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21世紀の情報戦争を紐解く動画鑑賞会

★今回は頭に自動ワードチェッカーが検出してつけるウザイ警告文がくっつくことを承知で掲載する。

3月、4月は普段は知ることもないようなニュースソースに触れてお勉強する時間が増えた。
その内容を文字で記述するのは大変すぎるので、今回はいくつかの動画を紹介してみることにする。
「アメリカの論理」「NATOの論理」だけが席巻する日本のメディアを見せられている哀しさを知るために。

豊島晋作(テレビ東京報道局)

まずは、テレビ東京で2016年~2019年までロンドン兼モスクワ支局長をつとめた豊島晋作氏が解説した番組
YouTubeのテレ東公式チャンネル「テレ東BIZ」で公開されている。日本語で語っている動画としてはよくまとまっているので、今回の問題の基本のキを知る入門編として最適かもしれない。

豊島晋作 テレビ東京報道局報道記者、ディレクター、元ニュースキャスター。2006年10月~報道局政治部担当。2011年4月~『ワールドビジネスサテライト』ディレクター。2016年1月~ロンドン兼モスクワ支局長。2019年7月~番組ディレクター兼クロスメディア部デジタル副編集長。テレ東報道部Webサイト「テレ東NEWS」掲載担当。この動画のURLは https://youtu.be/9j_-bJnp3Z8 

豊島氏、この番組の最後のほうではかなり会社(テレ東)に気を使った言い方をしているが、「歴史的な事実にのっとった冷静な視点を持つ」ことの重要性を懸命に説こうとしている姿勢が立派だ。

ウラジミール・プーチン(ロシア大統領)

こうした「入門編」で基礎知識を得た上で、プーチンが国民に向かって語りかけている演説内容を読んでみることも大切だ。

動画は⇒ここなどにあるが、ロシア語を聴き取れる人は少ないだろう(もちろん私も。私は日本語しか聴き取れない)。ありがたいことにNHKが全文を訳しているページがある。
個人が翻訳しているブログもあった⇒こちら

演説の内容、彼の言い分への賛否は置いておいても、まず、一国の大統領があれだけの言葉を尽くして自分の考えを表明、説明している国だということを知るだけでも大切なことだ。日本の首相がこうした意志表明をするシーンを長らく我々は見たことがない。

冒頭の豊島氏も述べていたが、アメリカとNATOがロシアを不必要に追い詰めたことがいちばんの問題だと指摘している人たちはアメリカ国内にもたくさんいる。

ジョン・ミアシャイマー(国際政治学者・シカゴ大学)

次はアメリカの国際政治学者ジョン・ミアシャイマー氏が見解を表明している動画。

ジョン・ミアシャイマー 1970年陸軍士官学校卒業後、将校として空軍に5年間在籍。Ph.D。1982年~シカゴ大学教員。

https://youtu.be/cZaG81NUWCs

この動画のURLは https://youtu.be/cZaG81NUWCs
徹底したリアリストぶりが強烈な印象を与える。
実際、彼は攻撃的現実主義(Offensive Realism)の代表的学者だとされている。
Wikiによれば、これは、

国家を国際関係の主要な要素ととらえているが、いくつかの仮定を加えている。

1. 国際社会は無政府状態である。
2. 国家は合理的に行動する。
3. 国家は、「生存すること」を目標の一つとしている。
4. すべての国家は、攻撃的な軍事能力を少なからず備えている。
5. 国家は、他の国家の意図について確証を持つことができない。

ジョン・ミアシャイマーは、この理論の主要な支持者である。

……だそうだ。
動画の後半部分で彼は、「アメリカが2014年以降ウクライナでやってきたことは、負けても負けても倍賭け(double down)することで、今もそれは続いている」と述べている。

