"The LEPLI"ARCHIVES-30/ UNDER COVER、 PITTI UOMOのカッコ良さ。 そして,新たな流れとしての 『ネオ-ユニフォーミズム』へ。
文責/平川武治:
初稿/2009年晩夏:再稿/2010年3月13日:
この原稿は昨年の夏の終わりに書いたものです。
これを再読すれば,どれだけ時代の変化が今,現在のスピードになっているか即ち,何れ程時代の変化のスピードが”遅れている”かが解る。
この“スローな時代性”を理解して頂ければとの想いを込めて。しかし、UNDER COVERのこのPITTIでの出来事は今後ヘの新しさへ一石を投じるでしょう。
1) 6月17日、フィレンチェ、”PITTI UOMO”の出来事。/
今年のイタリー”PITTI UOMO”が招待した世界のデザイナーは、”UNDER COVER”の高橋盾だった。彼のメンズコレクションの海外で最初のランウーはPITTI 宮殿庭園の夏の始まりの遅い夕刻にスタートした。
参加者は、巴里、ロンドンそしてN.Y.と地元イタリーのメンズファッションのうるさい連中、デザイナーやジャーナリスト、評論家、バイヤー、学校関係者たちが集い驚き、楽しみ心地よい感動も味わう迄のイベントであった。
そこには、新しさが創造されていた。
”PITTI”での彼のコレクションは、このデザイナーが感じ読み込んだ時代の新しさがコンセプトにも、服にも満ちていた。
それは‘50年代のドイツ、BRAUN社の工業デザイナー”Dieter Rams”にインスパイヤーされた見事なコレクションだった。テーマは『Less but Better.』
これはD.ラムズのデザインコンセプトとテーマである「Less is more & very useful.」にチューニングしたもの。この彼の「Less is more & very useful.」はその後の”近代デザインの進化”の根幹になった。
高橋盾はモードを新たな視点から時代性と未来性を読み取り彼、独特の眼差しとモードに対する想いが服にデザインされていた。僕流に言えば『ネオ-ユニフォーミズム』の到来を予知させる迄の鮮やかな機能性をモード化したデザイン哲学と視点が読める。
2) 現代ファッションにおける新しいデザイン哲学とは、/
行き着くところ、『素材』に委ねるところが多い。即ち、形骸的なデザインよりはどのような素材を着る人の為に選択してあげられるかがデザイナーの大切な優しさの心となり、大事な視点であり仕事となる迄の時代性である。それぞれの『素材』が持つテクスチュアーとクオリティとそして、機能性とエモーションをどのように着る人たちの為に時代観を感じさせる迄の服のデザインに落とし込めるかが今後のデザイナーの新たな視点である。
今回の”PITTI”でのUCのコレクションにはこの時代性とコンセプトの先読みで出来上がっていると感じたから僕は驚き、喜んだのである。
2-2) 高橋盾は、デザイナーのリアリティをショップ化してしまった。/
今回も彼が惚れ込んでしまった”Dieter Rams”の作品を自らがコレクションをして、帰国してみるとこのデザイナーはそれらでショップ空間を作ってしまった。まるで、美術館概念とその空間に彼、自らのエモーションと持ち得たストーリー性を構造化したと言ってもいいまでの自由な発想がショップ化されていた。
この彼の、”発想の自由さ或いは、妄想の奔放さ”と言うリアリズムがこのブランドの”カッコ良さ”なのだろう。
3) その根幹には、日本デザインを想う心が在った。/
日本人としての日本デザインを思い考えると今回のUNDER COVERのコレクションへ行き着くはずである。その根拠は「素材」の進化は世界に群を抜いているのが現在の日本の強みである。その活きのいい『素材』をどの様に『料理』してあげるか、即ち、「腕の良い粋な料理人の如く」が今後のファッションデザイナーへも問われるはずであろう。そして、この視点は外国人デザイナーの『嫉妬』を買う結果になる。なぜならば、海外の若いデザイナーたち程、此の様なすばらしい素材、面白い素材を使いたくなる。が、彼らたちには高価すぎて手が出ないという現実がここには在る。例えば、J.サンダー、R.シモンズ、B.ウイリヘルム、D.ドマ、などは日本素材の良さを知り、日本人スタッフからの情報を元に、巧く使っているデザイナーたちだ。
4) モードの流れは確実に、次なる新しさへ、/
その新しさとは、”WRAPPING”から”PROTECT/PROTECTION”へ、
そして、その根幹には”CARE/CURE”があり、モードデザインの進化のスパイラルが稼働始めるだろう。
表層的なる唯のラッピング-ペーパー的なモードはもういいでしょう。
手を替えディテールを変えての、いわゆるトレンド内での”デザイン アッセンブリッジ"と”自我満足”はもう、不変なる人体を覆う只のバリエーションでしかなく、各種”ラッピング-ペーパー”になってしまった。そんな”ラッピング-ペーパー”コレクションはもう、所謂”ポストカード”の世界でしょう。
現代の”進化と豊かさ”の凄さの一つに、誰でもがそれなりにカッコ付けて”明日から僕はデザイナーです”と言える迄の時代性になってしまった事も現実の一端なのですから、この世界は彼らたちに委ねていれば良いのでしょう。
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パリでの休日,ル-コルビジュエの『サボア邸』ヘ出掛けた。
久しぶりにル-コルビジュエの作品が見たくなって小雨降り始めたパリ郊外へ出掛ける。
フランス人中産階級者たちのお決まりの住宅環境を通り抜けてやっとたどり着いた『サボア邸』。
小さな森の,木立の向こうにその彼の姿を見る。その姿はあらゆる自信から生まれた落ち着きと安らぎ感を感じさせる姿。多分、真に生活什器としてのレジデンス建築であるからだろうか、住む人の品位と教養までを感じさせる住宅建築になっている。
自然と共棲しているレイアウト、自然を取り入れ、自然を生かすデザインそして、直線の組み合わせと空間の入り子構造、限られた色、白を基調にウス-ブルーそして黒とサーモンピンクが抑えと差し色、ここにも自然とそれが作り出す環境に気を使った証が施されている。
僕の中での,世の中の『キッチュ』化の反動であろうか,此の様な教養と自信と感覚で計算されたシンプルなものに憧れを憶え始めた為であろうか?
