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二次創作小説の英訳を頑張った話


『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(はめふら)

■概要

「山口 悟」先生の作品でして、元々は『小説家になろう』に連載されていた小説で、なんと今年で10周年とのこと! おめでとうございます🎉🎉🎉

文庫本化、コミック化、アニメ化、舞台化、そして映画化もされている作品ですので、内容に関しては触れる必要もないでしょうけど、

アニメの公式サイトを貼っておきます。

■関連作品

「はめふら」にはスピンオフ的な作品として「破滅寸前編」がありまして、こちらはコミックが発売されております。

■二次創作

これだけの作品ですから、二次創作もイラストや小説などなど沢山の方々がされています。かく言う私もその端くれでして、細々と二次創作小説などを書いております。

(出来はともかく💦)最近はオリジナルの一次創作小説を書くことが多いのですが、元を辿れば文章を書き始めたのは「はめふら」のアニメを見たのがきっかけでした。ちょうどコロナ禍で在宅勤務の日々が続いた頃で、何にそこまでハマったのかは今からすると良く分からないのですが、とにかくこの作品に「文章を書きたい欲」が刺激されて、そこから二次創作にどっぷりハマってしまった訳です。

二次創作を通して多くの方と(主にネット上)で知り合うことができました。そして今まで知らなかった、よりディープな世界があることも。世間一般からすれば『オタク』で括られて終わりなのかも知れませんけど、イラストであれ小説であれ皆さんとても情熱的で、生活の中で上手く時間を使って取り組んでおられる。ネット越しとは言えそういう雰囲気を感じ取れたからこそ、自分も文章を書くことを続けられてるのかなあ、なんて思います。好きなことやってるのって、ホント楽しいですもんね!

■ある長編二次創作

そうやって「はめふら」二次創作を書く中で、あることを思いつきました。

スピンオフで「破滅寸前」があるんだから、「破滅後」があってもよくね?

はい、単純ですね😅。でも二次創作の良いところは、思いついたら書き始めれば良いこと。そしてpixiv様など、発表の場が提供されていること。ってことで早速あらすじを考えて書き始めました。そして出来上がったのがこちら。

全22話で約9万字の結構は長編になりました。色々と苦労もした作品なので、自分の書いた二次創作の中でも特に思い入れのある作品です。多くの方に読んで頂けましたし、(内容が内容だけに賛否もあるんでしょうけど)自分的には書いて満足できた作品でした。

思い入れが強いので書いたあとも色々とやりたくなりまして、続編を書いたり自分で文庫本化してみたいりもしました。最近はネットオーダーできる印刷会社さんも多くて、同人誌として文庫本化も簡単にできちゃうんですよね。いや、いい世の中になったもんだ。

あと、何かできることはないかなあ、と考えた際、「英訳して海外の二次創作サイトに投稿してみるのも面白いかも!」との考えに至りました。

英語圏二次創作サイト

■AO3

英語圏で有名な二次創作サイトを調べると、AO3(Archive of Our Own)サイトがヒットしました。

FAQの日本語版も提供されていて、日本のアニメのfanfic(fan fiction : 二次創作)も沢山投稿されています。もちろん「はめふら」のfanficも沢山投稿されていました。ってことで、ここに投稿することに決めました。

英訳する

■MS-Word

さあ、英訳するぞ!……とは思ったのですが、自作とは言え流石に9万字を最初から全部自力で英訳するのはしんどい……ってことで、正確さはともかくとして、全部を一気に英訳できる方法を探しました。

Webサイトで提供されている、例えばGoogle翻訳とかDeepLサービスは、一度に翻訳できる文字数が決まっていて、まあ普通に考えて9万字の小説を一気に翻訳できる「無料の」サービスなんてない訳です。困った……そう思って色々と試している内にたどり着いたのが「MS-Word」です。

最近のWordには文書を一気に翻訳するボタンが付いて、それをポチっとするだけで英訳完了! これは素晴らしい。多分裏で最近のAIやらなんやらが動作して、いい感じに英訳してくれているに違いない。と、甘く考えてましたが間違いでした😑

■小説の文章の英訳は難しい

  • 主語。そもそも元の「悪役令嬢は破滅しました」は一人称視点で書いてあって、そうなると文章中の主語は視点の持ち主となる訳です。これは暗黙の了解と言うか、読んでいる人には分かるんですが、AIなどのプログラムにはまだ理解できない様子。従って、主語は「私(I)」であるべきところを「彼(He)」とか「それ(It)」で英訳されることが多かったです。

