オランダ黄金時代の作品を1冊で堪能できる、画集『フェルメールと8人の画家』
◉ オランダ黄金時代の9人画家たち
何年か前に出した画集ですが、『フェルメールと8人の画家』をご紹介いたします。
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ちょうど『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』が開催されており、2022年の2〜4月に東京展は終了しましたが、まだ北海道、大阪、宮城で展覧会が残っているので、宣伝記事を上げることにしました。
画集の内容は展覧会とも少し被っていて、フェルメールの真贋含めた全作品と、オランダ黄金時代に活躍した8人の画家の作品を掲載した絵画集になっています。
フェルメールの画集というよりは『オランダ黄金時代の9人画家たち』の画集と言った方が内容に近いかも知れません。
◉ オランダ絵画黄金期の画家、フェルメール
現存しているフェルメールの作品はとても少なくて、全部で32〜37作と言われています。
作品数に幅があるのは、フェルメールかどうかの判断が専門家のあいだでも揺れている作品が含まれるからですが、第1章では、フェルメール作と言われる37作を全て掲載しています。
ぶっちゃけ贋作ではないにしても、作風のよく似た画家はけっこう居たので、別の画家の作品が何作かは混じってるような気がしますね。
フェルメールの絵の特徴は、当時普及していたカメラ・オブスクラというピンホールカメラを駆使した写実的な空間構成や、ポワンティエという光の粒を描く手法にありました。
上の『牛乳を注ぐ女』のように、細部に白い点として光の粒を描き込むことで、柔らかくきらきらと輝くような印象を作り出しているんです。
フェルメールといえば『真珠の耳飾りの少女』が有名です。
神秘的な微笑みや目の表情から、北方のモナ・リザとも呼ばれています。モナ・リザ同様に、特定の人物をモデルにしたのではなく、画家が理想化した人物(トローニー)を描いたのではないかと言われています。
シンプルな黒い背景に異国情緒のあるターバン姿は、現代の感覚でみてもキャッチーですよねー。
◉ 『窓辺で手紙を読む女』の壁に巨大なキューピット
現在(2022年)開催中の展覧会には、2021年に修復された『窓辺で手紙を読む女』も展示されています。静謐な部屋の窓辺で手紙を読んでいた女性の背後の壁に、突如巨大なキューピットの絵が出現したのです。
もともと、X線写真で背後にキューピットが描かれているのは分かっていたのですが、別人が塗り潰したことがはっきりしたので、画家の意図通りに修復したというわけです。
元のキューピットがない状態が好きな方も大勢居るでしょうから、ぼくの画集では修復前の絵もそのまま掲載しておくことにしました。
上のコラムはちょっとしたお遊びで、壁に飾り物のある作品は消して、逆に壁に何もない作品に飾り物を足しています。
実際『牛乳を注ぐ女』の背後の壁にはX線写真で地図があることは分かっているので、このお遊びのように地図有りの状態に修復されるかも知れません。
◉ 贋作画家、ハン・ファン・メーヘレン
フェルメール全作品の後に、贋作画家として有名なハン・ファン・メーヘレンのコラムを掲載しています。
フェルメールの贋作『キリストと悔恨の女』をナチス・ドイツに売りつけたということで、犯罪を犯していたにも関わらず一躍ヒーローになった人物です。
◉ オランダ黄金時代、8人の画家
第2章からは、フェルメールと同時代に活躍したオランダ画家たち8人を、簡単なプロフィールとともに紹介しています。
ご覧になっていただければ分かりますが、フェルメールとそっくりな作品も多いです。誰がオリジナルということでもないのでしょうが、フェルメールの絵が好きな人にとって、フェルメール風の作品がたくさん楽しめる画集となっています。
トップバッターは、ビーテル・デ・ホーホです。
フェルメールに多大な影響を与えたと言われる画家であり、オランダではフェルメールと同様に高い評価を得ています。
絵の完成度はどれも素晴らしいですが、フェルメールのように人物中心の作品はあまりないようですね。
ピーテル・ヤンセンス・エリンガの絵もとても美しいです。
室内を描いた作品ばかりですが、光の差し込む部屋の空間がとても気持ち良く描かれています。
一番最後に、ヤン・ステーンの作品を大量に掲載しています。
心の中でエロいフェルメール、略してエロメールと呼んでいる画家ですが、農夫たちの乱痴気騒ぎを得意とした画風は、フェルメールとは対局にある画家と言えるでしょう。
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本書『フェルメールと8人の画家』は、オランダ黄金時代の作品が一度に楽しめる画集になっています。
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著者=渋谷獏 出版社=TAPIRUS
発売日=2019/3/24 ページ数=460頁
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