刑法クイズ②
メリークリスマスイブ!ぽん🐾
またしても刑法クイズ思いついちゃったの。法人の構成員が会社のお金で買い物しちゃった時の、銀行に対する窃盗、会社に対する横領、背任の区別がテーマですぽん〜
あと、野生動物への餌付けはダメだよ!おやつに惹かれたたぬきがお山を下りて人間の街に行き、車のヘッドライトにびっくりぽんして、気絶して、轢かれるっていう悲しい事故、ロードキルが発生するので。刑法の話より大事です!!!
なお、私は化けたぬき、人間社会でも十分生きていけます。餌付けしていいよ!お寿司とか!フラペチーノとか!!!
【問題】
A会社の従業員である甲は、備品購入業務を担当しており、B銀行A名義の口座のキャッシュカードを持っていた。甲は、会社の裏でこっそり裏山のたぬきに餌付けするため、B銀行のA名義の口座からATMで1万円を引き出し、A名義で高級ドッグフードを購入した。甲はたぬきが会社に現れることは会社のイメージアップになると考えていたが、実は野生動物への餌付けは条例で禁止されていた。
甲の罪責を論ぜよ。なお、たぬきがかわいすぎるあまり、甲が責任能力を失った可能性は考慮しなくてよい。
【解答例】
1.甲がATMで1万円を引き出した行為に、Bに対する窃盗罪(235条)は成立しないか。
「窃取」とは、占有者の意思に反して財物の占有を移転させる行為をいうところ、預金を払い戻す正当権限がある場合には、払い戻しは、ATM内の現金の占有を有する銀行の意思には反しないことになる。
そして、甲は、A社従業員として、A名義のキャッシュカードを預けられており、B銀行との関係で払い戻しを受ける正当な権限を有している。
よって、「窃取」にあたらず、Bに対する窃盗罪は成立しない。
2.甲がATMで1万円を引き出し、A名義でドッグフードを購入した行為に、業務上横領罪(253条)が成立しないか。
(1)まず、横領罪にいう「占有」は、委託信任関係に基づく、物の事実上・法律上の支配をいう。そして、甲は上述のようにB銀行A名義口座の預金につき払い出しを受ける正当権限を有しているから、預金に対する法律上の占有があり、甲の「占有」が認められる。
(2)そして、「業務」とは社会生活上、反復継続して占める地位をいうところ、甲はA社従業員として備品管理業務を担当しており、上記占有は甲の業務上のものである。
(3)また、A名義の預金が「他人の物」に当たるかが問題になる。
この点、金銭は価値自体を把握するものであるから、使途が特定された以上、寄託者に価値の把握は留保されている。そこで、使途を定めて寄託された金銭については「他人の物」にあたると解する。
本件では、甲はAの備品購入の用途に限定されてA名義口座のキャッシュカードを預けられていたに過ぎないから、使途の限定があり、かかる預金の他人物性が肯定できる。
(4)次に、「横領」とは、不法領得の発現たる一切の行為をいう。そして、不法領得の意思は、他人の物の占有者が委託の任務に反して、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいう。
そして、本人が法人であり領得者がその構成員である場合には、団体は違法な目的の支出を行うことはできないのだから、違法目的支出は原則として「横領」に該当する。もっとも、もっぱら本人のためにする意思で支出している場合には、自己物として処分する意思がないから、不法領得の意思が否定され、「横領」に該当しない。
本件では、甲はA名義でドッグフードを購入しており、購入行為の損益はAに帰属するから、当然に甲に所有権の帰属があるとは見れない。一方で、甲がドッグフードを購入した目的は野生のたぬきの餌付けであり、かかる目的は条例違反の違法目的である。また、甲はたぬきが会社に現れることはA会社のイメージアップになると考えており、もっぱら本人目的であったとみる余地がないわけではないが、甲は自身がたぬきを愛でるために餌付けを目論んだと考える方が自然である。
よって、甲のドッグフード購入行為は「横領」にあたる。
(5)以上より、甲には業務上横領罪が成立する。
3.甲の上記行為に、背任罪(247条)が成立しないかが問題になるも、背任罪と横領罪が同時に成立する場合には、法条競合の関係にあるから、刑の重い横領罪が成立する以上、別に背任罪が成立する余地はない。
4.以上より、甲は業務上横領罪の罪責を負う。
以上🐾