ベーシスト、ジミー・ジョンソン様への愛を語る
世の中コロナコロナで大騒ぎで沈滞気味で、いいことがあまりない昨今。放っておいても気が滅入るのであれば、好きなものについて思いっきり語るしかありません。
この記事、2月中旬くらいから書いていたのですが、気が乗りきらず中断してました。最近ジミー先生が最新の実に素晴らしい動画をアップされたので(本文の最後で触れます)、触発されて完走しました。
さて、今日の話題はベーシスト、ジミー・ジョンソン先生です。ホーさん(アラン・ホールズワース)との共演が最も有名ですが、ジェイムス・テイラーを始めさまざまなセッションワークで活動しており、自らのバンドでリーダー作も数枚残しています。日本語のWikiはあんまり記述がないので、英語のWikiを参考資料として載せておきます。
メガネにヒゲの一見大学教授のような風貌、ですが何故か腰まで伸びた長髪。ここ30年ほど全く変わってないですね。実際に会ってみると物腰の柔らかい、と言うか引っ込み思案でおとなしいイメージを受ける人です。
かなり早い時期からの多弦ベース(5弦)奏者として有名です。多弦ベース奏者はアンソニー・ジャクソンとかジョン・パティトゥッチのような6弦ベース使いが多いのですが、彼は一貫して5弦ですね。アレンビックのカスタムモデルに近いようで、フレッテッドとフレットレス両方持っていますが、ライブではフレッテッドに徹しています(ちなみに私目はジミー先生に倣い、保有している歴代ベースは全て5弦ベースですww)。
奏法は指弾き、それもスリーフィンガーです。ピックもスラッピングも全くやりません。この辺りは職人肌というか突き詰めてる感じです。何でも弾いちゃうジョン・パティトゥッチの対極にあるような人です。
後、ベースアンプを全く使わないのも特徴。ライブの時もDI一個だけ持ち込んで演奏しています。アンプなしでベースの音を完璧に作ってしまうわけですよ、あのブリブリした音を。多分、スタジオミュージシャンなのでDI直で卓に録音するような仕事が多く、そういうスタイルになったのでしょう。
演奏の特徴なんですが「手数結構多いのに地味に聞こえる」かつ「極めてメロディアス」。
そう。これに尽きます。ジミーさんの演奏は、ベースラインを頭から最後まで一緒に歌うことが出来るんです。その位、メロディメイカーとしての才能が際立っています。
歌伴ももちろん素晴らしいのですが、彼の本領はホーさんを中心としたインストゥルメンタルにあると思います。何はともあれ動画などをいくつか見て参りましょう。
Lee Ritneur ”Rio Funk"
ド頭からこのグルーヴ感!ジミーさんの真骨頂はこういったベーシックなグルーヴにあります。シンプルで余計なことを余りせず、バンドのボトムを支えるのに徹していますね。
で、ベースソロは1:56辺りから始まります。彼のソロの特徴はその「間」です。勢いに任せて速弾きで押し切るようなソロを、彼は殆ど取りません。この曲でも序盤はベースラインを完全に守りながら、大きなポジション移動で高音域でのソロフレーズを組み立てます。指板上の音を完璧に把握してないとこんなコトできませんし、実に歌うフレーズです。音もブリブリしてて(前述したとおりベーアンなしで)これだけのソロを展開してくれるわけです。いやー、素晴らしいの一言。
もう1曲、バンドアンサンブルでの例を。
"Night Sprite"
Steve Gadd Tributeバンドでのセッション。ヴィンス親方始め超豪華メンバー(当時のKarizmaメンツですな)によるものですが、ジミー先生序盤は結構バリバリにフィルイン入れてますね。こういうところが実に彼らしい。で、怒涛のユニゾン大会をサラッと弾いちゃうんだよなあ。この「大変そうに見せないプレイ」というのが、ジミーさんの特徴の一つだと思います。余談ですが、ステージでは極めてラフな格好の多いジミー先生、この時はなぜかトレンチコートなんか着ちゃって無駄にカッチョイイww
”Panic Station”
