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WRONG SCALEの「bed and board」はスゲーよ

wrong scaleというバンドは人生で1番聴いたバンドである。iTunesには曲別に聴いた回数をカウントしてくれる機能があり、定期的にそのランキングを見返しては自分の趣味嗜好の移ろいを堪能しているのだが、やはり学生時代に狂ったように再生を繰り返していた彼らの4thアルバム「bed and board」の曲たちを超えることはない。しかも4thアルバムというバンドとしての最後のアルバムがキャリアハイになるんだから底力的な面も含めて魅力的である。

特に一曲目のmelt downについてはアルバムの中でも随一のキャッチーさを持っているので、後半の曲たちが通しで聴く故に再生回数がダンゴになっているのに対して、ダブルスコア以上の差を付けてランキングトップに降臨している。

一曲目に全力を出し切って以降間延びするアルバムというのは数多あるが、このアルバムに関してはmelt downは比較的俊足巧打の安打製造機でその後にcalling・ACTとパワーヒッタータイプが続くという末恐ろしさがあった。このアルバムの横綱的な最強楽曲はどれなのか?という議論があるときcalling派とACT派で揉める事は多かった。(インターネット的にはとらドラMADでcallingに軍配上がった感ありますが俺はACT派)

そしてインタールードのa lieを挟み、再録版でスタイリッシュ極まったframes laid outに突入する。この再録の進化っぷりは凄い。ミニアルバム版の楽曲を聴き返すとやってる事は同じなのにクオリティが段違い過ぎて笑ってしまう。明らかなリベンジ再録というテーマがあったのだろうと思わせてくれるぐらいキレキレになっている。

そして転調で主役が変わり、トリプルボーカルの良さしか発揮していないcar chainで第一部は「シャーインフォーユゥ」大合唱で大団円を迎えるという具合である。この辺りでこのアルバム強すぎて恐ろしさすら感じてしまう。そして後半がこの強度に耐えうるのか不安にもなってくるのだ。

後半はhold in your armsから始まりシンプルにグッドなメロディとコード感を堪能した後は後半の大捲りが癖になるDeleteである。ここら辺で比較的ストレート系の球種は前半含めて投げ尽くした感はあるが、その次のstanding in the city lightsでDelete超えのトンデモ爆速大捲りを見せてくる。こういういなたい構成の楽曲は正直如何なものかと思った時期もあるが、今となってはフリオチにメリハリがあって潔い。後半加速はやっぱり心のメロコアマインドが潤ってしまう。

ここでフィナーレムードある楽曲を差し込み、終わったか!?と思わせてのthe day rain changes to the rainbowの再録verが差し込まれる。wrong scaleというバンドはスリーピース体制の前期・ギターが加入したあとの後期と明らかな変化が見られ、前期はメロディセンスが飛び抜けたメロコアバンドというイメージから、トリプルボーカルにクリーントーンやセブンス系のコード多用するシャレオツバンドというあからさまな変化がある。

後期の体制となった現在に前期の名作をアレンジ全開で再録するというのは正当進化の究極系な感じも含めてとても気持ちがいい。何しろ全体的に落ち着いたトーンになり、そこにもう一本重ねてくるギターのアレンジが正解を付くようなフレーズばかりなのだ。ハートゴールド・ソウルシルバーのようなゲームの原作の良さを損なわない次世代リメイクに似た趣きがある。そしてこのリテイクセンスは後のベストアルバムでも炸裂する。

そして最後の最後にとんでもない楽曲erasing  your memoryが投下される。どう考えても「アルバムの最後の曲としてオトしに来ました」感があり、そのガチンコ対決には見事に圧勝している。なんでこんなちゃんと最後っぽい曲を最後に持って来れるんだよと感心しきったとこでエモーショナルな感情頂点になりアルバムは終了していくのだ。

そして改めて一曲目に戻ると再びキャッチーなmelt  downに突入しサウナの如くループを繰り返すこととなる。アルバムとは最初の曲と最後の曲が別アプローチで名作なら傑作っぽく感じるのだろうか?と人間の心理を考察することがあるが、2週目をきいているとやはり道中の楽曲たちの品質が担保されており、それを超越するからこその名盤なんだろなと気付いてしまう。

あの頃k-planに居たバンドたちは自分たちの世代のバンドマンに凄まじい影響を与えている。特にthe band apartなんてそれの典型的であり、レーベル唯一の生き残りとして未だにリスペクトされ続けている。しかし、バンアパと同じぐらい語り継がれてもいいのがこのwrong scaleである。明らかに楽曲の良さと知名度が釣り合っていないのは不思議な現象なのだ。

heとかsusquatchとかその他にもk-plan的な音を出すバンドは沢山居たけど、ロンスケがそこに埋もれてるのは不憫な気持ちになる。少なくとも地元ではバンアパより明らかにカルト的な人気があったけど、そこを出たらインターネットでも昔あの界隈に居たバンド程度で特に語られていないのは勿体無い。

ここ数年は地味にYouTubeでの弾いてみた動画が増え出してきているのが嬉しい。マイナーなバンドはやはり弾いてみた動画の存在があると数少ない同志を観測できた気がして良い。

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