理工系学科における大学数学とは?
大学数学という名の魔物
数学というものは、基本的に難解なモノとして捉えられていることと思います。
確かに数学は難しく、難解ですし、具体的な問題の何に役に立つかが不鮮明なことがあります。
理系の人たちにとってさえ、自分で使う数学の意味についてざっくりとしか把握していないことがままあります。
理系の人なれば、多くの人が大学初学年で学ぶ「線形代数学」は、高校生に比べるといきなり抽象度がレベルアップしていることから、非常にとっつきにくいものとなっております。
最初の方は、3次元の連立方程式を解く、といった意味の分かる問題にぶちあたりますが、写像あたりの概念からいよいよ風向きが悪くなってきます。
そのうち、これは何でやってるのか皆目わからんし、どこで使えるんや?という状態になっていきます。
そうこうするうちに、テストの期間に差し掛かり、とりあえず点数が取れる位の理解でまずは乗り切ろうとなるわけです。
線形代数を例にあげましたが、複素関数論であっても、基本的には同じような感じです。
一体全体、どこでどのように使われるかわからんのに、理論ばかりやらされるから、意義を見出せず、単位が取れることで、よしとする。
自然科学や工学における数学とは?
さて、いよいよ専門科目が進んで来ると、これまで学んできた数学の力が火を噴き始めます。
とはいえ、学部時代の自然科学系の専門科目において、上述した数学の授業以上に、ことさら難解な数学を必要とするという場面はないと思われます。(個人的には経験したことがありません)
工学や理学(数学科以外)では、数学を応用するという立場なので、使用する数学の持つ論理自体や、その数式が示すより背後の意味にまで、深く言及されないまま、あるいは授業中に言及されていたとしても考えないまま終わってしまうことがあります。
あくまで、こういう風に数学を使えば、〇〇を求めることが出来る。
といったことを学ぶのさえ、かなりの時間がかかります。
しかして、専門を深めれば深めるほど、この基礎数学の有用性に気付いてくる人も多いかと思います。
これまでは、「数学の使い方」の勉強で手一杯だったのだけど、様々な科目をやってみて、多くの学科間において、共通の数学的繋がりの端緒を発見するわけです。
たとえば、よく院試で出てくる、固有値・固有ベクトルの問題などは、手続きとしては覚えていても、ようわからんといったことが僕にはありました。
関連して、「エルミート行列では、固有値は全て実数」ということを知識では知っていましたが、すっかりその理屈は忘れておりました。(院試の固有値問題を解くと、綺麗な整数値が出てきます。)
量子力学では、このエルミート演算子が重要な意味を持っていて、「観測可能な物理量は全て、エルミート演算子になる」ということが、数学から示されます。
つまり、物理の領域と数学自体の論理に深いクロスオーバーがありまして、そのため、深く数学を理解していれば、より精密に物理を読み解くことにつながるというわけです。
これは、その他の分野でも同じことが言えると思われます。
この基礎的な土台の有無が、長期的な視点で見た時の、理学・工学の理解の深さに繋がる一つの要因であると思うと、いつ何時からでも、自分に必要と思われる数学を深く掘り下げておく経験が必要だと感じています。
そういう意味で、大学における数学教育は失敗しているのでは?感があります。
明示的に、初期の段階で、我々の学科は、ここの~~の分野でこの数学を使うため、ここまでは必須である!とかガイドマップを配ってもいいレベルだと思います。
そのためには、学科としてこの解析やこの理論は把握して欲しいから、逆算するとここまでの数学が必要だ・という議論を重ねないといけませんから、面倒なのかもしれないですね。
日本の大学の先生は異常に忙しく、研究時間すらまともに取れないことを考えると、そもそももっと根底の部分から変えねばならない点がある、ということでしょう。
そういうわけで、最近改めて、僕も線形代数の勉強を始めようかなーと思っています。(僕の場合は、趣味半分ですが。。。)
実験道具を買うのに使います。目指せ!高性能オシロスコープ!