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世界が終るまでは

小学生の頃大ヒットしていた漫画『スラムダンク』。テレビで放映されていたアニメの主題歌、WANDSが歌う『世界が終るまでは』のシングルCDが、初めて買ったCDという人、同世代(30代半ば)には多いんじゃないだろうか。

今の子たちは目にしたことがないであろう、たて長四角の紙ジャケットに直径8センチの小さいドーナツ盤のシングルタイプ。確か1000円くらいだったかな。初めて自分のおこづかいで街唯一の音楽店(CDや楽器、楽譜何でも売っていた)から買ってきた時のドキドキ感。スラムダンクのイラストが描かれたジャケットを眺めつつ、ぺりぺりとビニールを剥がす瞬間は、随分とにやにやしていたと思う。

今みたいにYouTubeでそれぞれが好きな番組を観る時代ではなく、地上波でオンタイムに観ないと観られない時代。人気のテレビ番組を観ていないと休み時間の話題に付いていけずにしんどい時代。うちはドラマとかバカ殿とか自由に見せてもらえなかったから、結構キツかった。大ブームのスラムダンクは、禁止されてはいなかったと思うけど、見逃しちゃうことも多くてちゃんとは観れてなくて。でも、WANDSのCDを手に入れたら、「あの歌いいよね~」と言えて、スラムダンクの話に付いていける私になれるような気がした。

大人になってしまえばそんなに周りを気にしなくてもいいけど、小学生は、メンバー固定の小さな世界で生きていかないといけないから大変。田舎の小さな学校なら、クラス替えしたってたかが知れてるし。

それに、私は放課後にミニバスケットボールのクラブに入っていた。スタメンのAチーム、交代要員のBチーム、控えのCチームにすら溢れる3人のひとりだった。かっこいいシュートとかには憧れがあったけど、おデブで運動が得意でなかった私は全然そのポジションから脱出できなくて。そんな私だけど、スラムダンクのCD買ったって言えば、ちゃんとしたバスケ好きっぽいなあと。

という訳で、曲自体がとってもかっこよかったから買ったのもあるけど、このCDは、私にとっては、"ちゃんと"スラムダンクにハマってる"ちゃんとした"バスケ好きへのチケットだったから、欲しかったのだ。

ただ、当然だけど、たいしてその魔法は長続きせず、しばらくしたら、元のイケてない私に戻ってしまったんだけどね。

大人もある程度そうだけど、子どもの頃って余計に、自分自身が飛び抜けて何かの才能があるとかじゃない場合、持ち物が自分のアイデンティティだったり自慢の対象だったりしたなあとこの記事を書きながら思い返したのでした。

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