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外耳異物 -耳に何か入ったら-

子供は何をするかわからないものです。
間違って口に含んでしまったり、耳や鼻に入れてしまったりします。
多くは問題になりませんが奥に入ると取れなくなることがあります。
また想像するだけでゾッとしますが、寝ているときに耳に虫が入ってしまうことも遭遇します。
かくいう私自身も子どものときに鼻におもちゃを入れて取れなくなったことがあります…(くしゃみしたら無事にとれました)。
夕方や夜間に発生することもあり救急外来を受診することもあります。
今回は外耳異物に関して非専門医であっても抑えておきたいポイントをまとめていきます。


受診したら確認しておくこと

外耳異物の場合には以下のことを確認しておくとよいです。
・何が入っているか
・難聴、耳鳴、疼痛はないか
・いつから入っているか、もしくは入ったと思われるか
外耳異物は小児が多く、その中で8歳未満が74%を占めるという報告があります(Pediatrics. 1998 Apr;101(4 Pt 1):638-41. PMID: 9521948)。
異物が耳に入ったとなると焦っている受診することも多いです。
特に虫が入った場合には、羽音がずっと続いているためパニックになっている場合もあります。
まずは落ち着くように説明し、虫の場合には早めに殺虫してあげるようにしましょう。

異物除去の方法

外耳異物を除去する際には、鼓膜・内耳損傷の有無を確認する必要があります。前述の通り外耳異物は小児に多く、安全に行うために固定が必要です。
保護者のかたに抱えていただく、もしくはタオルケットでくるむようにします。自施設での慣れた方法に合わせてください。
鼓膜の確認をするために耳鏡で確認します。すでにめまいや難聴を伴っている場合には鼓膜や内耳損傷を疑い、耳鼻科医師に相談します(事前に施設で基準を設けるとよいです)。
明らかな損傷がないことを確認出来たら除去に移ります。耳用鑷子や異物鉤を用いて耳の外に出します。初回が最も成功率が高く、二回目以降は成功率が低下し合併症が増えていきます(Ann Otol Rhinol Laryngol. 2017 Nov;126(11):755-761. PMID: 28954532)。1-2回試行し困難な場合には耳鼻科医師に相談するのがよいでしょう。
除去の方法として洗浄法もあります。つかみにくい小さなものには有効です。サーフロの外筒を用いて生理食塩水を耳に注入し流れ出されるのを待ちます。このとき冷えた生理食塩水を使うとめまいを誘発します。目安としては30度未満は控えたほうがよいです。また鼓膜の穿孔が疑われる場合や電池、豆類では洗浄法は適さないとされています。

虫の殺め方

虫が入ってしまった場合には除去の前に虫を殺す必要があります。
以下の観点から除去の前に行ったほうがよいとされています。
・虫が動くことで外耳損傷を起こしたりやさらに奥に入ってしまったりする
虫の動く音が患者にとって極めて苦痛である
虫を殺す方法として液体を外耳にそそぎ窒息死させる方法があります。単純な水よりもオリブ油やリドカインがよくつかわれます(ちなみにオリブ油は処方できます)。この時も先述の通り人肌くらいの温かさがよいです。
虫を殺した後に落ち着いて除去や鼓膜の確認をするようにしましょう。

すぐに専門医に見せるべき場合

施設での状況によりますが、以下の場合には耳鼻科へ迅速に依頼したほうが良いと考えます。
・緊急性の高い異物(鉛筆や針といった鋭利なもの、ボタン電池)
・鼓膜損傷がある
・除去が困難である
また除去が成功した場合でも、手技の際に外耳を傷つけている可能性があります。症状がある場合には耳鼻科への再診を説明しておきましょう。

終わりに

今回は外耳異物に関してまとめてみました。
異物の不快感は強く、特に虫の場合にはトラウマになってしまうこともあるようです。可能な限り迅速に対応していく必要があります。
紹介するキーワードや処置の際のポイントを押さえて診療していきたいと思います。

参考文献:
・松原知康 茂木恒俊 マイナーエマージェンシー はじめの一歩 MEDSI
・山本基佳 季節の救急 第2版 日本医事新報社

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