北フランスにある170kmの地獄を全力で駆け抜けた話(中編)
みなさんこんにちは。
書きたい事がありすぎて頭を悩ませているKです。
前回は北フランスにて参加したパリルーベチャレンジの出走前から第1休憩所までの話を書きました。
今回はその続きを書きます。
お時間あればぜひ最後までご覧ください。
序盤から大変な目に遭ってしまいましたがその後は問題なく第1休憩所に到着する事ができました。
小野くんとも合流できて一安心です(このあとの石畳区間で容赦なく置いていきます)
第2休憩所までの道のり
休憩所を抜けて1kmもしないうちにすぐにセクター24(★3)が始まります。
2km毎にセクター23(★3)22(★3)21(★3)があります。
石畳区間が終わる度に上のセクターの数字を見ます。
「まだこんなんが20個以上もあんのか…気が遠くなるな」
20を切るまではかなり億劫でした。
セクター23は昨年プロレースを観戦した場所でもあります(この時のセクターは22でした)
観戦時に少し歩いただけなのでこの区間の全貌は知りませんでしたがここもかなり長いです。
そして微妙な上りがちらほらあって足の体力を削っていきます。
そこから小さな町を通り10kmほど走った後にセクター20(★4)を通ります。
(小野くんとはセクター22の途中ではぐれてしまいました)
石畳のランク付け
石畳の凹凸具合とマス目の荒さ、距離の長さで★の数字が決まります。
★4は距離が長く、いつまで経っても終了のゲートが見えないので精神的に疲れます。
★3は★4より距離が短いものの、中央が出っ張った道が多く他の走者との回避が困難なため落車が発生しやすいです。
更に★4より石畳の並びが均等ではないので揺れが激しく身体的にはこちらの方が負担が大きいです。
しかしながら人間不思議なもので、何度も石畳を走っていると意外とそれに慣れます。
★2はたまに現れますがもはや舗装路です。
全く苦になりません。
北の地獄への入り口『アランベール』
セクター20を終えてしばらく走った74km地点、静かな村を通ると徐々にキャンピングカーが増えていきます。
次の日にプロのレースがあるので前日のうちに場所取りをする人達が大勢います。
どのイベントでもそうですが『キャンピングカーの台数と人の数=そのレースの勝負所』であるため★4であってもプロのレースで重要な場所だったりすると必然的にキャンピングカーが増えます。
それにしても明らかに多いです。
私はフレームの形状の関係で前日に渡された石畳表を付ける事ができなかったので『どこでどの★が現れるのか』をほぼ知りません。
一応、第1休憩所で小野くんのトップチューブに張り付けられている表を確認はしていましたが何度も石畳を走るとそんな表は頭から抜けます。
『このキャンピングカーの数…そろそろか』
視線をあげるとそこには大勢の人がいました。
その奥には大勢のローディー達と一際目立つ黒いゲート(★の数字によってゲートの色が違う。★2は青、★3はオレンジ、★4は赤、★5は黒)
セクター19、1つ目の★5であり『パリルーベの顔』でもある難所中の難所『Trouée d’Arenberg』通称アランベールが現れます。
プロが使用する自転車と技量を持ってすら耐えることができず落車が発生するこのコース。
前日の受付終了後の帰りにここのコースだけ下見をしました。
その際に本気で突っ込まないと無事では済まないなというのはすでにわかっていました。
大勢の人達が参加者を応援してくれいます。
その人達に感謝をしつつ覚悟を決めて一気に突っ込みます。
人生で初めて走るアランベール
★3、4以上に頭部が激しく揺れ、的確な位置取りが難しくなり気付けばどんどんコースの端へ追いやられます。
コースの端へ追いやられる過程で凹凸の激しい石畳に前輪が持っていかれ耐えられなければすぐに転倒します。
気を抜くとハンドルから手が離れるため離れないように今まで以上の力でハンドルを握ることになります。
そのため手の母指球が激しく擦れて焼けるような痛みが発生します。
この感じ、何から何まで久しぶりです。
『これだよ!この感覚だよ!!』
とんでもない目に遭いながらもこの感覚を待ちわびていた自分がいました。
コースは自転車3台分のスペースしかない上に横には落車で倒れたり激しい転倒で他の観客から救助されている参加者が大勢いるので実質1台分のスペースしかありません。
前後に全く参加者がいなければある程度慎重に走れますが他の参加者はお構いなしに突っ込んできます。
ちんたら走ると後ろから抜かそうとする他の参加者と接触して転倒します。
プロと違いアマチュアの私達は転倒時に全く受け身を取ることができません。
転倒した場合、ほぼ確実に頭から石畳に叩きつけられます。
そうならない為にも出来る限りほぼ全力スプリント状態で走り続けます。
前に走者がいた場合、自分の身を守る為にも覚悟を決めて全力で横から追い抜きます。
更にここからは145km部門の参加者も合流してくるので密集状態になり危険度が増します。
(145kmの人達にとって最初の石畳が★5、もはやただの嫌がらせ)
前もって聞いた話では横の舗装路は柵で封鎖されて走ることができないとの事でしたが今回はその舗装路区間を走ることができる様になっていました。
