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タクシー、ふたたび
さて、御殿で友だちへのおみやげも買ったので、そろそろ北谷へ帰ることにした。( 前回「御菓子御殿」から続きます )
読谷村へはタクシーで来たので、帰りもタクシーだ。運転手パイセンから手渡されたカードが手元に残っている。
カードには迎車のための電話番号とタクシー会社の宣伝。QRコードが入ってるところがいま風である。
「帰りはそこへ電話かアプリを使って呼んで下さいね。近くの仲間がすぐに来ますから」
「それは心強いです。また運転手さんだったらうれしいな」と、ちょびっと愛想を振りまいておく。
タクシーは以前からあまり得意ではない。
見かけによらず人見知りのためだ。個室に知らないひとと二人きりで閉じ込められて(監禁されてるわけではないが)さらに命運のすべてを見知らぬ初対面の人物に託すのだから、みんな勇気があるよね。
まあ、そうして電話を掛けたのだが、
「すみません、いま御菓子御殿本店に居るのですが、タクシーを一台、お願いできますか ? 」
早く来てくれると嬉しいな。
「読谷の御菓子御殿ですか ? そこだと当社では営業区域外なので、申し訳ありませんがお手配出来ないんです」
なぬっ ?
さっきの運転手さん、大丈夫って言ったやん !!!
ぷんすか !
えー? じゃあどうしたらいいのさ ?
こうしていても埒が明かないので御殿のひとに泣きついた。
御殿在住なんだからきっと高貴なお方に違いない。そう思うとお召し物もそこはかとなく高級品に見えてくる。
「タクシーを呼びたいのですが、電話番号とかわかりませんか ? 」
するとさすが御殿の殿上人、すかさず背後のキャビネットから分厚いファイルを取り出して、その中から電話番号を探してくれた。
高貴なお方を下々の者が顎で使ってしまって申し訳ない。
タクシーをお願いする電話番号はすぐに見つかり、お礼を言ってから外に出て連絡開始。
ありがとう、御殿のひと。
ついでだから帰りにスーパーに寄って、あっ、またまたついでに夕飯に焼肉を食べて帰ろうっと。たしか北谷のサ〇エーの隣に七輪焼肉〇安があったはずだ。
そうこうしているうちにお呼びしたタクシーが御殿に到着。
「あっ、お願いします」
「どちらまで ? 」
そうそう、いつもは近くのイオ〇で買い物だが、久しぶりにサ〇エーに行くのだった。
「北谷のサ〇エーまでお願いします」
「はい、それじゃあ出発進行ー ! 」
なかなか乗りの良い運転手さんだ。でもご多分にもれず、この方もパイセン。たまには女性とか若い人とかの運転も見てみたいものだ。
いや、決して熟練のドライバーを毛嫌いしているわけではないですよ。でもほら、なんか最近の流行りとかのお話もしてみたいじゃないか。
出だしこそ陽気な人だと思っていたのだが、運転しだすと突然寡黙になって無言を貫くパイセン。運転に集中してるんだよな。途端に緊張が走る。
まさか寝てないよね ?
北谷まで近づいて来た。
車は北谷入口の右折レーンへ入る。
へっ ? もしや道を間違えていないか ? そのまま右折するとアメリカンビレッジじゃぞ。
ここでちょっと悪い予感がした。運転手さんはイ〇ンへ行こうとしているのではないか ? いやいや、ベテランのプロを疑ってはいかん、きっと脇道へ入って近道をするに違いない。( 内心はもちろん、間違えていると思っているが )
「着きましたよ」
目の前にはいつものイ〇ンの店舗が。
「あの~、サ〇エーへ行きたいのですが・・・」
「へっ ? 」
やはり勘違いしていたか。
後日、その話を友だちに話したところ、
「あそこは北谷のサ〇エーではなくってハンビータウンのサ〇エーと言わないと通じないよ」
意思の疎通、いと、むづかし。
まあ、わたし、パイセン共々気を取り直して再出発。
無事に目的地に着きましたとさ。
さぁ、焼肉を食べよう !