令和4年度予備試験論文再現答案(商法)

たぬきでありながら弁護士を目指しているめいりです。R4予備試験、最終合格できたので、論文の再現答案全部公開しちゃいますぽん〜

4つ目は商法(A評価)!

設問1

1.DはAらに対し責任追求の訴え(847条3項)を提起して、本件取引が利益供与(120条1項)にあたり、Aらに本件土地買取金額の2億円を連帯して甲社に返還するように主張する。

(1)まず、「権利の行使に関し」といえるか。同条2項で推定されるか。

 本件取引は売買契約であるから、「有償」であるが、本件取引において本件土地は適正価格であるから、「財産上の利益に比して著しく少ない」とは言えない。

 よって、同項の推定はない。

(2)そこで、「権利の行使に関し」の意義が問題になる。

 この点について、同条の趣旨は会社の健全な運営と会社財産の浪費防止にある。そこで、株主の権利行使に何らかの影響を与える目的があれば足りると解する。

 本件取引はCがDに甲社株式の譲渡を防止する目的でなされたものである。そして、株式譲渡自体は株主としての権利行使ではない。もっとも、AとDは対立しており、Dが株式を取得すれば52%の甲社株式を取得することになるから、議決権を行使してAを代表取締役から解任したり、Dが取締役になる可能性があり、本件取引の最終的な目的はこれを防止するものである。そうだとすると株主の議決権行使に影響を与える目的が認められる。

 よって、「権利の行使に関し」といえる。

(3)次に本件土地価格は適正であったところ、「財産上の利益の供与」があったといえるか。

 この点について、上記趣旨から、適正価格であっても本来得られる利益を犠牲にした場合には、会社財産の浪費に他ならない。そこで、かかる場合も「財産上の利益の供与」に当たると解する。

 本件では、Cから本件土地を買い取るのではなく、不動産業者に提案された別の土地を買い取って倉庫を建設した方が円滑に商品を出荷することができ、利益がある。そして、本件取引によって甲社はかかる利益を失っている。

 よって、「財産上の利益の供与」に当たる。

(4)そこで、ABEは連帯して供与額である2億円を会社に支払う義務を負う(120条4項)。また、ADの対立はBEも知っていたはずであるし、一旦は見送った本件取引を本件取締役会決議で決定しているから、「注意を怠らなかった」とはいえない(同項但書)。

(5)また、Cも2億円の返還義務を負うが、本件土地の返還を請求できる(同条3項)。

2.以上より、Dの請求は認められる。

設問2

1.Aらは、本件提訴請求(847条1項)が不適法であるとして、本件訴えが違法であると主張する。

(1)まず、監査役設置会社においては提訴請求は監査役に対してなされなければならないところ(386条1項1号)、Dは甲社監査役Fに対して請求している。

(2)もっとも、Fは甲社子会社の乙社の取締役に就任しており、兼任禁止(335条2項)によって甲社監査役の地位を失わないか。

 当事者の合理的意思は、監査役が子会社の取締役に就任した場合には親会社の監査役は辞任するというものである。また監査役はいつでも辞任できる(330条・民法651条1項)。そこで、監査役が子会社の取締役になることを承認し、適正な手続きで取締役に選任された場合には、当然に監査役の地位を失うと解する。

 本件では、Fは乙社の取締役になることを承諾し、乙社における選任手続きも取られている。

 よって、Fは甲社の監査役の地位を失っている。

(3)よって、本件提訴請求は適法ではないが、本件訴えまで違法になるか。

 この点について、提訴請求の趣旨は、会社に提訴すべきか否かの判断の機会を与える点にある。そこで、実質的に会社に判断の機会が与えられている場合には、訴えは適法になると解する。

 本件では、Fは提訴請求の直前までは監査役であったし、乙社は甲社の100%子会社でありしかも甲社代表取締役Aは乙社の代表取締役も兼任している。そしてFは乙社の取締役になったのはAの主導である。そうだとすればFはABEと連絡を密に取っていたはずであるから、実質的には甲社に提訴をすべきかの判断の機会があった。

 よって、本件訴えは違法にならない。

2.以上より、Aらの主張が認められ、本件訴えは適法である。

以上

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