ここからホーさん(Allan Holdsworth)関連の紹介行きましょう。ファンの間では伝説となっている1984年初来日ライブ、ちゃんとステージ録画が残っていて、最近リマスターDVD化もされています。
ここでのジミー先生のプレイは全面にわたってインクレディブルの一言で、トリオなので和音アプローチなんかも連発し、まさに八面六臂の活躍なのですが、その中でもこの曲。ホーさんの中でも1、2を争うポップな曲の終盤、美しすぎるベースソロが開陳されます(2:45辺り)。
どうですか、この極めてメロディアスなソロ。まるで事前に用意していたかのようなフレーズですが、もちろんアドリブです。私見ではこの曲の「スタジオテイクよりいいソロ」だと思います。スタジオ録音より出来のいいソロをライブでサラッと弾けてしまう…なんという人なのでしょう(悶絶
”Spokes”
アルバム「Secrets」の中の1曲。アルバム全編に渡って、ヴィニー・カリウタ親方との壮絶なバトルが繰り広げられますが、その中でもこの曲は特にすさまじい。
ここは敢えて、ジミー先生本人ではなくこの曲のプレイを完コピしているMarcelo Cordova氏の動画で紹介します。何やってるかよく解るからですね。
こういうプレイがジミー先生の「真髄」です。これだけ複雑なコード進行の曲で、突如ハイポジションのフィルがバシバシ入るなど技巧的にも非常に高度なんですが、それ以上に流れるようなベースライン。これが「全曲一緒に歌えるベースライン」ですよ。実際、この曲で一番最初に覚えたのはベースラインですから。
ホーさんもヴィンス親方も、もおムチャクチャぶっ飛んだプレイしている中、ジミーさんはこの複雑なライン+メロディで曲の中核をバッチリ支えるわけです。ホンマに、ジミー先生にしか出来ない演奏です。
※余談ですが、ホーさんのアルバムは結構オーバーダブで作られていることが有名です。特にギターソロは完全に後収録なんですが、ドラムとベースは同時に録音されているのか?アルバムだとジミー先生のベースラインが絶妙にドラムに絡むところが結構多いのですが、ひょっとするとドラム→ベースの順で録音されているのかもしれません。同時録音だったらそれはそれでインプロヴァイズ力に脱帽しますが…
”Earth”
これはねえ、複雑です。ホーさん最後のスタジオ録音となった曲なのですが、さまざまな事情にて現在入手がほぼ不可能な状態となっています。その顛末に多少興味のある方はこちらをお読み下さい。ホーさんへの追悼ブログ記事です
※リンク先、当時は飾らず本音で書こうと思ったので、ホーさんに対してかなり辛辣なことも言ってます。ファンの方はくれぐれもご注意を…
この曲の動画はネット上にも皆無なのですが、プロジェクトの紹介動画の中で少しだけ演奏を聴くことが出来ます。
何でこの曲に拘っているかというと、ジミーさんの素晴らしいベースソロがあるからなんですよ。動画で言うとタイトルバックのところ、さらには1:00辺りから音質がオンラインになって、ベースソロの後半部分を聴くことが出来ます(ヴァージルの手数が多すぎてよく解らん、と言うのが難点ですが)。
これだけの演奏が、殆どの人に聴いて貰えない状況になっている…ホンマ、誰かPledgeの当時のスタッフ買収して、音源リリースしてくれんかなあ。ザッパファミリーみたいに。
Earthに興味のある方、多分ネット探せば音源は転がってますが、リンク貼ったりはしません。申し訳ないですが自力にて入手をお願いします。
”City Nights”
つい最近公開された動画。ゲイリー・ハズバンドのプロジェクトに参加してるのかな?Stay at Homeのさなか、自宅かどっかで撮っている映像です。
とにかくメチャメチャ楽しそうに弾いてるのが本当にいいです。ニコニコしながらなのにプレイは相変わらずの超絶ぶり(スタジオ版に比べると手数少なめですが)。後、コード進行(ベースのルート音)変えてるんだよなあ。作曲者であるゲイリーが変えたのかもしれませんが、こういうところが実にニクイ。
御年64歳、長髪もヒゲも最早真っ白です。いくつまで出来るのか分かりませんが、まだまだ現役を続けて欲しいと思います。