例えば,1911年以降の建築のムーブメントを思い出す。鉄筋が生まれ,続いてガラスと言う新たな物質素材が生まれた後の建築はすっかり変化した。アール-ヌーボーからのキッチュ趣味は以後シンプルな直線構造へと、結果『デコ』様式が生まれ機能主義へと進化したのが’30年代迄だったろう。
此の感覚が新しく感じてしまい始めた今と言う時代感。
ここにもUNDERCOVERのコレクションと共有する感性がある。
『SIMPLES MORE,』『Less is more & very useful.』
そして,『Less but Better.』に繋がる時代観。
もう一方では,『破壊』観が当然『PUNK]』を生み、グローバリズムの騒音と共に憂さ晴らしへ走る時代性。
此の対峙する両極が現代の僕たちの『保守化ー中庸』の現実社会への新たな挑戦的動きであろう。
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PITTIの街を闊歩するファッション人間たちの出立ちは;
全くの『保守-中庸』に迎合したいにしえを想い出すカッコ良さ。
一言で言ってしまえば,『NEW PREPPY』スタイル。 ’60年代後半の『GQ,エスクワイヤー』誌と当時の季刊専門誌『MENSWEAR』誌の様かわり。
新たな顧客としての黒人たちへのアプローチが目立つ、『BLACK-DANDYISM』へ。
ショート丈のコットンサカーのブレザージャケットに細身のショート丈のコットンパンツ。素足でデッキシューズ。
そして、日焼けした洒落男たちはバタフライ。
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『まとめ,Paris mens Collection '10 S/S』;
その後7月,巴里で行われたメンズのコレクションもPittiで見掛けたファッション伊達男たちのスタイルがコレクションの主流になって登場した。
特徴をまとめてしまうと、
シルエット&スタイルは「ニュープレッピィー」
テイストはコンサヴァティブ。
当時のIVYスタイルをアメリカンブラックサマーダンディーにサンプリング、参考書は’50〜60年代のメンズ雑誌『GQ』『ESQUAIRE』『MEN’ SWEAR』
イメージとターゲットは”明るい太陽の下での軽く爽やかな若者から40代ビジネスマンたちへ。”インダストリアルデザインやプロダクトデザインのピィロソピィカルなテイストが新しさを見せ始める。
"Simple is best" but, much better to use.
素材が勝負。新-高品位合繊とBIOオーガニックファブリックの普及。
オーセンティックスタイル+新素材のリーミックス化とコーディネートファッション。ショート丈のコットンサカーのブレザージャケットに細身のショート丈のコットンパンツとバーミューダ-パンツ。
素足でデッキシューズまたはスリップポンシューズ。スーツにはメダリオンシューズが登場。そして、I.マドラスのバタフライとキャップかサマーハット。
トランスペアレントな効果と羽織る感覚のオフ-コーディネート。
色は,黒,白、ピンクそれぞれがグレーッシュな色味。
サロンへ出向けば,日本人ブランドが眼につく。
それらは殆どが,ストリート系からのレザーもの。細身のパンツに幾つ化の機能性、ポケット、タブ、チエーンホルダーなど変わらぬものを加え、レザージャッケトにレザーベストとシャツ。後はトリコット素材の薄物T-シャツ感覚で着れるインナージャケットタイプ。
文責/平川武治:(初稿/平成21年7月ー再校/平成22年3月)
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そして,この原稿はこの1月のパリーメンズコレクションのダイジェストです。
【まとめ,今シーズンの幾つかの私的トレンド/'10'11年A/Wメンズコレクション】
ここでも”時代のスロー感”を感じてくだされば嬉しい。(ひらかわ)
『クラッシック回帰だけど,楽-ラフ,ちょっとお澄まし。』
*ネオ-クラッシック;イングリッシュダンディズム、イタリアンコンチ、
*ジャケットの逆襲;新しさが必要になったアイテム、ジャケットとテーラードスーツ。ラペルの変化、サイドベンツ、スリム&ショート、裏地に凝る。ジャケットのバリエーション。パンツよりもジャケットのシーズン。
*獣毛と合繊とコージュロイ;縮じゅ加工、コーティング加工、ワッシャー加工、ピーチスキン、太畝コージュロイ、ニッティング。
*ムートン、ウオッシュレザー、
*黒白+無彩色;黒のバリエーションとダークグレー迄のグレイエレガンスへ。差し色としてのイエロー、パープル、キャメル、プルシェンブルー、赤
*パンキッシュ+ゴチックテイスト+アンドロジナス。
*ブラックダンディズム。ボーイズ-お澄まし。
*新しさとしてのWIDE-PANTSよりもビジネスのスリムラインパンツ。
*ロシア、ニジンスキー、ボクシング、スキー、ジャッズ+D.ボウイ&クラッシック-ロック
*プロテクション;ソフト&ハード####
*ハットとタッセル、メダリオンシューズの復活。クラッシック回帰。
*スリム-タイ,サスペンダー
*肩、首そして腰ヘのポイント。
サイト;
www.yohanserfaty.com
www.uteploier.com
www.franciscovanbenthum.com
www.adamkimmel.com
www.qasimi.com
www.goldenhook.fr
文責/平川武治(初稿/平成22年2月)
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