ところがこの動画、埋め込まれた日本語訳文がかなりおかしい。まったく正反対に取れる訳にしている箇所があるのだ。
原文文字おこしでは、

↑こうなっている。
しかし、この「~すべき」という訳に違和感を覚えて、英語の文字おこしで確認してみたところ、こうだった↓

彼は「アメリカは~すべきだ」などとは言っておらず、ただ単に「~してきた」「今も~し続けている」「これからも~するだろう」と言っているだけだ。
should とか had better といった表現はどこにもなく、ただ過去形、現在進行形、未来形で述べられている。

アメリカの政策は、負けても「倍賭け」(double down)することで、そうしてきたし、今後もしようとしている。
(※double down は「ギャンブルにおいて、負けるたびに賭け金を2倍ずつ増やし続けること」。もちろんここではいい意味で使っているわけではない)
2014年(マイダンクーデターを起こしたとき)以降も、我々(アメリカ)は政策を再評価(reevaluating)することなく、NATOを拡大させることはいい考えではないと言うこともなく、ただただそう(double down)してきた。
我々は逆方向に突っ走った。それ故に、私はこう言いたいのだ。2021年までにロシアは我々がウクライナを事実上のNATOの一員に変えてきたと理解したのだと。

↑実際に語っている言葉の字幕

我々がしてきたこと、やろうとしていること、実際に今やっていることは「double down(負けを覚悟で倍倍に賭けていくこと)だ。
これは何を意味するか? ウクライナ人に「戦え」とけしかけているのだ。
我々(アメリカ)がウクライナ人のために戦おうとしていないことは自明だ(you understand「分かっているだろ?」)。
ウクライナ人は最後の一人まで戦えばいい。これは彼らがやっている戦争で、その意味では我々は戦わない。その代わり、我々は彼らを武装させ、訓練する。実際、今もやっている。それで、最後の一人まで戦うことを望んでいる。まあ、そのときに我々はそこにはいないわけだが。
で、ウクライナ人はロシア人と決着がつくまで戦えばいい(※duke it out=決着がつくまで殴り合う)が、誰もウクライナが勝つなんて思っちゃいない。手詰まりで膠着状態(stalemate)くらいにはなるかもしれないがね。

……とまあ、こういう反語的な辛口論評をしている部分なのだが、この部分の動画日本語文字おこしは逆の意味になってしまっている。これは意図した歪曲なのか?
また、動画の最後のほうで核戦争への発展を危惧している部分で、太平洋戦争末期にアメリカが日本の都市に焼夷弾を落としたり原爆を投下して一般市民を大量殺戮したことに触れているが、一部音声が消されている。

スコット・リッター(前国連兵器査察官)

もう一つ、前国連兵器査察官のスコット・リッター氏がグレイゾーンという独立系メディアのインタビューに答えている動画。

ウィリアム・スコット・リッター・ジュニア(英: William Scott Ritter, Jr. 、1961年7月15日 - )は、元国際連合大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)主任査察官、評論家。1991年から1998年にかけて、イラクにおける大量破壊兵器捜索のための国連主任査察官(a chief United Nations weapons inspector)としてアメリカの中東に関する外交政策(主に対イラク政策)を批判し、イラク戦争反対運動に参加した。またトーク番組の解説者となった。
Wikiより

Wiki

Wikiによれば、実に波瀾万丈な人生を送ってきた人物のようで、動画の中でも自虐的に「1998年まで、私はCIAの回し者とか世界最悪の人間とか色々な言われ方をされてイラクを追放されていました。CIAの~、というところを除いては全て当たっていると思いますが(笑)」などと語っている。
自動翻訳では滅茶苦茶になるが、親切にも日本語に全訳してくれている人がいる。⇒こちらで読める
4月20日現在、7回に分割した4回目までが紹介されているのだが、これもなかなかすごい。
イラクの石油相アミラ・ラシードとのやりとりとか、ビクトリア・ヌーランドやマドレイン・オルブライト、ブッシュ親子、CIAなどの話が全部実体験として語られていて、ああ、そういうことなのか……と。
リアリティのある内容で、まったくのデタラメを言っているようには思えない。
ミアシャイマー博士といいスコット・リッター氏といい、実際に軍、CIA、国連などの裏側を見てきた人たちの証言には重みがある。
ちなみにヌーランドは「EUのくそったれが」と罵った通話が盗聴されて大きなスキャンダルになったが、それよりも、2014年のマイダンクーデターの際、政府に抗議する民衆を扇動したとされる人物であることを記憶しておくべきだろう。⇒動画

