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洗濯機の独白 〜あるコインランドリーの一日〜

午前6時。シャッターが開く音と共に、私の一日が始まる。名前は「ナガレ」。この古びたコインランドリーで30年以上働く洗濯機だ。最新機種ではないが、この店の生命線と自負している。

朝一番の客は決まって、夜勤明けの作業着姿の男性。彼の分厚いつなぎは、油や泥で真っ黒だ。「おはようございます。今日も頑張りましょう」と私。男性は疲れた笑顔で、コインを投入する。

洗濯のプロセス

・水温調整
・洗剤の最適な量
・回転数の微調整

汚れを落とすたび、私は密かな喜びを感じる。仕事への誇りだ。

午後、最も嫌な時間帯が近づく。クレームおじさんの登場だ。

「おい、乾燥できねえじゃねえか!」

50代半ばの白髪交じりの男性。毎週同じセリフを繰り返す。私には乾燥機能がないことを何度説明しても理解してもらえない。

(私は洗濯機。乾燥なんてできないのに、なぜ毎回同じ議論を繰り返さなければならないんだ…)

店主が対応に来て、ようやく男性は去っていく。私の機嫌を直してくれたのは、次に来た小学生の女の子だった。

女の子は私の前で踊り始める。汚れた制服を洗いながら、彼女は歌を歌っている。私は優しく洗濯を続ける。彼女の無邪気な笑顔に、今日の苦労が吹き飛ぶ。

最後の客が帰り、店内が静まり返る。今日洗った洗濯物を思い返す。汗、油、泥、そして時には涙さえも洗い流してきた。

「また明日。私にできることは、ただ一つ。きれいに洗うこと」

静かなコインランドリーで、私ナガレは今日も明日も、黙々と洗濯を続ける。乾燥機能はないけれど、一生懸命。それが私の存在意義なのだ。


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