殻をまとった子どもたち
アダルトチルドレン
という言葉を知ったのは
5年ほど前。
「機能不全家庭内で早期から大人にならざるを得なかった子ども」のことを指す。
メンタルの調子を本格的に崩して
カウンセリングを受けるようになってから
頻繁にこの言葉を耳にするようになった。
「アダルトチルドレン」を
細かく分類していくと
「ヤングナース」
「クラウン」「スケープゴート」など
「子どもたちが
崩壊した家庭内でどのような役割を担っていたか」
を知ることができる。
ある日のカウンセリングで
「あはたは『ヒーロー』だったんじゃないかな」と主治医に分析されたことがある。
「ヒーロー」とは
「一家を支えるために自分の意思とはそぐわない無理難題な課題を一生懸命こなす役割を担っていた子供」のことを指す。
確かにそうだと思った。
精神的に壊れている父親と
意思薄弱な権威追従型の母親は
2人自身の関係が抱える課題から逃げるように
私に色んなことを夢見た。
それは
ルックスが良いまま育つことであったり
優秀な成績を残すことであったり
従順な子どもで天真爛漫に振る舞うことであったり
した。
いっときは
それらで全てを解決したように思えた2人でも
しばらくすればまた
些細なことで父親の情緒は暴発して
母親は傷つけられ
嘆き悲しみ
私に慰めを求める。
父は自分の思い通りにならない時の私を
殺さんばかりの勢いで追い詰め
罵り倒し、殴りつけた。
泣くと「近所に泣き声が聞こえる」という理由で
枕を顔面に押し付けられた。
いつしか私は素直に泣くことも怒ることも
できない子供になっていった。
時々「死にたい」と口にする子供になった。
何度か「もう目が覚めませんように」と
祈りながら眠りについたこともあった。
楽に死にたかった。
まだ10歳にもなっていなかったのに。
当時は
「お母さんは優しく弱くてかわいそうだから、仕方ない。助けに来ないことも、お父さんと別れないことも仕方がない」と思っていた。
でも、成人した今思うことは
母もじゅうぶんに共犯だったということだ。
いくら色んな事情があったとはいえ
あんな男の側に置かれていたのだ。
私はそれらの「事情」に負けたのだ。
今でもときどき
悲しい目や理不尽な目に遭う。
そういう時
私は怒る。
やっと怒れるようになった。
だってアイツは死んだんだから。
もういないんだから。
それでも怒った後
「怒ってしまったこと」をひどく後悔する。
傷つけられたのは私なのに
いつの間にか罪悪感をなすりつけられている。
時々息が詰まって死にそうになる。
それでもまだ生きている。