狛犬図鑑や彫刻屋台図鑑をAmazon KDPで出版する意味
Amazon KDP版の彫刻屋台図鑑2冊が届いた。従来のB6判からA5判に一回り大きくなった。
なんとAmazon KDPではA5判とB6判の製造コストが同じ。印刷も圧倒的にきれい。従来の製本直送では、同じものを作るのに倍くらいのコストがかかり、届くのも4倍くらいの日数がかかる。もっと早く気がつくべきだった。
カラーの図鑑ものは全部これに切り替えていきたい。これなら日本だけでなく、欧米でも同じものが買えるし。
しかし、彫刻屋台にしても狛犬にしても、こうした図鑑的なもの(写真集)をこれ以上出し続ける気力はほとんどない。狛犬の世界を紹介する役割はほぼ果たしたと思える。
狛犬は、ファンが増えてきたので写真集を出す人も複数出てきた。このまま静かに狛犬趣味の世界は続いていくだろう。
彫刻屋台はまだまだ知られていないので、紹介する意味での存在価値はあったと思う。
ただ、彫刻の意匠が定型化していて、アートとしての自由度は低いので、狛犬のような楽しみ方はできない。彫刻師たちの技術やセンスを細かく堪能するという楽しみ方になるだろうか。
日光東照宮は外国人も大勢訪れるが、あれは他の多くの観光資源的建造物と同様、権力者が作ったものだ。彫刻屋台はそうではない。庶民が自分たちで楽しむために作った。江戸末期の華美禁止令に逆らってまで彫刻の精緻さを競った。
そうした文化史的な価値、意味をも考えさせられるきっかけになる。
狛犬も同じで、庶民が自由な発想で創り出したものと、権力が介入して定型化したものとは、誕生の時点で性格が異なる。そういうことを、数十年かけて学んだ。
狛犬本にしても彫刻屋台図鑑にしても、Amazon KDP版にしたことで、私が死んだ後もしばらくは入手できる可能性がある。また、日本だけでなく、欧米諸国でも購入できるようになったことの意味は大きいかもしれない。写真集的なものは、日本語が読めない人でも楽しめるだろうし。
狛犬図鑑05(利平・寅吉・和平)に続いて、狛犬図鑑06もAmazon KDP版にした。
狛犬図鑑06は『都内の狛犬(1)』となっているが、もはや2以降を続けることはないだろう。物理的に東京まで足を伸ばす体力気力がないだけでなく、都内の狛犬はすでに多くの狛犬ファンが私よりずっと細かく調べ尽くしているので、放っておいても解説書や写真集的なものは少しずつ出てくると思うからだ。
古いもの、小さなものの多くはすでに処分されたり破壊されたりして残っていないので、今も見られる古い狛犬のほとんどは商人や町の名士が奉納した、立派に作られたものだ。それだけだと、江戸時代の一側面しか見えてこないかもしれない。
都心では今も木が伐られ、古い建物が壊され続けているから、今残っている貴重な狛犬も、今後は保存・維持が最大の課題となる。
江戸時代から生き延びている狛犬たちは、今の東京をどう見ているだろう。
こんなご時世ですが、残りの人生、やれる限り何か意味のあることを残したいと思って執筆・創作活動を続けています。応援していただければこの上ない喜びです。