山下達郎 サックス史
今宵の担当:noriです。
今日は違うネタも考えたのですが、昨日シホさんが書いた「ゴニョゴニョ」な音源を聴いていたら思いついたこちらを書きます。
ワタシは山下達郎さんのトリビュートバンド的なことはやったことはないのですが、事前にネットで打ち合わせて達郎曲をセッションするというコミュニティにおりました。言うとシホさんともそのセッションをきっかけに知り合いました。
ワタシのパートはサキソフォンです。
達郎さんはツアーバンドには常にサキソフォンがいて、ほぼほぼの曲にサキソフォンソロがあります、もしかしたらギターソロより多いのかも。
レギュラーバンドではなく一回のみセッションするだけの企画だったので、「コード進行把握してアドリブでよかろう」と言う気軽な気持ちで参加しました。
そこそこジャズを学習し、アドリブのイロハ(今にして思えば初歩の初歩)を習得したつもり(ここ重要)のワタシは、アドリブでソロを取ろうとセッションに参加したのですが・・・
まぁ、達郎さんの場合、面白いくらいにハマらないんですね・・・で、辿り着いた結論は「完コピするしかない」だったのです。
その後の達郎さん関係のセッションでは演奏予定曲は殆どコピーしましたね。
達郎さんが関わったサキソフォン奏者は殆どがジャズ関係者です。
そのジャズを生業としていたサキソフォン奏者がどのように達郎ミュージックにアダプトしていったのか、2度と同じソロを吹かない土岐英史さんにその辺りを語って欲しかったです。
そんな達郎ミュージックに関わったサキソフォン奏者について(全員ではないですが)書きたいと思います。
土岐英史
惜しくも今年鬼籍に入りました、山下達郎のサキソフォンを語る際には最初に出てくるべき存在。
山岸潤史、続木徹と結成したフュージョンバンド、チキンシャックのフロントマンでもありますが、基本的にはジャズミュージッシャン。渡辺香津美を擁するクァルテットで録音した初リーダー、「TOKI」(1976/Three Blind Mice)は名盤です。
「It’s a Pompon’ Time」(1978 / RCA )の全曲、「Joy」(1989 / Moon)の大半、現在まで公式リリースされた2枚のライブに参加しています。
メインのアルトのみならず、流麗なソプラノにも定評があります。何度もコピーした、「プラスティック・ラヴ」のソプラノソロをシアターライヴで映像で観た時は感動したものです。歌うようなメロディアスなフレーズが中心ながら、良いバランスでジャジーなビバップフレーズを絡めてくる唯一無比の存在でした。ちょっと遅いですがご冥福をお祈りします。
宮里陽太
2011年より土岐英史さんの後任で達郎さんのツアーメンバーとして現在参加。前任の土岐さんの推薦で、実際に達郎さんがライヴで演奏を確認して採用したとのこととか。
実は宮里さんに替わった最初のツアーの初日を観ているのです。なにせ達郎ファンは圧が強いので(苦笑)「土岐さんじゃないのかよ、新入りがどんなもんだか見せてもらおうか」オーラ満載の会場だったような記憶があります。(ワタシの先入観かも)
確かに緊張感伝わる感じで、その時は前任の土岐さんの流麗感はなかったのですが、さすがは土岐さん推薦のプロです、その後は頭角を表しました。良いサキソフォン奏者だと思います。
ワタシが印象に残っているのは、サンソンで放送された名古屋ボトムラインでの「ピンク・シャドウ」。「It’s a Poppin’ Time」では坂本龍一氏のアープ・オデッセイによるソロだった間奏部分に加え、長尺のアウトロのソロ。飛び跳ねるような軽快なフレーズをワタシも(途中まででしたが)コピーしました。達郎さんプロデュースで本業のジャズのアルバムも出しているようです(聞いてないけど)
淵野繁雄
80年代の一時期、土岐さんがいない時(?)に参加していました。ゴダイゴ、中山美穂、上田正樹のバックもやっていたようですが基本的にはジャズミュージシャンです。近年では吉田美奈子さんとも演奏していたようです。
ワタシがこの人を最初に意識したのは「僕の中の少年」(1988/Moon)収録の「マーマレード・グッバイ」のテナーによるソロ。
ジャズ的なテンションやアウトフレーズを一切使わず、スケールの中のダイアトニック(要するにドレミファソラシド)だけでメロディアスかつ感動的なフレーズを紡いでしました。なので、この方はジャズの人ではないと思っていたのですが、逆にバリバリジャズの方でした。むしろジャズ以外の音楽は上田正樹バンドに参加したプロになってから習得したとのことで、ジャズとポップスの棲み分けが明確にされているようです。土岐さんのようにバップフレーズをぶっ込んできたりしません。
