タラビッチの「クレムナ予言」(3) 現代石油文明批判と「東方の賢者たち」
タラビッチの「クレムナ予言」の解読に取りかかって5日目。
前回はテレビのことを述べていると思われる箇所の読み解きで終わったが、その後から続けてみる。
地下資源採掘で手に入れる宝は「本当の力」ではない
タラビッチが生きた19世紀後半は、石油の存在と可能性については知られ始めていたが、まだ本格的な石油文明は始まっていなかった。
世界で最初に設立された石油会社はアメリカ、ニューヨークの弁護士ビッセルが1854年に設立したペンシルベニア・ロックオイル社で、同社が本格的に石油採掘に乗り出したのはその5年後だそうだ。
その頃、タラビッチは20代の青年だが、セルビアの小さな田舎町で農夫をしていた彼がそんなことを知るはずもない。
1870年代になるとロシアでも石油産業が発展し、1870年には20万バレルだった原油生産量が20年後の1890年には2900万バレルにまで増大した。
このロシアの石油産業発展の主役が、スウェーデンのノーベル兄弟とフランスのロスチャイルド家だった。
タラビッチとノーベル兄弟は同時代を生きた
ロシアで石油開発をしたノーベル兄弟というのは、ノーベル賞の設立で有名なアルフレッド・ノーベルを含む兄弟のことだ。
父親のイマヌエル・ノーベル(1801-72)は爆発物や兵器製造でクリミア戦争 (1853–1856) で大儲けした。その後、軍が支払いを渋り始めて兵器工場は一旦破産したが、後を引き継いだ次男ルドヴィッグ・ノーベル(1831–1888)が再び工場を発展させた。
アルフレッド・ノーベル(1833-1896)は8人兄弟の4人目で、8人のうち4人は夭逝し、成人したのは4人だけだった。
アルフレッドはその4人のうち3番目に当たる。彼は複数の家庭教師をつけてもらい、語学と化学を学び、フランス・パリやアメリカにも留学してさらに化学の知識や事業家としてのセンスを身につけた。
兄のロベルトとルドヴィッグは、1875年、ロシアの石油地帯であるバクー(現在はアゼルバイジャン共和国)で石油採掘を始め、4年後に「ノーベル兄弟産油会社」を設立。これには弟のアルフレッドも出資している。
ノーベル兄弟産油会社は掘削だけでなく、製油、販売、パイプラインと鉄道を使った輸送も行い、さらには世界初のタンカー「ゾロアスター号」を建造して諸外国に石油を売る世界最大規模の石油会社に成長した。最盛期にはロシア最大の石油会社として石油製品の40%を生産していた。
一方、フランス・ロスチャイルド家のアルフォンソ・ロスチャイルドもバクー油田の石油生産事業に参入した。1886年、バクーから黒海の港町バツームまで鉄道を敷設する事業に融資するのと引き替えにバクー油田の権益を獲得し、カスピ海・黒海会社(通称・Bnito)を設立し、イギリスに販売会社も設立した。
ノーベル兄弟産油会社はこのロスチャイルドから融資を受け、1894年、アルフレッドが武器製造業に進出。以後、ノーベル家とロスチャイルド家は協力し合って世界に石油と武器を売り込むようになる。
当時ヨーロッパではイギリスのアームストロング社とフランスのシュネーデル社が銃器製造の大手だったが、この両社ともにロスチャイルド傘下の会社だった。
セルビアの小さな村で農夫をしていたタラビッチが石油などの地下資源は「本物の力ではない」と警告的な予言をし、これから起こる戦争が神の意に反した愚行だと嘆いていたその時代に、ノーベル兄弟やロスチャイルド家が石油採掘と戦争で大儲けしていたというのは、皮肉というか、なんとも考えさせられる。
タラビッチが石油文明のことを予言した部分は前々回にも紹介したが、その後、セルビア語で書かれた原文を入手したことで、一部、違った和訳にしてみた。
英訳ソフトで得られる
……という部分がどうしてもうまく解釈できない。
この「Come on」と言っているのは誰なのか? 地下資源開発の亡者か、それともそうした人々に「地球」や地下資源が挑発的に言っている言葉なのか……。
ここでは「よく分からない」ということにしておき、とりあえず次を見てみる。
……と、くどいほど、現代文明批判と取れる言葉が続いている。
農夫タラビッチにとっては、現代石油文明や「知識」の名を借りた人間の浅知恵は、神を通じてしか知ることができない「本当の力」ではない。むしろ素朴な遊牧生活をするラップ人の生き方のほうが「本当の力」を知っている生き方なのだ。
そうした現代文明批判的なことを繰り返し述べていて、聞いているザハリヘ司祭も、聖職者としての自分の世界観を多少織り交ぜながらタラビッチの言葉を書き留めていったのではないだろうか。
「東方の賢者たち」は新コロ詐欺を告発した医師や学者たち?
これだけなら、単にセルビアの学のない農夫が、自分が生まれ育った片田舎での素朴な生活への愛着と、敬虔な信仰心から成る心情と世界観を予言的な物言いで表現しただけだ、と取られるかもしれない。しかし、これに続く言葉が注目される。
私はこの部分を読んで、現在の人工ウイルスや、そのワクチンだとしてばらまかれた遺伝子製剤のこと、今のマスク社会の光景を想起してしまった。
この嘘を見抜いて声を上げる「全国有志医師の会」の医師たちなどは、さしずめこの「東方に現れる賢者たち」だろうか。
新コロ詐欺を糾弾し、警鐘を鳴らす医師や学者たちは世界中に出現してきているわけだが、セルビアから見ると概ね「東方」ということなのかもしれない。
また、金と自己保身のために良心を捨て、魂を売ったような自称専門家や政治家らもいるが、他の多くの人たちは悪意からではなく、メディアや政府の言うことを疑うこともなく受け入れたために「そんなのは嘘だ」「馬鹿げた陰謀論だ」と言い張っている。
この状況もまさしく「人々は長い間(賢人たちの)叡智を信じず、そんなことは嘘だと宣伝する」という言葉にあてはまるように思う。
瞞された人たちは、「神が与えし空気や美を憎み、悪臭の中に逃げ込む」「誰かに強制されてそうするのではなく、自らの意思でそうする」……まさにロックダウン、ステイホームの図ではないか。
さて、今回も世界最終戦の部分まではいきつけなかった。いよいよ次回はそこに踏み込んでみる。
『新釈・クレムナの予言 タラビッチが見た「世界最終戦争」』
19世紀セルビアのクレムナ村に生きた農夫、ミロシュ・タラビッチとその甥ミタールタラビッチが残した「クレムナの予言」は、あまりにも詳細な部分まで実現したので偽書ではないかという議論が起きた。多くはセルビアの未来についての予言だが、現代、そしてこれから起きることを述べていると思われるものも含まれ、注目度が高まっている。コロナやウクライナのこと、グレート・リセットのことを予言したかのような内容もある。
謎に満ちたクレムナの予言をセルビア語の原文にあたって全容解読を試みつつ、我々はそこから何を学べばいいかという視点も提示した意欲作。
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