  • 時制の問題。日本語は割と自由に書けて、現在のことであれば「彼は〜する」と書いても「彼は〜した」と書いても理解できる。でも、「彼は〜した」と書いた場合の英訳は当然過去形、つまり「He was…」とかなってしまう訳です。日本語では意識せずにサラサラ書いていた部分でも、英語にする際は時制をめちゃめちゃ考えました。

  • 慣用句やことわざなど、日本語独特の言い回し。もちろん、メジャーなところは英語に上手く訳してくれることも多かったですが、時々字面通りに訳する場合がありました。

  • 擬音。「はめふら」にはポチと言う子犬が出てくるのですが、「キャンキャン」と子犬らしい鳴き声の英語は当然「Can,Can」ではなく、「Bow Wow」ってなんか大型犬っぽいし……ってことで調べると「Ruff Ruff」らしい。ラフラフ!? その他にも、日本語の擬音表現の豊富さには改めて驚かされる結果となりました。

  • 敬称。「〜さん」「〜様」「〜殿下」「〜くん」などなど、日本語って敬称も豊富ですが、英語では「Mr./Ms.」ぐらいしかない。殿下は「Your Highness」らしい。でも、これって名前の後ろに持ってくる敬称ではないよな「はい、殿下」とか言う場合は使えるけど。

  • 語順。日本語の場合は何か物事があって、その理由を書く時「なぜなら」でつなげて後ろに理由を書きますが、英語の場合はBecause説が前にくることが多い。そういった語順の関係か、英訳するとやたら「,」で文が区切られてしまって美しくないんですよね。まあ、そのまま行っちゃったところも多いですが。

  • 当て字。「はめふら」では主人公のカタリナ・クラエスにキース・クラエスと言う同い年の義弟がいるのですが、彼がカタリナを呼ぶ時は「義姉さん(ねえさん)」なんです。これ、そのまま英訳したら「Sister-in-law」な訳で、あっちこっちにこんな表現が😅。英語では姉であれ妹であれSisterなので、全部「Sister」に統一しましたけど、果たして正しかったのかどうか。

他にも挙げだすときりがないですが、結局Wordの訳してくれた英文を最初から全部読んで、気になるところはGoogle翻訳や、他の情報サイトで調べまくってなんとかそれらしい文に仕上げました。

特にお世話になったのはこの2サイト。Goooleで「〜 英語」とか検索する良くヒットするサイトで、ネイティブの方が質問に答えてくれていることが多いので参考になりました。って、言うかこれらのサイトがなかったら完成してないな💦

■完成!

結局、思い立ってから2ヶ月ぐらいかかって全部英訳しつくしました。英訳できたパートからAO3にアップして、ぼちぼち読んで貰えた感じ。もっと沢山読まれるのでは?とも思ってたのですが、そこは予想が外れてました。これは日本の二次創作サイトも々ですが、長編二次創作小説はなかなか読まれにくいんですよね。また、今回の作品の感性的な部分が英語圏の方々に受け入れられるものなかどうかも不明。小説内に出てくるカップリングが日本国内でも少数派だったので、英語圏でも同じなのかも。

日本国内のこういうサイトでは、読者の「スキ」を表すのが「💗」だったり「Like」だったりするんですが、AO3では「Kudos」。キューダス!? 意味は「称賛、賛辞」。こういう所も日本とは違うところですかねー。

完成したものはAO3と、1つにまとめたものをpixivにも投稿しております。まあわざわざ英語で読む必要はないので、興味がお有りでしたら上記「悪役令嬢は破滅しました」を読んでみてくださいね。

■英訳してみた感想

作品に思い入れがあるとは言え、正直文庫本化も英訳版も自己満足でしかありません。でも、それで広がる世界もある訳ですし、特に英語圏の方々に読んで頂ける(可能性がある)のは夢が広がりますよね。日本語圏よりも圧倒的に人口が多いですから。

文庫本化する際に元の文章を結構手直ししていて、話の流れだったり読みやすさだったりを重視して書き直したんですが、英語版でそれを実現できたかと言うと正直微妙でした。英語の文章の美しさとか流れの良さを表現するだけの技術力がないのと、英語圏の方々がどういう具合に作品を捉えているのかまで推測できるほど、コミュニケーションを取ったことがないもので。この辺りはちょっと悔やまれるところですね。

とは言え(自分で書いた作品ではあるのですが)大好きな作品に対して、一つ付加価値をつけられたことはとても嬉しく、満足できる結果となりました。まあ万人にオススメできる作業でもないんですが、一次創作であれ二次創作であれ「自作を英訳して海外のサイトに投稿する」のも楽しいですよ! 英語の勉強にもなりますし、良ければ皆様もトライしてみてください😀

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