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「メドゥーサ殺し、アテーナーの悪行」
今回は怪物メドゥーサのお話です。
この絵は、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオが描いた『メドゥーサ(1596)』です。
すごい顔してますねー。
これは、英雄ペルセウスがメドゥーサの首を刎ねた場面でもあり、のちのちアテーナーの盾アイギスに嵌め込まれた生首でもあります。円形なのは盾の形を模してるんです。
怪物なので醜く描かれた絵が多いですが、本来のメドゥーサは美しい娘の姿をしておりました。その頃のメドゥーサは海神ポセイドーンの愛人だったのですが、アテーナーを祀る神殿でSEXしちゃったため、怒りを買ってこんな姿に変えられたのです。
抗議したお姉さん二人もついでに化け物に変えたりと、ヒステリックなアテーナーの一面が見て取れますね。
さて、少し時間を遡ってみましょう。
上はティツィアーノ・ヴェチェッリオの描いた『ダナエー(1544)』で、最高神ゼウスが金の雨(射精)となって部屋に侵入し、アルゴス王の娘ダナエーを手籠めにしている場面です。で、生まれてきた息子が英雄ペルセウスです。
我が子が可愛いのか、ゴルゴーンの首を取って来いとむちゃ振りをされて困ってるペルセウスに、ゼウスはアテーナーとヘルメースを派遣します。
姿が見えなくなる兜(隠れ兜)でそっと近づいて首を刎ね、袋詰めにして空を飛べるサンダル(タラリア)ですたこら逃走します。
突然、首を刎ねられちゃったので、びっくり仰天した表情になっているのかも知れませんね。
上はエドワード・バーン=ジョーンズが描く『メドゥーサの死(1882)』という絵画で、似たような姿のゴルゴーン三姉妹が描かれています。
全身の描かれた絵画はあまりないのですが、メドゥーサは髪の毛が無数の蛇、歯は猪、青銅の手と金色の翼を持ち、その顔を見た者を石に変えてしまう化け物なのです。
その後、ペルセウスは母を助けに戻る前に、海の怪物ケートスに生贄にされかけていたアンドロメダーを助けます。上はゴルゴーンの首を「怪光線じゃ、おりゃー!」とケートスに向け、石化しているところですね。
次にペルセウスは、メドゥーサの首を取って来いとむちゃぶりをしたポリュデクテス王のもとへ、母を助けに戻ります。上はルカ・ジョルダーノ『フィネウスとその一味を打ち倒すペルセウス(1670)』です。
またしても、
「怪光線じゃ、おりゃー!おりゃー!」
とばかり、彼の手下や王子のフィネウスともども石に変えてしまいます。
完全に飛び道具扱いですね⋯⋯。
すべての難事が解決し、ペルセウスはアテーナーとヘルメースに借りた道具を返すのですが、このときアテーナーの盾アイギスにメドゥーサの首を嵌め込んだまま献上したようです。
ルーベンスの描いた『パリスの審判(1632-1635)』では、美しい三美神の絵の左端に、びっくり仰天した表情のメドゥーサの盾が描かれております。
このお話、すでに怪物化していたメドゥーサ退治をしたペルセウスに罪はないと思います。が、アテーナーの神殿で一緒にSEXを愉しんでいたポセイドーンはお咎めなしで、メドゥーサだけが化け物に変えられ、最後はアテーナー愛用の盾に嵌め込まれてしまう運命とは、さすがに哀れすぎる⋯⋯。
メドゥーサのあまりの美しさにアテーナーが嫉妬したのではないかという噂もあるんですが、確かにこの陰湿な殺し方をみるとありそうな話です。(了)