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フランス国民連合への「極右」というレッテル貼りと東京都知事選の憂鬱

もうすぐパリオリンピックが始まるフランスでは、目下、政情が激しく変化している。簡単にまとめると、

  • 2024年6月6日~9日にかけて、欧州連合(EU)加盟27カ国で欧州議会選挙(定数720)が実施された。フランスは、マリーヌ・ル・ペン率いる国民連合(Rassemblement National:RN)が30議席を獲得して圧勝した。

  • マクロン大統領はこれを受けて、「フランスの民意を問う」と、下院議会を解散した。

  • 6月30日、フランス国民議会(下院、定数577)選挙の第1回投票で、国民連合は33.2%の得票率で圧倒的な強さを見せた。2位は新人民戦線で28%、マクロン連立政権は20.8%だった。

  • 最終結果は7月7日の第2回投票で決まるが、このままいくと、「フランスの政治を根底から覆す」というマリーヌ・ル・ペン氏の目標は達成されそうな勢いである。

これを受けて、日本を含めて西側マスメディアはこぞって「極右政党がフランス第一党になる危機」のように報じている。

↑NHKはじめ、日本ではほとんどのマスメディアが国民連合を「極右」と呼んでいる

「極右」というと、日本では、天皇の絶対崇拝、国粋主義、日の丸君が代、でかいボリュームの街宣車、場合によっては暴力行使も辞さない過激派、とにかく関わってはいけない危険な連中……のように受け取られるのが一般的だろう。
では、マリーヌ・ル・ペンが率いるフランス国民連合はそういう政治勢力なのか?

国民連合は、旧党名を「国民戦線(Front National)」といい、マリーヌ・ル・ペンの父親であるジャン=マリー・ル・ペンが設立した。その頃は、反ユダヤ主義、排外主義、人種主義といった過激思想の政治団体だったそうだが、2011年に、娘(3女)のマリーヌが第2代党首になってからは、党名も変更し、過激な発言を繰り返す父親を党から除名。多くの国民に受け入れられやすいように穏健路線へと舵を切っていった。
現在、国民連合の党首は第3代のジョルダン・バルデラに代わっているが、実質のリーダーはマリーヌである。

フランス国民連合を率いるマリーヌ・ル・ペンとはどんな人物なのか

では、マリーヌはどんな政策を掲げているのか?
一水会代表・木村三浩氏がマリーヌの演説、公約をまとめた本の最後には具体的な144の公約が記されている。

まず、「フランス人の主権を復元する事で自分たちの運命と自由をコントロールする」という宣言を筆頭に、「議会の定数削減や比例代表制の導入による改革」「男女同一賃金など女性の権利保護」「結社の自由の尊重を確保」……といった政策は多くの人が受け入れるだろう。
他には、「非行少年の親には援助しない」「刑務所を5年間で40000人分増やす」「外国人犯罪者は追放して母国で服役するよう二国間協定を結ぶ」「重大犯罪は刑務所での刑期を縮めない」といった厳罰主義や、外国人に対しても、「結婚によるフランス国籍の自動取得の終了」「不法滞在者のフランス国籍取得を自動的に排除」「イスラム原理主義に関するあらゆる種類の組織の解散とイスラム原理主義にリンクされている全ての外国人を追放」といった明解な姿勢を表明している。
ただ、彼女は反イスラムというわけではなく、イスラム原理主義者たちのテロに対して厳しい姿勢で臨むとしており、フランス国内のイスラム系住民の一部からは、自分たちの立場を過激派から守ってくれるとして、むしろ支持されているという。ちなみにフランスのムスリム(イスラム教徒)人口は約500万人で、西欧最多だという。
同性愛や妊娠中絶も容認しているが、2013年に合法化された同性結婚は廃止するとしている。

経済に関しては「スマート保護主義」というものを主張。具体的には、「フランスの生産者に課せられた基準を満たしていない海外製品の輸入や販売を禁止」「表示義務による『フランス製』を応援」「フランス人の雇用を守るため、外国人の雇用には追徴課税」「外資に買収された企業への補助金を10年間止める」「週35時間の法定労働時間を維持し、時間外労働の賃金は税を免除」……といった、国内の経済力向上を訴えている。
エネルギー政策では、「再生可能エネルギーの大規模なフランス製セクターを設立」「フランスの原子力産業の保護」「原子力発電所の閉鎖拒否」「石油依存を減らすため、水素エネルギー研究開発を国が支援」「シェールガスの採掘禁止」といった政策を打ち出している。これが一般ウケのためのポーズなのか、単純に勉強不足によるものなのか、原発大国フランスのエネルギー安全保障という戦略によるPRなのかは分からない。

