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『ひなたざか』のアルバム曲を総括してみた

2020年の9月23日に1stAlbum『ひなたざか』が発売されました。リテイクと未発表を含めて新収録が11曲ということでそれぞれの曲の感想を書いていくブログです。正直に打ち明けると「初めに聞いた時はほぼ全てのアルバム曲に不満を抱いて」いました。言うなればその感情がこのブログを書くきっかけです。今は真逆で全ての楽曲に納得感を持っているので、その間にあった学びは何か?ということがこのブログの軸になっています。

楽曲はあくまでグループの一面を届ける手段の一部

アイドルに限らずバンドやシンガーソングライターなどもそうなのですが、いい曲ができたらそれ次第でリリース!というわけではなく、前後のシングルとの関係性、季節や時期の要因、類似アーティストの動向など、様々な要素が考慮しながら世に出るものと思われます。その中でもアイドルはフォーメーション、パフォーマンス、振り付け、衣装、MV、CMなど、要素が多岐にわたるため、楽曲が占める役割が相対的に低い部類なのではないかと感じました。まず「今このタイミングで打ち出したい一面」が先立ち、「それに合う楽曲は何か?」という順番で物事が決まっていくのではないか?という話です。

楽曲単体で良し悪しを判断するのは難しい

もっと強くいえば、ラジオなどで流れる初解禁の楽曲のみを聴いて言うあーだこーだにはそこまでの意味はないということになります。(ある意味楽しい時間ですが)後から撤回にしたくなるような批判をしてしまうよりは、他の要素を待ちつつ、運営の意図(打ち出そうとしている一面)を想像している方が楽しみ方としては健全かなと言う風に個人的には考えます。その意味で今回のアルバム曲は押し並べて運営の意図がしっかり伝わってくる、役割がハッキリしたものと感じたので、込められた意図とそれに相対する楽曲群を以下に記載していければと思います。

ライブの盛り上がりに貢献する曲

・誰よりも高く跳べ!2020
・NO WAR in the future 2020
・約束の卵 2020
・My fans
・Overture

今回のアルバムには「曲順がライブのセットリストのようになっている」というコンセプトがあったようです(どんなアルバムですか?と聞かれたときに、メンバーが判で押したようにきっちりと統制の取られた回答をしていました)2020と名前がついている曲は、ライブの定番でありつつも、昔からある曲だったが故に今の22人全員でパフォーマンスできる曲になっていなかったんですよね。それを今回リテイクすることで、メンバーとファンの全員でこの瞬間を分かち合おうという意図の発信がなされたと思います。もともとの歌唱メンバーも自然に全員でパフォーマンスができることを喜んでいるように見えますが、でもこれももしかしたら(せっかく盛り上がるんだから自分たちだけで)って考えても特におかしくないんですよね。だって少人数の方が映るし。でも日向坂にはそういうところがないんですよね。いいですよね。『My fans』は個人的にはこれまたよくライブのハイライトになる「令和のラブマシーン」ことキツネのSっ気を更に増し、ダークネス面に振った楽曲という印象を受けました。サディスティックに煽る笑わない日向坂もこれはこれで素敵です。『Overture』は他の坂道と同じような形式に乗っ取ったものだと思いますが、言うなればこのカテゴリかと思います。

※おもむろに今の定番曲『キツネ』のリンクを置いてみる

期ごとの特色を表す曲

・どうして雨だと言ったんだろう?:1期生+パフォーマンスの核
・See Through:2期+こさかなの新しい色つけ+次世代シンメ
・この夏をジャムにしよう:3期+4人体勢のお披露目

言うなれば「グループの現在地、近未来、未来」を示す楽曲群といったところでしょうか。個人的には『どうして雨だと言ったんだろう?』のインパクトが大きく、冠番組『日向坂で会いましょう』でのスタジオライブが圧巻の出来でした。一期生3人の「きずなーず」と呼ばれるユニットによるもので、歌とダンスとシンクロ率が歴代のどのユニットよりも高次元。グループ全体でもパフォーマンスの核となっている3人の凄みを見せつけられました。その前に『この夏をジャムにしよう』も放送されていたのですが、正直迫力が違いましたし、全ての後輩に背中を見せつけるような強度。(もちろん夏ジャムにはフレッシュさや今しか出ない期間限定感など別の魅力があります)放送前に珍しく公式がわざわざ告知をしていたのはそういう言うことだったんやな。

1stアルバムの表題曲としての役割を果たす曲

・アザトカワイイ

正直に言うと「楽曲のみを聞いたときの不満」が一番強かったのがこの曲です。もっと言うとMVを見てもまだ不満しかありませんでしたが、アルバムのCMを見た瞬間にその感情は溶けてなくなりました。これまでに4枚のシングルをリリースしていますが、アルバムとしては1枚目。日に日に活動の幅が広がってはいるものの、認知度もまだまだこれから。その意味で、空と聞いてまず思い浮かべる爽やかな青を基調としたMVと、彼女たちの溌剌さを表現する明るい曲が1stアルバムに非常にふさわしいものという選択なのではないかと思います。

(後者ポストカードにして公式から出してくれん、、、?)

加えて、日向坂46デビューカウントダウンライブでのキャプテンのMCをご紹介させてください。

「グループカラーは空色と言うことで、空は毎日の色を変えます。私たちはどんな色にも染まれるグループになれればと思います。これからも応援よろしくお願いします!」

非常に素晴らしい比喩ですよね。個人的に「どんな色にも染まれる」という言葉から思い起こされる曲と言えば3rdSingleの『こんなに好きになっていいの?』です。例えるなら夜と夕方の間のマジックアワーのような色を感じさせる曲。爽やかな青を軸に展開するとした場合にこう言った曲調は選ばれづらく、同時に『アザトカワイイ』が表題に選ばれる理由が感じられるのではないでしょうか。

活動の旗印となる曲

・ただがむしゃらに
・日向坂

メンバーのこころのよりどころになる曲、と言うような位置づけかと思います。今は『約束の卵』(=東京ドームでのライブ)がその役割を果たしている(ある意味『日向坂』以上に直接的に)と思うのですが、それ以降の彼女たちに向けた曲を今のうちから用意しておく、と言ったところでしょうか。メンバー自身もこの曲を『約束の卵』の先、と紹介していました。東京ドームのライブを暗喩したりと言ったほど具体的ではないですが、坂道グループのなかでも日本ナイズドされていてハイコンテクストな彼女たちに対して「無責任に世界を目指せとか言うわけでもなく」「かつ彼女たちの強み自体は表現する」という、これはこれでこのタイミングに即した責任感を伴った歌詞だなと感じました。

こうしてひとつひとつをひもといて見たときにやっぱり坂道運営はしっかりした仕事をしてくるなと思いました。オンラインライブも楽しいですが、満員の観客とライブが楽しめる日が早く訪れると良いですね。それでは。

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