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日向坂46『3年目のデビュー』の感想文をとあるメンバーの卒業に寄せて

日向坂46の元メンバー、井口眞緒さん(以下、敬称略)の卒業について、ファンとしてひそかに感じていたことを、『3年目のデビュー』の感想文に合わせて書きました。(批判めいた記載は特にありません)感想文と卒業にまつわる記載のふたつが行ったり来たりする文章になっています。

3年目のデビューが果たすべき目的

まずはじめに『3年目のデビュー』に対するファンの反応。賛否両論とまでは行きませんが、絶賛しづらい方もいた様子。好みのレベルの感情的な批判は一旦置いておいて、個人としても共感できた感想はTwitterでみかけたこちらでした。

観るWikipediaという表現に共感しました。別に例えることが目的ではないのですが、個人的にはBESTアルバムとかSinglesCollectionと呼ばれる音源を聴いている様な感覚になりました。悪い曲が入っているわけではないけど、特定の時期のことが深く知りたくなったらやっぱりその時期のアルバムを聴くしかないといった意味です。作品を出す時に、目的に優先度をつけて、様々な取捨選択を行うことは自然なこと。個人的にも、本作品の目的を『日向坂の歴史を知らない人に知ってもらうこと』に置いていたと考えるなら良い作品だったと言える内容だったと思っています。

目的による取捨選択

これまで見ることのできなかった映像が盛り込まれていたり、グループとしての雰囲気を的確に表現したエンドロールの表現があったり、『3年目のデビュー』は役割をしっかり果たした作品だったと思っています。ただ一点だけ、観賞中に思わず気にかかってしまったシーン、それが彼女の卒業を取り扱っているシーンでした。いわゆるネタバレを含んだ表記になりますが「活動自粛を告げたシーン」と「卒業を発表してから姿を現すシーン」のメンバーの彼女に対する態度や温度には非常に強い対比がありました。

映画ではわかりにくいですが、あのふたつのシーンの間には約半年という時間が流れています。その期間、非常に複雑で細かい感情が、ファンも含めた全員に巡った上でああ言った対比が生まれたと思っているのですが、当時をリアルタイムで追っていないファンにそれが伝わるだろうか?という懸念を抱きました。時系列が少々前後していること、時間の都合、テーマの絞り込みなど、要因は様々かと思いますが、この期間で起こったことをいちファンの目線で書くことで何かしらの補足になれば良いなと思っています。

自粛の発表から卒業までの概要

まずは時系列を整理しますが、活動自粛を発表してから卒業までに起こったことをいちファンの目線から書いていきます。(関連が強いと判断したものを抜粋して記載しています)

2019年
9/8    自粛発表
9/10   復帰予定リリース
9/26   さいたまスーパーアリーナライブ
10/2   3rdSingle『こんなに好きになっちゃっていいの?』リリース
11/14   紅白出場が発表
11/16   レコード大賞優秀作品賞の受賞が発表
11/22   復帰の延長が発表
12/17   4thSingle発売決定のリリース(当時タイトル未定
12/17   ひなくり2019
12/18   ひなくり2019
12/30   レコード大賞本番
12/31   紅白本番
2020年
1/7     濱岸ひより復帰発表
2/12   卒業発表
2/19   4thSingle『ソンナコトナイヨ』リリース

振り返ってみてのポイントは、
・自粛から卒業までの期間は約半年間
・一度復帰予定を発表したのちに延期が入った
・絶妙なタイミングでレコ大と紅白が決まった
の3つだったと考えています。

自粛期間中の日向坂に起こったこと

自粛発表と同じ月に開催された、さいたまスーパーアリーナでのライブを現地で観る予定がありました。スキャンダルが世に出たときは「あ、ということはフルメンバーでは観られないのか。残念だね。」と言う会話をライブの同伴者としていた記憶があります。この時点では卒業の可能性を考えていない、復帰する前提の認識だったことがわかります。

そして3rdSingleのリリースを経て、レコード大賞の優秀作品受賞と紅白の出場が決定。年末にかけグループとして怒涛の勢いで階段を駆け上がっていく日向坂46。いわゆる勝負どころの期間であることは明白でした。

国民的な舞台への出演を決めていくことを喜ばしく思う一方で、この頃になると(そういう舞台で彼女のダンスはどう映ってしまうんだろう)という不安のような気持ちが頭をよぎっていた記憶があります。(完全なるいちファンのお節介と考えすぎなので、杞憂に終わるならそれが一番いいという類のやつです)。バラエティでの底抜けに明るくて、どこか憎めないどころが、気づいたら好きになってしまう彼女を、一度見た上でのパフォーマンスであれば、それは個性の一部という受け入れ方ができるのですが、デビュー1年目で、いよいよこれまでのファンの環状線の外側の認知を強烈に勝ち取ろうというタイミングで、ブランクを取り返す時間も余裕もない状態での復帰は彼女にとってもグループにとっても良いことなのだろうか?ということが気にかかり始めていました。

