世界陸上オレゴン大会観戦記(1)
世界陸上オレゴン大会が始まった。
アメリカとは昼夜逆転なので、TBSの放送を録画して、昼飯(1食目)を食べながら追っかけ再生して見ている。
結果が分かって見るのはつまらないので、朝のメールチェックではわざとニュース系のメールを受信しないようにして、天気予報のサイトにはアクセスしてもニュースサイトは見ないようにして……とかやっていたんだけど、日本では陸上競技なんてまったくニュースにしないのだと分かった。オリンピックのときはいちいち速報とか流していたのにね。
サニブラウンが日本人選手初の世界大会(世陸&五輪)100m決勝進出というのも速報にはならないし、スポーツジャンルのニュースでもトップ10に入ってこない。
これが桐生や山縣だったら、また違うのかな……。
織田裕二は好きじゃないけど、サニブラウンの決勝進出で涙を流していたのを見て、ちょっと好感度上がったかな。
そうなんだよね。「人間力」の凄さに感動するのがスポーツの感動なのよ。
そんな世陸男子100mを見ていた助手さん曰く
「サニブラウンは、マフィアの用心棒軍団に囲まれて仲間になれと言われている純真な青年みたいね」
初日には女子1万m決勝があったが、小林なるみん成美くんはアメリカに出発する空港で新コロの抗原検査に引っかかったようで、飛行機に乗れないまま帰宅という悲劇。真面目でひたむきに練習する子にほどこうした悲劇が襲いかかるようで、たまらない。
ここから「新コロで出場不能」の連鎖が起きて、目もあてられない。
マラソンの鈴木健吾・一山麻緒夫妻と新谷仁美。男子200メートルの小池祐貴は出場できず。110mハードルの泉谷駿介は準決勝敗退の後に陽性となった。コーチや役員も続々感染して、18日時点で合計17人という、まさにクラスター状態。
全体の陽性者数が49人(21日時点)ということなので、なんとそのうち35%を日本選手団が占めていることになる。
日本選手団は全員ワクチン2回以上接種済みで、出発時よりN95マスクを着用していたというのだが、だからこうなっちゃったのでは?と言いたくなる。
コロ枠の問題(チンパン問題=「○○チンパンデミック」問題)といい、0.1秒以下で反応するとフライングと判定されて一発失格という理不尽(非科学的)なルールといい、本来の努力対象以外のやっかいなものと戦わなければならなかった選手たちが気の毒でならない。
女子1万mでは、りのりんがハッサンの隣りに立っている姿を見ただけでも感動してしまった。
6年前のいろは坂女子駅伝で、1区でいきなり独走していた女子大生が、今、世界陸上のレーススタートラインに立っているなんてね。
りのりん、今回は断トツのビリだったけど、爺は走っている姿を見られただけで嬉しいよ。
モハメド・ファラーは「ファラー」ではなかったという衝撃
ハッサンがエチオピア内戦で祖国を追われた難民だったことは去年の日記に書いた。
2008年、15歳で難民としてオランダへ渡っている。当然、そのときは陸上選手としては無名で、看護師になるための勉強をしながら走っていたところを、アイントホーフェンアトレティエックというオランダの陸上競技支援団体と契約することができ、その後、メキメキと力をつけた。
難民選手のことを知ったことは東京五輪の極めて少ない「いい点」だったわけだけれど、あのモハメド・ファラーが、難民どころか、児童売買の被害者で、ファラーという名前も嘘だった(誰かの名前を使った偽造パスポートで不法入国させられていた)というのは驚いた。
これが「世界」の現実なんだなぁ。
イスラエルの女子マラソン代表・サルペーターも「ケニアのイスラエル大使の子守りとしてイスラエルに行った」という。なんかビミョーな説明のような気もするが、ファラーのようなあからさまな人身売買ではないのだろう。
「世界」を知るのはなかなか難しい、というか、ほとんど不可能か。
ちなみに、増田明美が、去年の東京五輪のとき「他の選手たちを抜きさるぺーたー」という駄洒落を準備していたのに、途中棄権してしまい、使えずじまいだったとか。
他には、男子円盤投の優勝者クリスチャン・チェー(スロベニア)。身長2m6cmの巨人が17年ぶり大会新の71m13。
投てきの男子選手って、東欧系で全身入れ墨バチバチのギャングみたいなのが多い中、スーパーマンの俳優みたいに真面目そうなメガネ青年。
家が農家で、「将来の夢は?」と問われて「農業をすること」と答えたそう。ええ子や~。顔に表れてるね。
風貌のことでいえば、男子400mハードルのドスサントス。準決勝あたりから、今回の金メダルはドスサントスだな、と思っていたら、バッチリ当たった。
東京五輪のとき、決勝で一人一人紹介されながら入場する際、老人のような歩き方をして自虐ギャグ?をしていた若者が、今回はスタート前から満面の笑みで吠えていた。よく見ると、すごい男前の顔なんだよね。おめでと~!
今回の大会は予想がことごとく当たる。陸上ウォッチャーとして、あたしもだいぶ「見る目」ができてきたのかな。
こんなご時世ですが、残りの人生、やれる限り何か意味のあることを残したいと思って執筆・創作活動を続けています。応援していただければこの上ない喜びです。