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【作家】村上春樹との邂逅と永遠のあこがれ

『村上春樹』は私が一番好きな作家である。
『村上春樹』が好きだったから、彼の卒業した大学を目指し、彼が学んだキャンパスを歩いて、彼の見たものを吸収しようとした。
 しかし実際のところ彼は大学が嫌いで、なにかのエッセーで「大学は私のことを果敢に宣伝しているが、私は大学に対して思い入れはない」と、結構なページ数で批判していたことを覚えている。入学してからこのことを知ったのだが、反骨精神というか『誰にも自分を語って欲しくない』という態度にまたノックアウトされてしまった。
 彼の想いとは裏腹に、私の在学中には『村上春樹キャンペーン』が頻繁に行われていた。キャンパス中のいたるところに紹介ポスター(※顔写真のどアップ)が張られており、ここまでくると「秋葉原のアニメ広告みたいだな…」と思った。最終的には『村上春樹ライブラリー』という文学館も作られたが、村上春樹はもう勘弁してくれと思っているんじゃなかろうか。

私が村上春樹を好きになったのは、高校3年生のころ。
著書『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を読み、①文章の緻密さ、②独特の世界観、③意味不明な描写に引き込まれた。正直なところ、一度読んだだけでは意味が分からなかった。ただ「なにかが凄い」ということは伝わった。ちょうど進路調査の時期だったこともあり、「こんな作品を書く人はどんな大学を出たんだろう?」思ったことで、一瞬で志望校が決まったのであった。
(※別の記事で書くが、このとき『小川洋子』『角田光代』『恩田陸』らも卒業生であることを知り、さらに志望度が上がった。)

 これが、私と村上春樹が邂逅した瞬間だったように思う。一冊の本を通して、高校生の自分は『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の中に登場する2つの世界に飲み込まれてしまった。読み終わったところで、物語の本質を理解していない以上、わたしの感動はあの世界にまだ取り残されている。
 大学生になっても、社会人の今も、何回読んでも感動を味わわされる。そして「あれはどういう意味だったのだろう?」という疑問が、ときに新しい観点から芽吹く。したがって、この物語の新鮮さを味わいきることはいまだにできていない。これが村上春樹の文章力(※こんなチープな言葉では表せないが)のなせる業なのか、それとも全く違う何かなのか?
 だから、私の彼へ対するあこがれは、永遠に『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』に残されているままなんだと思う。終わりのない永遠の旅路。これこそが、幸せな読書体験というものなのではないかと信じている。


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