ロバート・デ・ニーロについて
Netflix配信の映画『アイリッシュマン』を観た。ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシらが出演し、マーティン・スコセッシが監督をしている。この豪華布陣で面白くならないわけがないと勝手に高いハードルを設けて鑑賞したが、やはりスタイリッシュでクールな傑作に仕上がっていた。文句なしに面白い。
さて、『#私の好きなデ・ニーロ』というお題が募集されていたのでそれについて考えてみた。デ・ニーロは代表作が多すぎるのでひとつに絞るのは難しい。『ゴッドファーザー PART II』の仁義溢れるマフィアの首領役も良いし、『レイジング・ブル』のルックスを自在に変化させたボクサー役も良いし、『キング・オブ・コメディ』のクレイジーなコメディアン役も良いし、『世界にひとつのプレイブック』の善良な父親役も良い。しかし、デ・ニーロ出演の映画で私がなにを一番観ているかというと、それは『タクシードライバー』だと思う。それだけ私を惹きつける魅力がこの映画とデ・ニーロにはあるので、これを推したい。
『タクシードライバー』は不眠症に悩まされるベトナム戦争帰りの男、トラヴィスの物語だ。トラヴィスは意中の女性をデートに誘うことに成功するが、よりにもよって初デートの場所にポルノ映画を選ぶという、もはや常識を三段跳びで踏み外す不器用さ。もちろん相手の女性には愛想をつかされるのだが、その理由をまったく理解できず、挙句の果てには相手の職場に乗り込んで怒鳴り散らす。トラヴィスの奇行はこれに留まらず、全身を銃で武装したり、髪型をモヒカンにしてみたり、売春婦の少女を頼まれてもいないのに救い出そうとしたり。現実にいたらもちろん『近寄りたくないヤバい奴』なのだが、デ・ニーロが演じるからこそどこかクールでチャーミングなのだ。
デ・ニーロも御年76歳になったそうだ。さすがに昔のような無茶な役作りはしなくなったが、1970年代から第一線で活躍し続けている俳優もそう多くはない。これからもかっこいいジジイとして、その元気な姿を見続けていたいものである。