いま、日本人がほんとうに学ぶべきこと①
「日本人は世界で最も勉強をしていない」
こんな衝撃的なレポートが出たのは2022年のことだ。
そう言われて
と思った方がいるかもしれない。
日本は腐っても先進国だ。かつてGDP(国内総生産)は米国に次ぐ世界第2位にいたこともある経済大国だ。今は中国やドイツに抜かれて世界第4位まで下がってしまったが、世界全体で見れば依然として上位だ。ノーベル賞の受賞数だってアジア圏の国の中では断トツで多い。
そんな日本が「勉強しない国」呼ばわりされるのだとしたら、発展途上国とされる国はどうなるのか?
なんて思う方も、もしかしたらいるかもしれない。
薄々お気づきかと思うが、わざわざこんな前フリをしているということは、要するにそういうことなのだ。
次のグラフを見てほしい。赤い線が日本だ。
日本人、マジで勉強してねぇ。
2位のオーストラリアに2倍くらい差をつけてぶっちぎり断トツ1位。
一応補足しておくと、この調査は全世界ではなく18カ国を対象にしたものだ。したがって世界中を隅々まで探せば「日本より勉強してない国」は見つかるかもしれない。ただ「オレより勉強してないヤツは世の中にきっといるはずだ!」といって下には下がいることで安心するのはあまりに虚しいし、調査対象の18カ国は日常的に目にする機会も多い、日本との関わりが深い国々だ。そんな中で日本がブッチギリ1位という事実は変わらない。
ちなみに「世界平均は18.0%」らしいので、世界平均と比較するとなおさら日本人が圧倒的に勉強していないというのが際立つ。
と思った親御さんはどうか安心(?)してほしい。
この調査は社会人が対象であり、学生の勉強時間はまた別の話だ。
ではブッチギリ断トツ1位を獲得した我らが日本の社会人は、実際のところ一日どのぐらいの時間を勉強に費やしているのだろうか。
これもビックリする数字が出ている。
1日あたり13分。
さすがに短すぎる。本1冊読むのにも1年以上掛かりそうな短さだ。
また、この調査が2022年に行われたものである点にも注目してほしい。コロナでリモートワーク普及し、通勤で時間を奪われていた頃と比べて格段にプライベートの時間を生みやすくなって上でこの結果である。
と思う方もいるかもしれないが、もう1回グラフをよく見てほしい。とくにタイトルのところ。
おわかりいただけただろうか。
タイトルに「社外学習・自己啓発」とある。
これは、仕事に直結しないことを学んでいる人の割合、つまり「自己啓発」に時間を使っている人がどのぐらいいるかを指すのだ。
自己啓発の勉強時間を「1日13分」しか取れていないというデータは、私自身の体感にも割と近い。
卑近な例で恐縮だがリアリティは保証する。
私はいまコテコテの日本企業(製造業)で中間管理職をしている。メンバーは7名(20代~50代)、組織ミッションは商品開発(クラウドサービス)だ。
メンバーとは1on1等の場で定期的に会話をしているが「業務外の勉強・自己啓発」に使っている時間は確かに少なそうではある。ちなみに彼ら/彼女らは割り当てた仕事やタスクを遂行する上で必要な知識をネットや書籍で収集することは業務時間中に当たり前のようにやってくれている。それはそれでとてもありがたく頼もしいのだが、その学習時間は自己啓発とは言えないのでカウントしていない。
具体的にはこんな感じで会話をしている👇
誤解なきよう言っておくが、私は漫画を読むのも自己啓発の一つだと思っている。漫画でどれほど人生が豊かになり視野が広がったことか。なので、読んでいる漫画を教えてくれるのは素直に嬉しい。ただ、ビジネス書でも小説でも雑誌でも絵本でも何でもいいのだが、漫画以外で「いまこういう系の本を読んでて~」とか「こういう領域に興味があって~」という話がなかなか聞き出せない。
もしかしたら、ホントはあるのだけど恥ずかしくて言えない、知られたくない、言うのが面倒くさいだけという可能性も十分にある。でも、もしも言葉通りなのだとしたら「1日13分という断トツに短い学習時間」は割とイイ線をいっているように思うのだ。
ちなみに私自身の学習時間はどのぐらいかと言うと、1日平均だとせいぜい「1時間」くらいだろう。毎日の通勤時間中の読書と、週末に少しまとまった勉強時間を取るくらいだ。本は月に4〜5冊読む程度だ。なので私も自慢できるほど多く勉強しているわけではない。
そういえば今「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という本がベストセラーだが、メンバーと話をしていると「本が読めない」というよりも「読まない(読む必要性を感じていない)」あるいは「何を読んでいいのか分からない」のかもしれない、という気もしている。
繰り返しになるが、業務を遂行する上で彼ら/彼女らが持っている知識は必要十分で申し分ない。組織のミッションがクラウドサービス開発なので常に知識のアップデートが必要なのだが、それも問題なくできている(ように見える)。
でも私個人としては、業務遂行に必要のないコトも学んで欲しい、興味を持ってほしいと思っているので、これまでもメンバーにコテンラジオを勧めてみたり、チームで対話型アート鑑賞のワークショップをやってみたり、レゴブロックを使ったワークショップなどをやってきた。
※「コテンラジオ」についてはコチラ👇で紹介
私が部下に学んで欲しいと思っているものの正体を一言で言えば「教養」なのだろう。もっと堅苦しい言い方をするなら「見識」とでも言うのだろうか。部下の中には私よりよほど優れた学歴を持っている者もいて、そんな優秀な彼ら/彼女らに私が「教養を学べ」だなんておこがましいにも程があるというものなのだが。そしてそれは「部下の成長を親身に願って・・・」とかそんなキレイな話ではなく、後述するように割と個人的で打算的な理由による。
そもそも「教養」とはいったい何なのか。
たとえばCOTENラジオの深井さんはこのように言っている👇
つまり「教養を身に着ける」とは「複数の世界の見かたを身に着ける」ことに他ならない。
「世界の見かた」は多様だ。80億の人がいれば80億通りの「世界の見かた」が存在する。だからこそ、この世界はとても複雑で、常に対立と変化を繰り返してきた。そんな世界にあって「偏った見かた」に固執したり、世界を単純化して捉えてしまうのはとても危険なことだ。本人のためにならないし、組織のためにもならないし、社会のためにもならない。
常にこの自覚を持ちながら「この社会がより良くなるにはどうするのが一番良いんだろう?🤔」という視点で仕事しないと、せっかく頑張って出した成果が社会に与えるプラス効果が目減りしてしまうのだ。社会への還元効率が低下するということだ。
私が部下に「教養も学んで欲しいな」と思う打算的な理由はここにある。
私は割と効率厨なので「効率の悪い状態」をそのままにしておけないのだ。「もったいない」状態がそこに放置されているのはどうにも気持ちが落ち着かない。
大らかな性格の人から見れば、さぞせっかちに映ることだろう。
では「教養」を身に着けるためには何を勉強すればよいのか?
いったい何を学べば「偏った見かた」から解放され「仕事の成果の社会への還元効率」が改善されるというのか?
一回で書ききろうと思ったてたけど思いのほか長くなったので、続きは次回!