戦争に反対する団体「World BEYOND War」には、こんな記事が出ている

By World BEYOND War, January 11, 2021

Victoria Nuland, former foreign policy adviser to vice president Dick Cheney, should not be nominated for Undersecretary of State, and if nominated should be rejected by the Senate.

Nuland played a key role in facilitating a coup in Ukraine that created a civil war costing 10,000 lives and displacing over a million people. She played a key role in arming Ukraine as well. She advocates radically increased military spending, NATO expansion, hostility toward Russia, and efforts to overthrow the Russian government.


ディック・チェイニー副大統領の元外交政策顧問であるビクトリア・ヌーランドは国務次官に指名されるべきではない。指名された場合は上院によって拒否されるべきである。
ヌーランドは、10,000人の命を奪い、100万人以上を国外に避難させる内戦を引き起こしたウクライナのクーデターを促進する上で中心的な役割を果たした。 彼女はウクライナの武装においても重要な役割を果たした。 彼女は、軍事費の大幅な増加、NATO拡大、ロシアに対する敵意、そしてロシア政府を転覆させる努力を提唱している。

https://worldbeyondwar.org/ja/nuland/


ヌーランドがクーデターを扇動している映像はオリバー・ストーン制作総指揮のドキュメンタリー映画『ウクライナ・オン・ファイヤー』にも出てくる。

スコット・リッター氏へのインタビュー動画を全訳してくれている人が、3回目(3/7)の最後に感想をサラッと追記しているのだが、それがとても印象深かった。

私たちは、アメリカ政府を一つの人格のように捉えがちですが、それは<場所>であって、そこでは本当にさまざまな人が行き交うのだなと思いました。
それは希望でもあります。悪い人が少し、良い人が少し、普通の人がたくさん。少しの悪い人が権力を握ると、たくさんの普通の人が良心を殺してそれに従い、良い人は苦しくなる。けれども良い人が勝てば、たくさんの普通の人は喜んで従うのではないでしょうか。

https://threadreaderapp.com/thread/1514531521302245378.html

私としては、それ以前に、「たくさんの普通の人々」が一方的なプロパガンダ報道にしか接することができない社会になっていることが問題だと思う。
良心を殺して権力者に従っているのは「たくさんの普通の人々」ではなく、少数の(本来)頭のいい人々だ。その少数の人たちがやっている詐欺行為やプロパガンダによって、たくさんの普通の人々が簡単に扇動されて動いている。
スコット・リッターは、ヌーランドやオルブライトのような危険な思想を持つ人物を制御できず、ロシアの国内事情にさえ疎いアメリカ中枢部の劣化を嘆いているが、それでもアメリカはまだ、自国内から様々な異論が発信されているだけ救いがある。
そういうところは、さすがアメリカだな、とも思う。

アンヌ=ロール・ボネル フランスのドキュメンタリー作家

どれだけの日本人が、こうした悲惨な状況がウクライナ国内で起きていたことを知っていただろうか。

ボネル氏はマイダンクーデター後のドンバスに入って、ずっと記録し続けている

彼女が製作した『ドンバス2016』というドキュメンタリー映画(日本語字幕付き)がYouTubeにある。


そして今の日本では……

共同通信社が4月16、17両日に実施した全国電話世論調査によると、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの経済制裁に関し、日本経済や暮らしに影響が広がったとしても「続けるべきだ」との回答が73.7%、「続ける必要はない」が22.1%だった。

こんなご時世ですが、残りの人生、やれる限り何か意味のあることを残したいと思って執筆・創作活動を続けています。応援していただければこの上ない喜びです。