20歳の夏休み全部使って日本一周してみた(22:佐賀〜長崎〜佐世保〜熊本)
第22日目
佐賀駅から徒歩30分ほどのところの快活クラブに泊まっていたのですが、Googleマップを見ると、どうもこのところ細い水路が毛細血管のように広がっているのが、わかります。調べてみたところ、やはり一帯の佐賀平野が埋め立てによって造成され、面積を拡大させてきたという過去があるようです。昨日乗ってきた、また今日も乗ることになる長崎本線は、江戸時代の海岸線であったところらしいです。随分と農地を拡大させてきたことがわかります。
今日は1日、長崎観光です。佐賀から長崎本線で長崎へ向かいます。元々の予定では、肥前山口から武雄温泉の方へ佐世保線を乗り継いで行く予定でしたが、前日の豪雨災害の影響で、開通していないので、肥前山口からも長崎本線で南下します。
肥前山口駅の1番線のホームには「旅情」と書かれた石碑が建っています。JRの乗車券のルールに則って導き出された可能な限りの最長なルートで旅をする「最長片道切符の旅」なるものが世の中に存在していますが、この肥前山口駅は北海道の稚内駅と結んでスタートとゴールを成している駅でもあるのです。そのことから、写真のような石碑が置かれ、僕の中では来たら撮りたい撮影スポットになっています。
肥前山口から先、諫早方面に向けて、有明海に沿う形でレールが続いていますが、相変わらず寝てしまいました。九州の駅名で「原」とつくものは、ことごとく「ばる」と読みます。「長者原(ちょうじゃばる)」「笹原(ささばる)」「田原坂(たばるざか)」。バルバルバルバル、何か滅びの呪文を唱えているかのようになりますが、調べてみたところいろんな人が様々な考察をしています。どうやら単なる方言の問題ではなさそうです。韓国からの読み方に由来している説や弥生時代からの「クニ」という共同体が防衛ラインとしてこの地名をつけていた説や稲作地帯に隣接する居住地域を指す説などいろいろあって興味深いです。
乗車している列車は長崎行きですが、長崎の1駅手前の浦上駅で下車します。坂の街としての異名を持つ長崎の立体感を、実際に街を歩いて感じてみようということで、長崎駅よりも、より山側のこの駅で降ります。ここからバスで20分ほど行った団地で降りるのですが、くねくねした登り坂をいとも簡単に運転できてしまうバス運転手の運転捌きには驚きました。
三原団地というバス停で降りて、歩いてすぐのところにある「カットハウス ミネ」があるところから写真を撮ったものです。長崎という都市がこんなにも山がちな斜面に広がっているということが一眼でわかる写真が撮れます。この坂の多い特徴が、投下された原爆の爆風を軽減したという説もあるほど、この街の凹凸は激しいのです。しかし、この巨大立体迷路型都市とも言うべく坂の多い街だからこそ、至る所から滲み出てくる旅情を感じざるを得ません。
僕は日本の都市の中で、長崎は割と好きな都市として上位に入ってきます。理由は坂が多いからです。同様の理由で神戸や尾道も好きです。バスで登った道を歩いて降りて、浦上駅の方へ戻るのですが、斜面に蔓延る住宅の数々に見惚れてしまい、まともに前へ進むことができません。これだけ坂が多いのに、平坦な道を選んで路面電車を走らせようと企てた人がいることや、路面電車が走っているのに結局、勾配のある道には路線バス網が広がっていることなど、ツッコミどころが多いような気がしますが、それだけ賑わっているということです。
坂を下ると、平和祈念公園が近づいてきます。平和祈念公園の隣にはカステラで有名な文明堂があります。そこで118円のカステラを1つ買って、むしゃむしゃしながら浦上駅まで戻ってきました。長崎駅まで1駅、列車が出ているだろうと思ってきましたが、全然走っていなくて結局、路面電車に乗ることになりました。次に向かうのは、ニューヨーク堂というカステラ屋さんです。
