ごめんねを言わせてしまった


一人暮らしを始めたきっかけは
特になかった。

2回目のひとり暮らし。

1回目の大変さを知って
もうしたくない…と言う反面
やっぱりしたいという気持ちもあった。

自分の空間が
仕事場が欲しかった。

最初は仕事場用で
よく働いている池袋が近い物件を探していた。

1万円くらいだったらいいななんでも思っていた。
そんな物件なかった。

じゃあとりあえず3万で…ということで
知り合いの不動産屋に探してもらった。
そしたら駅から徒歩10分
7.7畳の綺麗なお部屋が3万3000円で見つかった。

普通に住めるやん。ってなって
結局ひとり暮らしになった。

2回目なので寂しいとかはなく
むしろ忙しくて何も感じなかった。

たまに実家に戻ると
すごく不機嫌になってしまう。
パパとは頻繁に連絡も取るし
実家に戻っても話は止まない。

ただ母にだけは冷たかった。
ほら自然と「ママ」ではなく「母」と言ってる。

愛情深い母は
親バカってほど愛してくれて
心配性でよく面倒を見てくれて
いつだって私の味方だった。

バイトをしたら怒られたし
(バイトの大変さを味わってほしくなかった)
学校だって休ませてくれて
ちょっと体調が悪い雰囲気を出すと勝手に学校に休みの電話を入れるほどだった。

ふたりで出かけることもよくあったし
母の日や誕生日プレゼントは
サプライズをたくさんした。

ただひとつだけ欠点があった。
母は浪費家だ。

フィリピン人の母は
フィリピンにいる兄にもお金を送っていたり
フィリピンに家を建てたり
自身がブランド好きだったり
美容代も20代の私よりも遥かに高かった。

お金にだらしなく
止まったら払う。
そんな感じだった。

パパもパパだ。
お給料をすべて母にあげるのだ。

どの家庭も少しは貯金あるだろうと思っていたし
一番驚いたのは成人式の日。

成人祝いでいくらかもらえるのかなと勝手に思っていた。
それまでコツコツ貯めてたのかなと思っていた。

全くその概念がなかった。

振袖も私のカードでレンタルし
祝い金もなかった。
そこから自分の家計が一気に心配になってきた。

貯金残高ゼロなんてありえないと。


私は母がお金をよく使うタイプだと
知っていたがかなり頻繁に
働いていたスナックのお客さんに
「お金がないの…」というと
パッと「10〜50万」もらってきた。 

嘘をついてお金をもらって
ウキウキの母の顔は嫌いだった。

ただ、きっとお客さんも懲りてきたのだろう。
最近もらえている節を見たことがない。

きっとずっとそれでなんとかなってきたからか
私のカードで家具を買い、
パソコンが欲しいなと思い一番安いやつを買おうとしたら(見栄を張る人だから)「一番高いものにしていいよ、ママが払うから」
と言って35万ほどのパソコンを買ってもらった。

何かあるとカード貸して。と言われて
最初の方は額は少なかったが
分割で重ねるうちに
毎月17万ほどいくときがあった。


私も数万カード支払いする時もあるので
半分ずつ払っていたが
まだ払えないと言われることが続き
支払いが遅れることが多くなった。

そこで先に私が27日払いを10日払いにしてもらい母には27日払いと伝えているが
それでも払えない日が続いた。

肩代わりしていた。

そんな中で母は携帯をお客さんに契約してもらったのだが喧嘩を原因に携帯を止められた。

そこでまたすがってきたのだ。
携帯を買って欲しい、いやママが払うから名義を私にして欲しい。と。

パパもこのすがりにより
カードはブラックになり
名義で携帯も買えなくなっていた。

私は頑なに断ったし
何度も相談し
ずっと断った。

私が朝目覚めると「お願い、絶対に払う」
が毎日続き私もストレスになった。

携帯一つも買ってあげられない私は親不孝だ。なんて自分をせめて夜中に大泣きした日もあった。

最後の最後に
「私はまだ20代。私の夢を壊したいならいいよ」と伝えた。

そしたら母は
「大丈夫、絶対払える。あとその代わりに○○(私)の携帯代も毎月払う」

そう言った。

そして不機嫌なまま携帯ショップに向かった。
中古でもいいじゃないかと思ってたけど
母が選んだのは最新のものだった。
しかも「一番大きいのがいい」と話を聞かないのだ。

そして
ご想像通り携帯代は支払われなかった。

22歳フリーランス。
ただでさえ不安定な職業なのに
休む間もなく働いた。


そして私は先日コロナになった。
働けなくなったのだ。
肩代わりができなくなったのだ。
でもカードも携帯名義もすべて私だ。

不安に打ちひしがれていたとき
母から電話があった。

「ママが10万払うから大丈夫だよ。」
その10万は元々払ってもらう予定のものだったが
幼き頃救ってくれた母の「大丈夫」を
私はなぜか信じてしまった。

そして結論大丈夫じゃなかった。

生活費を節約するため
ご飯も少し抜いたりした。
みるみる痩せた。

その写真を母に送った。
「痩せたの。ダメじゃない」
と返信がきた。

その後に
「ご飯代ないから。財布に1,000円しかないから」といったら

初めて母から

「ごめんね」


とラインがきた。
なぜか心が苦しくなった。


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