後半は全ての道が柵で覆われ強制的に石畳を走ることになります。
『舗装路を走るなんでもったいないことできるか!意地でも全部真ん中を走る』
自分の意地との戦いです。
走っている最中に困ったことが発生しました。
揺れが激し過ぎて漏れそうです。
むしろ揺れ過ぎて漏らしているのではないかと錯覚するくらい下半身が石畳の衝撃で大変なことになっていました。
結果的に漏らさず済みましたがこのコースに入る前に少しでも尿意がある人は必ず先に済ませましょう。
おそらく何人かは漏らしてます。
揺れが酷い中、偶然にも走行時にサイコンを確認する事ができました。
この時の走行速度は時速34kmでした(しかし揺れが酷いから実際は当てにならない)
私もバンバン抜かされていたので他の参加者は時速40km以上出ていたのでしょう。
2.4kmの長い道を走り切った直後は疲労と衝撃で腕に全く力が入らなくなります。
せっかく走り切ったので『小野くんが来るまで写真でも撮るか』と他の参加者と一緒に写真を撮っていました。
しばらくすると遠くから歓声が上がります。
コースを見るとなかなかファンキーな人がやってきました。
なんとこのお兄さん、このコースを最初から最後までウィリーで走ってきたそうです。
しかも他の走者の邪魔にならないように端っこを走るという気の配りよう。
やっている事がヤバすぎて私も大興奮です。
このお兄さんとはこの後も何度か会うことになります。
なんなら第1休憩所でも私の横にいたそうです。
10分ほどしたら小野くんがやって来ました。
無事を確認したら再び走り始めます。
セクター18(★3)17(★4)を順調に走っている時、ある異変に気が付きます。
右肘が猛烈に痛いです。
姿勢の問題からか、石畳の衝撃を腕で受け流していたので負担がその部分に集中していたそうです。
かなりの痛みでしたがこの後も石畳が待っているのでどうする事もできません。
色んな人達との出会い
話は少しそれますが、小野くんと再びはぐれたセクター17(★4)16(★3)15(★4)を終えた頃、石畳区間終了ゲートの近くでいつも複数で待っている人達を見かけました。
どうやら同じ自転車クラブの人達らしく常に一緒に走っていたそうです。
年齢や実力の差があるので石畳に突入後にすぐに離れてしまうそうですが、そうなった場合は先に走り切った人達が残りのメンバーを待ってから再出発していました。
時間はかかりますが同じグループで最後まで走り切るというのは良い思い出になりそうです。
セクター18が終わったあたりでしょうか、マウンテンバイクで参加しているご年配の方から声をかけられました。
おじさん「かなり前から君を見かけるけど石畳を走る時のスピード、相当速いね。どこかの選手かい?(会話は英語)」
K「いいえ、ただの週末ホビーレーサーですよ」
おじさん「ホビーであんなに速いのかい?凄い勢いで他の参加者を何度も抜かすからてっきりどこかの選手かと思ったよ」
K「石畳だけ全力で走っているのでそこは速いんですよ。他は遅いです」
おじさん「そうなのか(笑)」
その後もいつの間にかおじさんに抜かれてその都度石畳で他の参加者ごとまとめて追い抜くので毎回おじさんを含む他の参加者の方に声をかけてもらえました。
英語はほとんど話せませんがペダルを回せば皆仲間なので拙い英語でも案外なんとかなります。
セクター15を終えて数km走った105km地点。
ようやく第2休憩所に辿り着きます。
第2休憩所にて
次の休憩所まで約30kmなのでそこまで長く休憩する必要はありませんがお腹が減ったのでバナナとワッフルを大量に食べました。
美味しいオレンジもあります。
なぜかそこの担当の人だけオレンジをわんこ蕎麦の如く大量に食べさせてきます。
断るタイミングが見つからず8個連続して食べました。
お腹パンパンです。
水もタンクから補充する事ができます。
その隣にはイベントでもらう事ができるサプリメントを入れた水ももらう事ができます。
これがめっちゃまずいです。
疲れた身体にこの仕打ちはあんまりです。
20分ほど待ちましたが小野くんが一向に現れません。
携帯に通知がないのでおそらく無事だろうとは思っていました。
第1休憩所で「15分待って片方が来なかったら先に行く」と話し合ってはいましたが私は彼を待つ事にしました。
先ほど同じくらい待ってもらったというのもありますが『2人で走りに来たのだから(次の段階への出発くらい)2人で出発したい』と思ったのです。
待ちすぎると身体が冷えますが偶然にも先ほど知り合ったマウンテンバイクのおじさんが近くにいたのでこの後のコースの話をしたりと有意義な時間を過ごす事ができました。
5分ほどしてようやく小野くんがやって来ました。
無事に来てくれてホッとしました。
小「お待たせしました。結構待ちました?」
K「ちょっとだけだよ。ほら、いっぱい食べてこい」
数分の休憩と互いの容態の確認、次の石畳区間の話を少しだけした出発することにしました。
K「よし、ようやく半分だ。この調子でいけば15時半にはゴールできる。頑張ろう」
私達は再び走り始めました。
第1休憩所から第2休憩所までの中編はここまでです。
初めてのアランベールは興奮することばかりでした。
次は第3休憩所とゴールまでの話を書きます。
もしお時間あればまたご覧ください。
それでは👋