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「性欲の女神、アプロディーテー誕生秘話」

今回は美と愛の女神、アプロディーテーのお話です。
まずは、アレクサンドル・カバネルが描いた『ヴィーナスの誕生(1863)』の絵画をご覧ください。

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なんとも美しい姿ですねー。
これはギリシャの神々の中でもひときわ美しい、愛と美の女神アプロディーテー(ヴィーナス)誕生のシーンなのです。同じ愛を司る神エロースたちも、法螺貝を吹いて新たな神の誕生を祝福しています。

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アプロディーテーの誕生で一番有名な絵画といえば、サンドロ・ボッティチェッリの『ヴィーナスの誕生(1483)』です。
逸話の通り、西風の神ゼファー(画面左)の息でキュプロス島に運ばれ、季節の女神ホーラ(画面右)が出迎えている場面が見事に描かれていますが、個人的にはカバネルの絵の方が人間味があって好きです。

いろいろな画家に描かれているヴィーナスの誕生ですが、
「はてこの女神、自然に海から湧いたものなの?」
という疑問が出てきます。
ギリシャの神々のトップグループといえる『オリュンポス十二神』の一柱を担っているアプロディーテーですが、どうも彼女の出自だけはよく分からないのですよね。

残酷な神々3

では、少し時間を遡ってみましょう。
これは、第二世代の神々の王クロノスが、ガイアに授けられたアダマスの鎌で、第一世代の王ウラノスのぺニスをちょん切って、政権奪取した瞬間の絵です。
で、そのちょん切られたペニスはどうなったかというと、地中海辺りに落ち、そのペニスに付いていた精液から発生した泡でアプロディーテーが生まれたそうです⋯⋯。

一体、彼女の正体は何なのでしょう?
「去勢されたし、今後は女として生きて行くわ!」
てな感じで、生まれ変わった姿のウラノス神ではないのか?
彼そのものではないとしても、後々のヴィーナスの奔放な性生活をみると、ガイアとのSEX中にぺニスを切り取られたウラノスの、満たされなかった残留思念が具現化した『性欲の神』と思えてくるのです。

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そう考えると、この波の泡から生まれたばかりの、妙にエロティックな女神の顔つきも納得が行くというもの。
それから、アプロディーテーの息子とも言われるエロースの存在。
本来エロースは世界の始まりから居る原初神、エレメントのような存在ですが、原初の神々の王ウラノスがその正体となれば、生まれたばかりの新人女神に付き従うのも納得が行くというもの。

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近代の作品、コンスタンチン・マコフスキー『ヴィーナスの誕生(1915)』では、半開きの貝殻に包まれた裸体のアプロディーテーのみが描かれ、さらにエロティックな意図が増しています。

第三世代の神々のトップに立ったゼウスは、ブレーンの十二神を自分の兄弟姉妹と子どもたちで固めたのですが、このアプロディーテーだけは完全に例外なのです。
海から登場した誰の子かもよく分からない、子ども時代すらない女神に、いきなりオリュンポス十二神の一柱を任せたワケですから。

「愛と美の女神アプロディーテーよ、よろしく!」
と、ちゃっかり十二神に潜り込んだつもりのウラノスですが、
──じいちゃん、正体ばればれやで⋯⋯。
などと思われつつも、初代の王ということでゼウスたちにも遠慮があったのかも知れませんね。(了)

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