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ラスト・チャンス(14) 〜ゲームの主人公に転生したら、どのルートもバッドエンドだったんですが!?〜

↑1話目はこちら(1話目の先頭に目次あり)

第14話 対面

 パーティはそれはそれは豪華なもので、芸能人の結婚式でもここまで華やかではないだろうと思えるほど。中央国の王家ともなれば、その権力も財力もレベルが違うことを実感する。庶民の私のままだったら完全に気後れしてしまいそうだけど、ここは王女たるエマの記憶があることに大いに助けられたわね。

 会場に入る前に王と王妃、つまり両親に会ってドレス姿をべた褒めされる。そうだ、特に父親はエマに甘々だったんだよなー。しかしそんな父親に紹介される形で三王子に引き合わされるわけだが、ひょっとすると両親はエマをどこかにやるつもりなんて全くなかったのかも知れないわね。目に入れても痛くないと言った感じの王だもの、そう簡単に他の男にくれてやるつもりなんてないんじゃないかな。

 そんなことを考えながら王と王妃に続いて二階から続く階段を降りると、何人いるのか分からないほどの来賓から割れんばかりの拍手。自分じゃ分からないけど、傍から見れば今日のエマはキラキラに輝いているに違いない。ここはちゃんと王女を演じて、素の自分を出さない様に努めなければ。

「本日は我が娘、エマのためにお集まり頂き感謝する。成人したとは言えまだ若輩者の娘を、皆からも色々と指導してやって頂きたい」

 王の言葉に続き、私からの挨拶。緊張していてもう何喋ったか覚えてもないけど、拍手もらえたから多分大丈夫! その後はワラワラと来賓に取り囲まれて挨拶三昧。こ、これが王女の仕事ってやつか! ゲーム内のエマは正直恋愛しかしてなかったんだけど、実際彼女も色々と苦労してるんだなあ。しかし、ここで疲れている場合じゃない。メインイベントはこの後の三王子との対面なんだから!

 そうこうしている内に王に呼ばれ、彼に付き従って別室へ。さあ、いよいよ本番だ!

「エマ、本日お前のためにわざわざ来てくださった三国の国王とそのご子息だ」
「皆様、初めまして。エマ・イグレシアスでございます。本日は私のパーティーに参加頂き、誠に有り難うございます」
「イグレシアス一の美女と噂のエマ王女にお目にかかれて光栄ですな。どうやら噂は本当だったらしい」
「まあ、インファンテ王様、お上手ですわ」
「ガハハハ」
 
 豪快な人物とは聞いていたが、本当に豪快なインファンテ王。娘が褒められて父である王もどこかデレデレしている。他の王もにこやかだし、どうやら四王の仲は悪くはないらしい。しかしまあ私が殺されたら戦争になっちゃうんだから、表面上だけのことかも知れないけど。

 一方三王子はそれぞれ緊張した面持ち。ユージーン王子は女性慣れしてるところがあるからまだ余裕があるけれど、レジナルド王子はガチガチ。マシュー王子に至っては顔色がちょっと悪くて、できるなら逃げ出したいって感じね。

「せっかくお越し頂いたわけだし、今宵のエマのパートナーは王子の誰かにお譲りしよう。存分に楽しまれるが良い」
「お父様ったら、そんなことを急に言われても皆さんお困りの様ですわ。お父様たちは何かお話がある様ですし、せっかくですので私は王子の皆様とお話させて頂けますか?」
「そうか? まあそれも良いだろう」

 よしっ! まずは三王子を連れ出すのに成功! 連れてこられたのが一番豪華な応接だったからこの後何かしら国王同士の話があるんだろうと思っていたけど、推測は正しかった様だ。

「それでは皆様、こちらへ」

 王子三人を連れて別室へ。もうすぐダンスが始まるので余り時間はないけど、話しておかなければ。

「改めまして、エマ・イグレシアスです。本日はお越しくださり有り難うございます」

 王子も自己紹介をしてくれて、テーブルを囲う様に座る。

「流石にイグレシアスの王女様ともなるとパーティーの規模が違いますね。今日、婚約者をお決めになるとお聞きしましたが」

 ストレートに聞いてきたのはユージーン王子。聞きにくいこともスラッとスマートに聞いちゃうんだから、このイケメンめ。

「その様に父からは言われておりますが、私はまだまだ若輩者ゆえ、本当にそれで良いのか迷っているところですわ」
「ほう? 他におやりになりたいことが?」
「はい。より見聞を広げ知識を身につけるためにアカデミーに入学しようかと考えております」

 アカデミーと聞いて、一番反応したのはマシュー王子。彼は植物の研究が好きだし、アカデミー入学に一番興味ありそうだもんね。レジナルド王子はあまり興味なさそうだけど、ユージーン王子は……ポーカーフェースで分からん! いや、彼とて外交に興味があるんだから、アカデミーにはそれなりに惹かれているはず。

「我が国のアカデミーはイグレシアスはもちろんのこと、インファンテ、フォーセット、ラッシュブルックからも講師を迎えて授業をしております。またアカデミーの図書館は四国一とも言われておりますので、まさに学問の園。今将来の伴侶を選ぶことも簡単でしょうけど、より人として成長してからでも遅くはないと考えております」
「素晴らしいお考えですね! 僕も学問には興味がありますので、宜しければアカデミーについてお聞かせ頂けませんか?」
「私もアカデミーについては是非お聞かせ頂きたいですね」

 思った通り、二人は興味を示してくれた。残るはレジナルド王子だけど、こいつはあんまり学問って感じではないもんなあ。まあ、一緒に入学してくれなくてもいいっちゃいいんだけど、私の計画では三人まとまって入ってくれた方が有り難いのよ!

「レジナルド様はいかがですか? アカデミーは学問のみならず武術や剣術の授業もございます。実際に騎士を招いての訓練もあると聞いておりますが」
「本当か!?」

 ビンゴ! 筋肉キャラはやっぱり武術や剣術の方が興味あるわよね。さてもうひと押し、ダメ押ししておきますか。

「アカデミーは学びの場ゆえ生徒は皆平等であることを信条としております。ですので私とて入学してしまえば一生徒ですわ。皆様もそうなることはご了承ください。お一人でご不安でしたらどなたかご一緒に入学されても構いませんよ。学費などは全てイグレシアスが負担致しますので」

 学費などを負担するのはリップサービスだけど、まあ王家の財力があれば問題ないだろう。とりあえず国王に甘えてみよう。

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