令和4年度予備試験論文再現答案(行政法)

たぬきでありながら弁護士を目指しているめいりです。R4予備試験、最終合格できたので、論文の再現答案全部公開しちゃいますぽん〜

2つ目は行政法(A評価)!


設問1

※出訴期間の論点も実際には書いたんだけど、再現をし忘れてそのまま中身を失念

1.Dが原告適格を有するためには、「法律上の利益を有する」必要がある(行訴法36条)。

(1)「法律上の利益を有する者」とは、当該処分によって自己の権利または法律上の利益を侵害され、または必然的に侵害されるおそれのある者をいう。そして、当該処分を定める法令が、不特定多数者の具体的利益を一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、個々人の個別的利益として保護する趣旨を含む場合も「法律上の利益を有する」と解する。

(2)本件では、Dの主張する利益は本件土地の所有権(民法206条)に基づき本件工事を行うというものである。

 そして、条例4条1項による指定は、当該文化財の所有者に通知され(同条3項)、所有権の尊重しなければならないと規定される(3条)。また所有権は近代社会の所有権絶対のもと重要な権利である。そうだとすれば、条例は所有権を保護している。

 また、条例6条は所有者の文化財管理義務を定めている。また、所有権は個々人に帰属する権利である。そうだとすれば、条例は個々人の所有権をも保護している。

 そこで、指定された文化財の一部または全部を所有する者には、「法律上の利益」が認められると解する。

(3)本件では、C古墳はDが所有する本件土地の一部を占めている。

(4)よって、Dは「法律上の利益」がある。

2.「当該処分…の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない」ことも必要である。

 この点、補充性の要件は訴訟選択に関する要件であるから、無効確認訴訟が、当該処分の無効を前提とする当事者訴訟または民事訴訟よりも、紛争解決の観点からより直截的で適切な場合もこれに当たると解する。

 本件では、本件処分の無効を前提として本件工事を実施できる地位の確認を求める当事者訴訟が考えられるが、所有権の存在自体は既判力をもって確定しないから、所有権に基づく完全な使用収益の観点からは、本件処分自体を争うことが効果的である。

 よって、無効確認訴訟の方がより直截的で適切である。

3.以上より、Dに原告適格が認められる。

設問2

1.Dは、本件処分が条例4条2項に違反し、また明確性を欠く違法があり、本件処分は無効であると主張する。

(1)この点、無効確認訴訟は時機に後れた取消訴訟として機能するから出訴期間による法的安定性を考慮してもなお認めるべき重大な違法に限られる。また、第三者の信頼があるから、明白な瑕疵でなければならない、そこで、当該処分が違法であることを前提に違法が重大かつ明白な場合に無効事由になると解する。

(2)条例4条2項について

ア.同項の趣旨は、所有者の財産権と文化財保護の調和の観点から、保護委員に諮問することで、判断の慎重を期す点にある。そして、21条2項は保護委員会が必要な調査・研究を経て、答申することが予定されている。そこで、かかる手続きを経ない場合には「諮問」とは言えず、4条2項に違反すると解する。

 本件では、B町は保護委員会の委員長であるE一人のみに意見を聴取しただけであるから、必要な調査・研究を経ておらず、4条2項に違反する。

イ.もっとも、20年近く何ら問題はなかったから、かかる違法は重大であったとは評価できない。

ウ.よって無効事由にはあたらない。

(3)明確性について

ア.4条1項の指定は、所有権の重大な制限を伴うから、その範囲を明確に示さなければ違法になると解する。

 そして、本件処分はC古墳の石室のみならず盛土が指定の範囲に含まれるか不明確であるから、違法である。

イ もっとも、盛土は1メートル程度であるから、不明確な範囲は広くなく、重大ではない。

ウ よって、無効事由にはあたらない。

2.以上より、Dの主張は認められない。

以上

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