芸能活動と「躁的防衛」| 過度に明るく振舞ってしまう?
芸能界で活躍する人々は、ステージやスクリーンの上で常に明るく元気な姿を見せることが求められます。しかし、その表舞台の裏には、「躁的防衛(そうてきぼうえい)」と呼ばれる心理的なメカニズムが働いていることがあります。
躁的防衛とは?
「躁的防衛」(Manic Defense)とは、ネガティブな感情やストレスを感じたとき、内面的な不安や悲しみを切り離すために、無意識に過剰にポジティブな振る舞いをすることで自分を守ろうとする反応で、精神分析家のメラニー・クライン(Melanie Klein 1882-1960)がその概念を提唱しています。
例えば、悲しい出来事を大笑いながら話したり、仕事のプレッシャーや人間関係のトラブルがあったとしても、過剰にハイテンションに振る舞い続けることで、自分自身に「問題ない」と思わせ、こころの痛みを感じないようにすると言われています。
芸能活動における躁的防衛
芸能活動に従事する方々にとって、自己表現は仕事の一部です。
そのため、感情をオープンにする機会が多くある反面、負の感情を表に出さないようにすることも要求されます。
自己表現が仕事の一部であることや、人と違う「変わっている」など突出したものを求められる面があるためこうした防衛機制に気づきにくいこともあるのではないでしょうか。特に、周囲からの期待や注目が高まるほど、自己防衛としてのポジティブな振る舞いが過剰になる可能性もあります。
躁的防衛の役割とリスク
躁的防衛は、短期的にはストレスを和らげたり、仕事のパフォーマンスを維持するための手段として役立つことがあります。特に芸能活動においては、見てくれる人や周囲の期待に応えるために一時的に感情を抑え、元気な自分を演じることが求められる場面が多いでしょう。
しかし、長期間続くと、自分自身の本来の感情に気づかず、無理を重ねて心身のバランスが崩れてしまうことがあります。自分自身の本当の感情を他者と共有できずに孤立感を感じたり、一人になった時にひどい落ち込みがやってきたりします。これが積み重なると、バーンアウトやうつ病、適応障害などのリスクが高まる可能性があります。
健康的なバランスのとり方
芸能活動において心の健康を維持するためには、自己防衛としての躁的防衛を理解し、適度に活用することが重要です。そのためにできる対処法を3つご紹介します。
1. 感情に気づいて受け入れる
躁的防衛は一時的に感情を抑えるのに役立ちますが、その分自分の本当の感情に向き合う時間を持つことが重要です。
例えば、日記をつけてその日に感じた感情を書き出すことや、感情に名前をつけることが効果的です。「今日は悲しかった」「今日は不安を感じた」といった形で、感情を言葉にすることで、自己認識が深まります。
2. 無理をしない自己表現の場を見つける
仕事ではなく、趣味や日常生活の中で、無理なく自然体で自己表現できる場所を見つけることも大切です。たとえば、普段の活動とはまた別の芸術や音楽、スポーツなど、自分がリラックスして楽しめる活動を取り入れることで、感情を健全な形で表現し、心の健康の維持につながります。また、これらの活動を通じて新たなコミュニティを築くことで、孤立感を防ぐことにももつながります。
3. 信頼できるサポートシステムの構築
感情を共有できる信頼できる人々とのつながりも重要です。
友人や家族、仲間と定期的に話して感情を分かち合うことで、お互いにサポーティブな関係をつくることができます。
なかなか本心を話しづらい場合などは、専門的なメンタルサポートを受けることもおススメです。カウンセリングは、プロフェッショナルな相手と共に自分の感情を整理し、健康的な対処法を学ぶための有効な手段です。定期的なセッションを通じて、自己理解が深まります。
周囲の理解とサポートの重要性
躁的防衛は使っている本人も自分の本心やストレスに気づかずに過ごしていることが多いため、周囲の人々もこの防衛機制に気づき、サポートすることが大切です。
ハイテンションすぎる振る舞いが続く場合、その背後に隠れているかもしれない苦悩を見逃さないようにしましょう。
定期的に声をかけ話を聞く姿勢を示したり、相手に対して思いやりを持って接し、必要であればカウンセリングなどを勧めることが適切です。
まとめ
芸能活動に従事する方々にとって、「躁的防衛」は感情的なストレスから自分を守るための無意識の反応です。適切に活用することで、一時的なストレス軽減やパフォーマンスの維持に役立つ一方で、長期的には心の健康を損なうリスクも伴います。自分の本当の感情に気づき、自己理解を深めることで、より健全なキャリアを築くことにつながります。心のバランスを保ちながら、輝き続けるための道を一緒に歩んでいきましょう。
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