自粛入り直後の発表によると当初は2019年の11月末に復帰を予定していた彼女。復帰して早々の状態で猛烈な活動への対応は、本人の負担(スキャンダルを起こしておいてレコ大や紅白出場の名誉だけは手にするという見方が出かねない点含めて)はもちろん、ファンにとっても目線にノイズが入り込みパフォーマンスに対する集中力が削がれやすい状況です。その観点から、自粛の延長が発表されたときは正直ホッとしたと言うか、正しい判断をしてくれたと個人的には感じました。だからというわけではないですが、年末のグループ活動の充実ぶりは目を見張る内容で、特にレコード大賞のオーケストラを交えた『ドレミソラシド』のパフォーマンスは、衣装やダンスの仕上がりも含めて非常に素晴らしく、ファンとしてのひいき目を抜きにしても初めて観る人に対しても間違いなくポジティブな印象を与える内容だったと思っています。自粛が決まった段階では紅白もレコ大も決まっていないし、紅白やレコ大に出場する前提で自粛の予定を組むこともおかしい。運営としては非常に悩ましい判断を強いられたのではないかと想像しつつ、結果的に「世間が日向坂をフックアップする瞬間と、ファンが彼女を待てる時間とのタイミングが合わなかった。」という期間だったように思います。

次々と違う色を表現し始める日向坂46

メンバーの欠けた日向坂。ダンスパフォーマンスに関してはこれまで記載した通りですがバラエティはどうなるのかという不安もありました。ただ、すでにかけがえのないピースの卒業を一度経験しているからなのか、そのような環境下でも様々なメンバーが週替わりで個性を発揮しだして、新しい名シーンが次々に産まれていきました。予測不能な爆発力を伴った笑いは変わらず彼女の専売特許ではある一方で、少なくとも「彼女がいないからひなあいがおもしろくなくなった」と言う状態ではなかったと記憶しています。この期間で、日向坂にとって彼女がかけがえのないピースであることは間違いないけれども、日向坂は一人が活動を止めたことで、揺らいでしまうようなチームではない、ということも実感していきました。

卒業の予感

2020年の1/7に体調を理由に活動を休止していた「ひよたん」こと濱岸ひよりの復帰が発表された時、同じタイミングで彼女にまつわる話がない時点で、彼女は卒業するのだろうという感覚になりました。4thSingleが控えている状況で、復帰をこれ以上先延ばしにする理由がないからです。ただこの頃には、もちろん寂しい気持ち自体はありつつも、卒業という判断も人ひとりの人生のにまつわる大事な選択として尊重したくなるものになっていました。なんとなく戻ってくるものと無邪気に想像していた約半年前のあの頃とは違う風景が広がっていました。

誰の人生にも起こりうる葛藤

芸能人に限らず、我々は基本的に精神に負担をかけながら生活しています(程度の差があることはもちろん)そして不得意なことを求められる環境下ではその負担はさらに大きくなり、どこかに必ず反動を生んでしまうもので、そういった状況が続くことで、時に本人の意志の力や努力の範疇では抑えきれず、なんらか事件を起こしててしまうこともあります。また「それらを抑えることができる理由」や「そもそも努力ができる理由」も人それぞれで、スナックが夢と公言する彼女の未来と、アイドルでい続けることで開ける未来には微妙なギャップがあったように感じます。

スキャンダルがグループの活動にノイズを生んでしまったことは事実だと思いますが、そんな時でも浮かんでくるのは不得意なダンスが時に番組のネタになっても、周りの誰かを攻撃することもなく、明るく振る舞おうとする彼女の姿や、バンジージャンプやヒット企画の応援など自分が得意なことは率先して引き受ける彼女の姿でした。その姿を思い起こすと「ダンスが決して得意じゃなかったとしても、スキャンダルを経ても井口眞緒は日向坂にふさわしい。だけど、井口眞緒の可能性は日向坂46以外にもある。」ということを感じるようになってきました。

映画の中にあった、卒業を発表した後の彼女を温かく迎えるメンバーの態度には、「彼女の選択を尊重する」という感情が入っていたのではないでしょうか。作品のポスターにあるコピーの「誰も見捨てない」という言葉。これは卒業という選択をとった彼女にも間違いなく向けられている、人生の選択を尊重するという意味。グループに置き続けることだけが愛ではないことを感じさせられるシーンだったと思っています。

みーぱんのブログ

とまぁ、ここまで長々と書いてきた上でみーぱんこと佐々木美玲が卒業のタイミングで書いたブログが最高なので紹介させてください。

正直ここに全部書いてあるよねと言いたくなるくらい個人的に大好きな文章で、メンバー自身から、愛情も優しさも厳しさも、誰にでも理解できる言葉で発信されているので、このブログなんて蛇足以外のなにものでもありません。そのことは初めから分かっていましたが、「経緯を細かく書くこと」と「ひとりのファンはこういう目線で見ていたよ」ということが誰かの理解の一助になれば幸いだと考えて書きました。

以上です!最後まで読んでくださってありがとうございました!

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