「ふしぎな中国」(近藤大介) を読んで気になった事、学んだ事<メモ>
一、書籍を読んで理解、感じた事(感想)~まとめではありません~
1、 洗脳されていた中国のイメージ
本書を読むまで、私はマスコミ報道などを通じて形成された、中国に対する固定観念にとらわれていました。
しかし、本書では、中国の歴史や政治体制を客観的に分析し、現代の中国がどのように形成されてきたのかを論理的に説明しています。
特に、中国共産党の権力闘争や政策決定プロセスが、中国社会に大きな影響を与えていることがよくわかりました。
2、政治政策が国を大きく変える
中国は、大躍進や文化大革命、改革開放など、歴史上数々の大きな政策転換を経験してきました。
これらの政策は、国民生活に大きな影響を与え、国家の興亡を左右するほどの力を持っていました。
特に、鄧小平氏の改革開放政策は、天安門事件を契機として始まったという点に衝撃を受けました。
この政策は、中国の経済発展を牽引する一方で、社会的な問題も数多く生み出しました。
3、スマホに依存する中国の若者
本書では、中国の若者たちの生活が、スマートフォンに大きく依存している様子が描かれています。
特に、社恐(シャーコン)や躺平(タンピン)といった言葉は、現代中国の若者たちの特徴を象徴的に表していると言えるでしょう。
中国の若者たちは、スマートフォンを通じて情報を得たり、コミュニケーションを取ったり、決済を行ったりと、日常生活のほとんどをスマートフォンに依存しています。
これは、中国に限らず、世界中のZ世代に共通する傾向と言えるでしょう。
4、独裁体制と技術の共存
中国は一党独裁体制でありながら、スマートフォンをはじめとする新しい技術が急速に普及しています。
これは、一見矛盾しているように思えますが、独裁体制下においても、一度普及した技術を完全に抑え込むことは困難であることを示唆しています。
5、個人としてのまとめ
本書を通して、私は中国という国が、複雑で多面的な社会であることを改めて認識しました。
中国の政治、経済、社会、文化は、相互に影響し合いながら複雑に絡み合っています。
今後も機会があれば中国社会について学んでいきたいと思います。
但し、今は中国に行くのは気が引けてしまいます。(スパイ法など)
二、書籍内で気になった箇所(メモ)
第一章 スマホ世代の中国人の素顔
・社恐(シャーコン)10P~ =社交恐怖症の事※1
中国を代表する共産党宣伝機関紙の「光明日報」が全国の若者2532人に調査した結果が国内を震撼させた。
質問内容は「あなたにもいわゆる【社恐※1】がありますか?」の回答が「ある・少しある」と回答者が62%にも達した。
☞他人とうまく交際していると回答者は2.7%しかいなかった。
過去は「一回生・両回熟・三回成朋友(1回目に関係が出来て、2回目に関係が熟し、3回目に友達になる)」と言った慣用句があった中国であったが、現在では大きく様変わりをしてしまいました。
強国に囲まて13億人がしのぎを削っている競争社会である事、
一人っ子政策・スマホ普及により物心がついた時から孤独に慣れている事が「社恐」を若者に与える結果となりました。
この様な若者を「社恐人(日本ではニート・引きこもりと同義)」と呼び、日本と同じ様に、親が一生をかけて養っていく社会が出てくるのは必須である。それも日本の10倍の規模になるのだ。
・仏系(フォーシー)16P~
天安門事件以降、鄧小平氏は共産党から政治を奪いたかった若者に対して「その拳で、今度はカネを掴みなさい。政治の民主化は許さないが、代わりにお金持ちになる自由を与えよう」と言い、「社会主義市場経済」を取り入れ憲法も改正した。その結果、以下の企業が創設した。
・北京:アメリカ留学帰りの李彦宏(リゲンコウ):バイドゥ
・深圳:馬化騰(バカトウ):テンセント
・杭州:英語教師の馬雲(バウン):アリババ
☞「天下に不可能なビジネスは無くす」を掲げ会社を設立
それと同時に鄧小平は2つの約束をしていた。
1、一人っ子政策
