「特別講義」 大学受験予備校・河y塾・横浜校にて 1998年10月21日
[注:括弧〔 〕中は振り仮名の指定。]
! 河y塾塾生の皆さん!
本日の実演・講演、見に・聴きに来てくれて、ありがとう! 河y塾・駒場校第一期生・雪竹(ゆきたけ)太郎(たろう)と申します。今日一日限りは君たちの教師ですから、以下、少しだけ説教・法話を試みようと思います。少しでも、君たちの励みになればと希〔のぞ〕みます。半分聞いて下さい/上手に聞き流して下さい。
Ⅰ.しっかりと受験勉強しなさい。日本の受験勉強は、大学の勉強以上に身につきます。このときに覚えてしまった英単語、十年経っても忘れない……。
Ⅱ.大学に入学したら、思う存分遊びなさい。しっかりと遊ぶことが、勉学以上の勉強にもなります。このときに一緒に遊んだ友だちは、一生懸命憶えた遊びは・歌は・詩は、二十年、忘れない……。
そして、
Ⅲ.君たちが本当に社会に出てからの人生は、君たちに、もっと・もっとたくさんのことを教えてくれるはずです。君たちは/僕たちは、本当に、学ばなくてはならない……。
僕は、まだまだ弱輩者〔じゃくはいもの〕ではありますが、人生について・遊ぶということについて・学ぶということにについて、幾らかは、揺るぎない確信を持ち始めてもいる。
◆
もうひとつだけ、余計なこと、言っておきます。僕の言葉を信じて下さい・憶えておいて下さい・思い出して下さい!
Ⅳ.もしも受験に失敗しても・不本意な結果が出ても・落ちこぼれても・駄目になっても、そんなこと絶対に、何のことはない! そんなこと、怖〔おそ〕れてはいけない! どうせできそこないの人間たちの、人間世界を、だから、失敗・過ち・罪を怖れず、安心して生きなさい……。
思う存分勉強しなさい、受験しなさい、失敗しなさい!!
僕は、君たちに、例えばヨーロッパのジプシーの子供たちが、どんなに悲しげな顔をして、物乞いをして歩いていても、ひと仕事終えたなら、人気〔ひとけ〕ない田舎道、笑いながら・スキップしながら・謳〔うた〕いながら、帰っていく、
…… ♪C'est fini〔セ・フィニ〕♪ ♪C'est fini〔セ・フィニ〕♪ ♪C'est fini〔セ・フィニ〕♪ ♪C'est fini〔セ・フィニ〕♪ ……
( …… ♪おしまぃ♪ ♪おしまぃ♪ ♪おしまぃ♪ ♪おしまぃ♪ …… )
あんな姿を、見せてあげたい!
中学生のとき自殺して/させてしまった、君たちの/僕たちの友だちに、見せてあげたい! 皆を、生き返らせたい!
この世はどんなにボロボロになって/してしまっても、最後まで生きてみるのに値〔あたい〕するのだ。たかだか人間世界の我々が、ちっぽけな、また大それた罪や過ち、失敗を犯しても、そんなこと、たいがいどうってことない! 君が、どんなに悲しみに沈んでいても、苦しみ、悩み、また喘〔あえ〕いでいても、この世は・自然は・宇宙は、もっと・もっと、本当に・本当に、豊かなのです。君を、待っているのです。僕が、約束します!
その上で、 なお僕たちが本当に畏〔おそ〕れるべきもの、大切にすべきものこそ、この「命」、そして恐らく「死」なのです。
僕は、三十九才にもなって、たった今生まれたばかり、目覚めたばかりで棄〔す〕てられた、赤児〔あかご〕のよう。この世界が、畏ろしい・もの狂おしい・美しい、息苦しくてなりません……。
【最終加筆2021年1月11日】
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