また「マーマレード・グッバイ」ではテナー・サキソフォンの通常音域上部1/4以上とフラジオを多用、1オクターブ上のソプラノで吹いてちょうど良いくらいの音域で演奏するのです。
この曲はアナログで一度録音してからデジタルで録り直しているのですが、このソロが余りにも素晴らしいので、アナログテープの録音を移植したとのことです。
山本拓夫
どちらかと言うと桑田佳祐氏との共演が多いような印象。一時期はスターダスト⭐︎レヴューの準メンバー的な存在でもありました。
数えきれないほどの有名ミュージシャンの作品に参加している超売れっ子スタジオミュージシャン、ちなみに拙宅の近隣の中学校出身です(笑)
達郎さんで言うと「Sonorite」(2005/ Moon)の一曲目「Midas Touch」でテナーサックスソロで参加、なんでも達郎さんが一度共演して見たかったとのこと。
ドラムマシンのみの前半、後半でもシンセベースと薄いパッドしか入らないトラックで三回転調する見事なソロを披露しています。
Lenny Picket
タワー・オブ・パワーのメンバーにして、アメリカの人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」の音楽監督も務めた。達郎さんでは「Cozy」(1998/Moon)収録の「月の光」と言うバラッドでテナーで参加。叙情的なソロもさることながら、アウトロのどこまでも高音に登り続ける超絶フラジオは一聴の価値ありです。
Louis Marini
ファーストアルバムの「サーカス・タウン」(1976/RCA)のタイトル曲でサキソフォンソロを担当。後期ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ及びブルース・ブラザース・バンドのメンバー、ソロ・キャリアの最初の最初はニューヨーク録音だったこともあり、本場のアメリカのミュージシャンだったのですね。ちなみに2曲目の「Windy Lady」は後にマンハッタン・ジャズ・クィンテットに参加するGeorge Youngがソロを担当しています。シホさんのサックスの師匠は、Louis Mariniの弟子だったそうで、シホさんは孫弟子らしいです。
番外編:岡崎広志
達郎さんなら、同じ岡崎でも岡崎資夫というサキソフォン奏者が初期の作品に参加しているのですが、この方は吉田美奈子さんのアルバム「Twilight Zone」参加のサキソフォン奏者、山下達郎プロデュース作品なので番外編ということで(笑)
かつて岡崎広志とスターゲイザーというバンドのフロントマンを務めた方で、ヴォーカリストでもあります。有名なところでは三保敬太郎(ジャズピアニストですが、寺尾聰をベースに招いたホワイト・キックスなるバンドも主宰。寺尾聰をして「自分の音楽の師匠」)作曲の「11PM」のテーマを伊集加代子さんと一緒にスキャットした方です。(余談ですが、その伊集加代子さんは前述の達郎さんの「It’s a Poppin’ Time」にコーラスで参加しているんですね)アルバムラストのタイトル曲「Twilight Zone」では曲の後半、尺にして約半分を占める長尺のアルトソロを吹いているのですが、これが素晴らしい。ヴォーカリストのセンスも垣間見られる歌うように美しくメロディアスなフレーズも圧巻ですが、後半高速バップフレーズもバンバン出してくるのです、昔の一流はレヴェルが高い!大好きなサックス・ソロです。
今日の一曲:土岐英史/Lullaby for the girl (1975 / Three Blind Mice)
シホさんも言っているように、達郎さん美奈子さんはYouTubeでなかなか探しづらいので、気になった方はCDあるいはLPをチェックしてください。
今日の一曲は前述の土岐英史さんのファーストリーダーから、ソプラノによるオープニングナンバーです。
今宵の担当:nori
追記:今日のもう一曲 coda-nous-qui / Midas Touch (2021)
coda-nous-quiが山下達郎さんの「Midas Touch」をカバーしているのですが、視聴回数が本日ちょうど1,000回になったので、誠に僭越ながらご紹介させていただきます。(撮影場所:千歳烏山ラグタイム)
前述の山本拓夫さんのソロを不肖ワタクシがコピーさせていただきました。よろしければご拝聴いただけると幸いに存じます。
この次はモアベターよ!
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