2、大学進学を望む愛児「宝貝」を全員入学させる
天安門事件当時(89年)は、大学進学率は9.31%、進学希望者に対しての定員数割合(録取率)が15%で超エリートの狭き門だった。
しかし、30年経った現在(21年)では、進学率は54.7%、録取率は92.89%まで上がっており、共産党は「入学」までは約束を守った。
そう、就職までは確約しておらず、毎年大卒≒1100万人、高卒≒300万人、合わせて≒1400万人の学生が求職活動をしており、コロナ以降不景気によって、就業できない学生が多数発生している。
☞東京都全人口1418万人と同人数の規模
この人口規模になれば、暴動でも起こりそうだが、彼らはおとなしく自宅でスマホを弄っているのだ。その様な彼らを「仏系」と呼称している。
・躺平(タンピン)28P~
躺平とは、日本語的に言い換えると「寝そべり族」になります。
彼らは、就職せず自宅でゴロゴロ寝そべって、スマホを弄っている中国の若者たちの事を指す。
中国社会の理解度を上げるために、世代別の分けて考えてみる。
☞参考に日本世代も一緒に分けて分析
・飢餓世代(1958年~):毛沢東が主導した大躍進の失敗で、4000万人もの国民が餓死した。
☞60年安保世代
・文革世代(1966~76年):文化大革命で紅衛兵となって毛沢東を熱狂的に信奉した。
☞団塊世代
・天安門世代(1989年):天安門事件で挫折した世代になる
☞バブル世代
・改革開放世代(1992年~):改革開放政策(鄧小平氏主導)の恩恵を享受していきた世代
☞団塊ジュニア世代
以降は、中国では一人っ子政策になり、日本では草食系・さとり世代となってゆく。しっかりとした数字が有る訳ではないが、「躺平」率は時代が後期になるほど増えてくる。その理由は2つ挙げられる。
1、贅沢な環境
☞マイホーム・マイカーを保有した家庭で、一人っ子として成長してきた。
2、就業競争の激化
☞不景気によって、就業したくてもできない。でも、親に頼れば生活ができる。(仏系)
これらによって、躺平は急増しており、中国国内では社会問題化している。
だが、この躺平は、おとなしく・気が優しい。決して攻撃的な人種ではなく、到底、台湾有事・尖閣諸島への攻撃などを実施できない。その様な人種が増えている事が日本にとってマイナスな事ばかりと言い切れない。
・白蓮花(バイリエンホア) 46P~
中国は日本と比べ物にならない程の男女平等社会です。
出産前後の数カ月しか休まず、それ以外は同量の仕事をこなしている。
その様な、女性のパワフルDNAが背景ある中で、若い女性は一人っ子政策もあり、「小公主(皇帝の娘)」と言われ、贅沢三昧育ちの要素が加わっているのである。
もし、ご馳走するのであれば、万円単位で金額が掛かることを構えないといけない。
第二章 毛沢東の再来を目指す習近平
・不忘初心(プーワンチューシン) 72P~
習近平氏は「不忘初心」を共産党員に言及しており、この意味は「初心忘れるべからず」になります。
習近平氏は、父親が権力闘争に敗れ15~23歳の間、「知青(ちせい:農村での労働)」として多感な時期を過ごしており、日々「毛主席語録」と「人民日報」を読んで、毛沢東を礼賛する過ごしてきた。その様な環境下だった為に、毛沢東思想に洗脳をされてしまった。
そう、習近平が述べている「初心」とは「毛沢東時代を忘れべからず」という意味なのです。
・学査改(シュエチャーガイ) 78P~
学習という言葉は孔子と弟子たちの言行録である「学而」に出てくる「学びで時に之を習う、亦説ばしからやず」から来ている。
ところが、現在の中国では「学習」はもう一つの意味の「習近平通=習近平を学ぶ」を要している。
16年から習近平氏の重要講話を「書き写す:習字運動」が始まった。
党員にとっては、重要講話を学ぶ以上に大事な仕事はないと言うのである。
そして、22年から新たに「学査改」運動が始まった。
内容は、重要講話を学習し、その偉大性を精査し、講話に合わせて自己改善を図っていくという運動を行っている。
