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ラスト・チャンス(3) 〜ゲームの主人公に転生したら、どのルートもバッドエンドだったんですが!?〜

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第3話 この世界

 エマ王女の恋愛ストーリーを振り返る前に、こちらの世界のことを簡単に紹介しておこうかしら。そもそもゲームのマニュアルでは国名ぐらいしか載ってなかったんだけど、当然ながら現実世界としての歴史であるとか文化であるとかは存在している。ゲームでは全然関係なかったけれど、こちらの世界で現実に王子と付き合うとなると歴史や国の立地なんかが結構影響してくるのよね。

 エマ王女は中央国と呼ばれるイグレシアス王国にいて、それを取り囲む様に三つの国が存在している。東側にはラッシュブルク王国、南側にはフォーセット王国、そして西側にはインファンテ王国。北側は山脈になっていてその向こう側にも別の国があるはずだけど、高い山脈が自然の城壁となってほぼ交流がない状態。この四つの国はもともと一つの大きな王国だったけれどやがて中央国と連邦君主制国家となり、周りの三国が王国となった経緯がある。昔の名残りか今でも中央国の権力が強いんだけど、立地上色々な産業、商業の流通の要になっているからかも知れないわね。

 そんな関係でイグレシアスは商業でも中央国。周辺の三国からあらゆる物資が持ち込まれ、そして出ていく。王都の他にもいくつか大都市が存在し、それぞれの街がとても繁栄していた。東のラッシュブルク王国は言わば貿易の国で、海に面していて水産業も盛ん。海を挟んで他国との交易がある。諸外国からこの四国は今でも『旧王国』と言われることがあり、その海の玄関口と言うわけだ。

 南のフォーセットは穏やかな気候を生かした農業国で、旧王国の食料庫とも言われている。もちろん他の三国にも農家はあるけれど、フォーセットほど大規模に農業を展開している国はない。北の山脈からイグレシアスを横切ってフォーセットに流れ込む大河があり、それを活用した水上輸送も盛んだ。最後に西のインファンテはイグレシアスと同様北側に山脈があり、東側、西側の一部も山脈に囲まれている。各種鉱物の採掘が盛んで、その関係で武器の生産や宝石、装飾品などの産業が盛んな国。更に西側の他国と戦争することもしばしばあり、そのため軍事に力を入れている国でもある。

 この様に四国がそれぞれ強みを持っていて、四国内や他国との交易もあってかなり裕福な国々。もともと一つの王国と言うこともあって、四国はお互いに補い合って発展している感じだ。旧王国の成立時点から考えると数百年の歴史がある。こういう所ももうちょっとゲームに組み込んでくれればクソゲーなんて言われずに済んだかもなあ。それは置いておいて、中央国の権力が若干強いものの四国間では程良いバランスが存在し、よって中央国の王子の妃は周辺三国の王族、貴族から迎えられたり、また王女の場合は三国のどこかに嫁いだりするのが慣習の様になっている。ゲームでは三人の王子から一人選んで自由恋愛の様にストーリーを楽しんでいたけど、実際のところはそう言う複雑な裏事情もあるのよね。

 更には各国の国内事情もある。エマは中央国の王女だからあまり気にしていなかったけれど、周辺三国には当然中央国とのつながりに否定的な勢力もいる。また権力とは少し離れた場所で自身が儲ける事ばかり追求する様な守銭奴たちもいて、表の社会とドス黒い社会は紙一重で存在しているものだった。まあ、これは前世と一緒かな。三つの扉にトライしてどの場合も最後に殺されてしまったのは、そう言った黒い何かが影響していたのではないかと思っている。これらは流石にゲームには盛り込めないわよね、趣旨が変わっちゃうし。

 こちらの世界は地球ととても環境が似ているけれど、もちろん違う部分もある。そもそも地球なのかどうなのか分からないけれど、衛星が2つある。一つは18日周期で公転していて、もう一つは20日周期。一年は地球よりも少し短い360日で、一ヶ月は30日。一日は36時間でも良さそうだけど、そこは24時間だった。並行世界だからだろうけど、こう言うところはもうちょっと違った尺度があっても数学的には面白かったわね。

 違っているところと言えば、この世界には一応魔法みたいなものが存在する。イーサと言う特別なエネルギーが存在し、これが私たちが言うところの『魔法』の元になっている。この研究が盛んに行われていて、科学に相当するイーサリズムが発達している。イーサを持たない人でもこの恩恵に預かりイーサラム、つまり魔法が使えるのだ。これが生活に浸透しているので、要は前世での石油がイーサに置き換わった様な感じかな。前世では超能力的な扱いのこともできてしまうので、ノリとしては魔法社会に近いけれど。因みに言っておくと、こんなことはゲームでは一言も出てこなかった。まあ、恋愛には関係ないもんね。

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