳥居の道を走りながら盛り上がるbgmを掛けたり、最後に巨大な怪獣を出しつつ盛り上がるbgmを掛けたりと、ベタだがあるべきな演出を入れることで、視聴者の興味を切らさずに映画の最後まで持っていけていたと思います。
途中の殺陣のシーンも、妖怪感ある水墨画のようなテイストで描かれていて、目を惹くものがありました。
また紗代は可愛らしく手助けすべきキャラクターであるにも関わらず、間接的に複数の殺人を犯しているという点で救うべきではない人間になってしまいますが、最後に天の方へ成仏する演出を入れることで、これもベタではあるが視聴者にとって後腐れのない解決になっていたと思います。
キャラ
前述の通り、紗代は正統派なヒロインらしき可愛さを持ちながら、ヤンデレ間というか、闇感があるキャラクターです。そしてそのヤンデレ感の表現を、ほんの少しの違和感程度に抑えていたのは面白い表現だったと思います。メインヒロインらしく可愛い紗代の性格を紐解くことが、物語の大部分に関係する謎を解くことに繋がっていて、紗代への注目し甲斐がありました。
あとはゲゲゲの鬼太郎と繋がりのあるキャラクターの描写。ゲゲ郎の妻は普通であればシンプルな美人と描かれそうなところですが、目が細い猫娘に似た女性として描かれていたのが、直感的な違和感からの謎解決になっていて、満足度をプラスする要素になっていました。
個人的な好みであれば、三女の庚子が好きです! ひときわ小柄な姿とクマのある不安げな目で、陰湿おばさん的な描かれ方をするのかな? と見せておいて、小柄薄幸属性に寄せに行ったかわいさで第一印象の予想を裏切られたのが印象的でした。
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