・千年大計(チェンニエンダージー) 96P~
中国では、収める長として超公共事業を行ってきた。
例:始皇帝は当時の世界最大規模の宮殿「阿房宮(アボウキュウ)」を計画し、完成せずに焼失した。
習近平氏は、17年に首都北京から105キロ離れた河北省の荒れ地に、第二首都「雄安(ジョンアン)新区」の建設を号令しまし、国家千年の大計と位置付けた。
過去からで言うと、以下の共産党トップが都市計画を行ってきた。
・鄧小平氏=香港に隣接した漁村「深圳」に経済特区を建設(もう一つの香港を創ると計画、現在ではGDPも香港を抜いている)
・江沢民氏=上海に近い黄浦江の東側に浦東新区を建設(ニューヨークに匹敵する摩天楼がひしめき、人口570万人の新区へと成長)
・胡錦涛氏=北京の外港である天津に濱海新区を建設(なぜか、習近平氏は失敗の烙印を押している)
習近平氏が掲げた第二首都は、最新の技術を投入した都市として開発をされている。
☞スポンジ都市、自動運転専用道路、犯罪ゼロ都市(どこに居ても4箇所から防犯カメラに見守られている)、三重ガラス、「1+2+N」、無人スーパーなどを導入
但し、著者は港が無いのに、大きく発展をするのか疑問を投げかけている。
・白衛兵(パイウェイビン) 102P~
ここで、著者は毛沢東氏が行ってきた事を記載。
1、49年:中華人民共和国を建国
2、58年:「大躍進」を行い経済は破綻、三年飢饉を発生し、4000万人もの国民を餓死させる。
3、62年:上記の結果、失脚する
☞農村に人民公社を設立、農業を集団化=報酬の均一化に伴い、労働意欲が大幅に低下
☞工業は15年でイギリスの鉄鋼生産に追いつくと宣言=製鉄技術が無い中、森林を伐採して粗悪な鉄を製造。はげ山によって大規模な洪水が発生し、農地に被害が出る。
3、69年:紅衛兵を先導して文化大革命を起こし、政権を奪取する。
☞当時の国家主席を軟禁し、獄死させる事となった。
4、76年:死去
著者は、習近平氏のゼロ・コロナ政策も記載している。
大規模なロックダウンは2回行っており、1回目の武漢では、コロナ菌の毒性も強かった事、多くのボランティア(白衣の天使)による対応により、全世界から見ても効果的に封印する事ができた。
その成功体験があった後に2回目の上海では、弱毒性のオミクロンであったにも関わらず、2500万人を3カ月間、ロックダウンを行った。
2回目は、外出する国民を抑え込むための人員を「白衛兵」と紅衛兵をなじった形で記載していた。
この結果、中国は不景気へと舵を切る事となる。
三ハイ政策 134P~
毛沢東氏の文化大革命によって「アジア最貧国」と化した中国は、鄧小平氏の不屈の指導力により「改革開放政策」を推し進め、アジア最強の経済大国への導いた。鄧小平氏が英明なリーダーであるが、2つだけ失策をしています。
1つ目は、天安門事件
2つ目は、一人っ子制裁
古来、中国では「人口はまさに財富である」と言われており、毛沢東氏含めて、人口増加を路線で進めてきたが、鄧小平氏は、このままでは中国人民が爆発的に増加する事(年間1500万人増)により、食料不足になる事を懸念して、一人っ子政策を断行した。
その結果、男女比・モンスター子供・人口減・高齢化など、社会に大きな影を落とす結果となった。
第四章 24時間戦えますか?弱肉強食の中国ビジネス
・九九六(ジウジウリウ) 160P~
中国から日本を見たら、中国以上の社会主義国で労働者の天国だと言い切る。中国社会は、誤解を恐れずに言えば「結果が全て」で、プロセスは問われない。極論になるが、社内にいる優秀な社員が業務を全部持ってライバル会社に転職し、高い評価を獲得する姿を著者はよく見てきた。16年に「九九六」という言葉が社会問題化した。これは、「朝9時から夜9時まで、一日12時間働き、週6日勤務する」事を指している。
まさにブラック企業化している。
中国には労働法(1日8時間、週で44時間を超えてはいけない)があるが、残念ながら現実とはかけ離れている。