さっきからカステラのためにしか移動していませんが、長崎に来てるのだからしょうがないです。開店が12時からと遅れていたので、その前にオランダ坂も一眼見ようと路面電車を乗り進めて行きました。これで日本三大がっかり観光地も2つめクリアです。
ニューヨーク堂のカステラはカステラ同士でアイスを挟んだ「カステラアイス」という商品を販売しています。美味しいもので美味しいものを挟んだのだから美味しいに決まっています。また、店内には何か購入されたお客様向けに、カステラの切れ端を無料で配布しており、それも2袋もらうことにしました。
カステラの切れ端は袋を振り回して遠心力で切れ端を団子状にして食べることができます。カステラの切れ端言えどもカステラとしては変わらないので美味しいです。たまにザラメががりっとくるのが玉に瑕でしたが、切れ端感があって許せます。カステラアイスは美味しいに決まっていました。長崎に来たら食べたいスイーツがまた一つ増えてしまいました。
この後は列車の発車時間まで時間がありますので、ちゃんぽんを食べたり、新しく建設が進む長崎駅舎を眺めたりして時間を潰しました。本当は駅舎の近くにある県庁の食堂で500円でちゃんぽんを食べようとしたのですが、日曜日なので閉まっていました。というか今日、日曜日なんですね。
次の目的地は佐世保です。訪問は2回目ですが、佐世保バーガーを佐世保で食べたことがないので、食べに行きます。行く理由はそれだけではありません。僕がJR全線の中で1番好きな路線といっても過言ではない大村線に乗りに行くのです。基本的に海の真横を走行する五能線や花咲線のような路線が好きなのですが、大村線は海に加えて、反対側に棚田などの田園風景が広がっている場合が多く、如何にも自然の一部の鉄道という感じが車窓を見ていて感じられるので好きです。
軍港の街、佐世保で佐世保バーガーを食べ終わる頃には天気も回復し、帰りの大村線では太陽光に照り付けられて輝く有明海の様子を見ることができました。また、大村線に乗っていると来年開通する長崎新幹線の高架もちらちら見ることができ、新時代の幕開けを感じることができます。
諫早という駅で島原鉄道に乗り換えて、多比良というところから出ている有明フェリーで熊本に渡りたいと思います。元々こうする予定でしたが、金がかかるので普通に在来線で行こうかと思いましたが、調べるとこの時間から諫早を発って熊本に行く手段は特急に乗らないと不可能だということがわかったので諦めがつきました。
島原半島をぐるっと回るように走る島原鉄道はおそらく人生で乗るのが最初で最後になるんじゃないかなと思います。車窓にはおそらく雲仙岳と思われる山の稜線が夕暮れの空にくっきりと姿を表しています。駅から港までは徒歩5分ほど。ターミナルで450円で熊本の長洲という港まで乗れる乗船券を買って待ちます。
やっぱり船旅は最高ですね。この進んでるのか進んでいないのかいまいちわからないけど確実に進んでいるというゆっくりとした速度で目的地へ向かう感じ。鉄道旅にはない時間の流れ方を体感できます。この有明フェリーですが、フェリーの最上階のデッキに入ることができ、航行中ずっとそこにいても何も言われません。太陽が沈み、月の光が雲の隙間から溢れている有明海の船旅を満喫することができました。
長洲駅が鹿児島本線にありますから、港に着いたら暗闇の中、駅まで歩いて本日の最後の移動となります。この長洲というところは金魚の養殖が盛んで駅構内ホーム上に不気味な顔した金魚の巨大な像が置かれていました。
ということで本日は熊本までで終了です。長崎グルメと大村線、有明フェリーなど今日も充実した1日となりました。九州に入ってから、改めて日本一周の旅の長さを感じます。振り返ってみると一瞬で過ぎ去ったかのような3週間も1日1日を思い出すと長かったかのように思える不思議な感覚です。夜の繁華街を通過して快活クラブに到着しました。九州観光はまだまだ続きます。