……こうして見ていくと、「極右」というレッテル貼りがいかに的外れか分かるし、多くの国民に支持され、期待されるのも理解できる。

ではなぜ、西側の大手メディアはマリーヌが率いる国民連合を「極右政党」と報じるのか。
まず注意したいのは、マスメディアがレッテル貼りする「極右」も「極左」も、反グローバリズムという点で共通していることが多いということだ。
2017年、マリーヌは大統領選挙に出て、1回目投票で得票率21.30%で2位、決選投票では1000万票を獲得したが得票率は33.90%にとどまり、エマニュエル・マクロンに負けた。
同年2月5日、立候補に際しての決起集会の演説で、彼女は反グローバリズムを明言している。
「今回の選挙ではフランスが自由主義国であり続けられるかが問われている。分水嶺となるのは、左派か右派かではなく、愛国者か世界主義者(グローバリスト)か、だ」
「過去の大統領らが推進してきたグローバリゼーションはフランスに悲惨な結果をもたらした。金融やイスラム主義のグローバル化がフランスをひざまずかせようとしている」
「私はフランスを自由で独立した民主国家にすることを目指す。グローバリゼーションは奴隷が作ったものを失業者に売りつける仕組みだ」
「国民連合が目指しているのは、知的な保護主義と経済的愛国主義が導く地元革命だ」
(BBC NEWS 2017/02/06「仏国民戦線ル・ペン党首、グローバリゼーションを攻撃 大統領選へ向けて」、ロイター 「仏極右ルペン氏、選挙決起集会で反グローバリゼーションを断言」などよりまとめ)

また、軍事費の増額を政策に入れる一方で、反戦主張もしている。
2017年2月23日にパリで行われた講演ではこう述べている。
「この10年間、フランスは好戦的でした。フランスは、政治、宗教、民族といったあらゆる単純な解決を拒む複雑な問題を、戦争によって解決できると信じていました。
しかし、私は、武力に訴えることであらゆる議論に終止符を打ち、あらゆる問題を解決できると信じている人間ではありません。武器の誘惑は弱い人間の過ちですが、フランスはあまりにしばしばこの誘惑に屈してきました」
山口一臣「フランス大統領候補 マリーヌ・ルペン氏が『極右』というのは誤報ではないか? 2017/5/6

ウクライナ紛争についても、「ウクライナへの軍事兵器の配達はエスカレートし、ロシアとウクライナの間の紛争へのNATOの関与は第三次世界大戦につながる可能性がある」と警告し、NATOとの距離を置くべきという立場をとっている。

マクロンはある時点で完全にグローバリストエリートの勢力に取り込まれ、WEFの代弁者のようになってしまっている。その姿勢がもたらしたフランスの独自性喪失、貧富の差の拡大、生活苦などに耐えかねた国民が、現状を打破してくれるのはマリーヌ・ル・ペンしかいないと判断している、ということではないだろうか。

もちろん、日本にいる私にはフランス国内の空気感は分からないし、どこまでが実状に合った情報なのか、判断することも難しい。それでも言えるのは、フランス国民連合を「極右勢力」とレッテル貼りして報道することはおかしいだろう、ということだ。

都知事選の憂鬱

日本で反グローバリズムを訴える政党は見当たらない。
沈み行くアメリカと心中する日本を変えるような対抗勢力は存在しない。
次の日曜日に投票締切となる都知事選にしても、メディアが小池vs蓮舫の対決を煽って報道しているが、実はどちらも掲げている政策は似たり寄ったりだ。

↑マスメディアは左の3候補者に焦点をあてているが、3人ともワクチン接種推進だそうだ。今、世界がどうなっているか分かっていないのが蓮舫で、小池と石丸は分かった上でWEFの手先として動いている
↑うつみさとる候補者が訴える政策は、マリーヌ・ル・ペン率いるフランス国民連合にも通ずるものがある。しかし、こういう主張をする野党は日本では皆無だ

都知事選で小池3選なんてことになれば、もはや目もあてられない。
それを阻止するには、対抗馬として持ち上げられている蓮舫に投票するしかないのだろうが、もっとまともな政策を打ち出している候補に入れたいと思うのが心情。しかし、それは死に票になることがはっきりしている。
そういうストレスを抱えている都民もたくさんいるだろう。

はっきりしているのは、東京が外資やグローバリストエリートたちのいいようにされれば、日本が立ち直ることは絶望的になるということだ。
その手先となっている候補者にだけは絶対に票を入れないでくれ、と、北関東の地から見守ることしかできない。


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