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「嫌がらせの犯人は・・・」

春になると途端に増える案件…それは嫌がらせやらイタズラの相談。

ほとんどの場合は探偵用語では「電波系」オブラートに優しく包むなら

被害妄想。

今回は私が体験した、ある変わったケースを紹介しよう。

とある日、こんな相談を受けた。

「毎日自宅マンションのドアに異物を塗られたり、ピンポンダッシュを

されるんです・・・なんとか犯人を暴きたい!」

とのコト・・・。

前述した通り、このようなケースは相談も多いのだが、大概は依頼にならないコトも多い・・・実は被害妄想だったりとか・・・そんな場合は相談電話の時点で話したいコト(要は憂さ晴らし)が終わるとスッキリして問題解決してしまう。

だが、今回は違った・・・ホンモノは相談の時点ではもちろん問題解決はしない、直接の面談時にワシは今回のそれがホンモノだと確信した!(詳細は伏せるが・・・)

とにかく、いたずらは間違いなく行われている!

しかも毎日数回に亘ってだ!

異常を感じつつ違和感もあった私は、クライアントとの面談の時点でほぼ内部(同一マンション住民)の犯行である事を予感していた。

■調査初日■

クライアントの自宅であるマンション付近にて

張り込み&撮影を開始する。

エレベーターはなく、階段は一箇所の四階建てのマンションだ。

幸いにも、大通りに面した場所から全フロアーのドアと階段を見渡せる。

撮影しながらモニタリングをし、、不審な人物をチェックする・・・

開始して一時間後にはクライアントが出かける、クライアントには

出かける際、入念にドア付近のチェックをしてもらっている。

11:00を過ぎた頃にクライアントの隣の住民が出て来て、

雑巾を持ってドアの掃除を始める・・・。

ほどなく雑巾をもったままクライアント宅を訪ね、

クライアントの母と話し始める、

20~30分ほど話し、お互い自宅に戻る・・・。

隣の住民は実は大家の一家であり、同様にイタズラされているのはクライアントから聞かされていた、イタズラをお互い毎日報告しあって注意をしているらしい・・・

その後、クライアントの帰宅まで他の住民の出入りや外部の訪問者や、郵便局員、宅急便等撮影し、本日の報告をするコトとなった・・・

不審な人物は映っていなかった事、母が大家と話ししていた事、だがその時クライアントから、にわかに信じられない事を伝えられた。

「今日も私が出かけた後イタズラされてたらしいんですよ・・・」

「!」

撮影していた限りでは不審な人物(内部も含め)はいなかったはず!

そこで私は瞬時にピ~ンとキタ!

やはり内部の犯行か!?

■二日目■

ある種の確信を持った私は、イタズラの犯人と思われる住民のドアとフロアーを中心に撮影しつつモニタリングを開始する。

11:00

クライアントが出掛ける。

今日はドア周りのチェックをしてもらい、即連絡をもらう事にした・・・タイムラグが生じては、イタズラの犯人が特定出来ないからだ。

異常なしとの報告を受けた。

そしてそろそろ正午になろうかというその時!

犯人が「出てきた!」

何やら自宅のドア周りをしきりに確認している、

5~6分経過した時・・・

「!」

クライアント宅のドア前に立ち何やらしている・・・

最大にズームを効かせよくモニターをチェックすると、手には雑巾を持っている・・・

「!」

やはり!

もうおわかりでしょうが、対象者は雑巾を持って掃除をしているのではない!

何かを付けているのだ!

何故なら、依頼者に出掛ける際ドア周りをチェックしてもらった時には、何も異常はなかったからだ!

だがその映像だけでは何かを付けているのか、ただ掃除しているのかは依頼者の帰宅後のチェック、報告なしでは判断出来ない・・・。

だが犯人の行動はそれだけではなかった。

クライアント宅を訪ね、クライアントの母と話し始める、10分程会話していると

「なんと!」

会話の途中に階下に下りて行き、ある住民宅の呼び鈴を押し、すぐさまクライアント母がいるフロアーへ駆け上がっていく!

「ピンポンダッシュだ」

半ば呆れたような声を他の調査員と漏らしてしまう・・・。

しかも、こんな下らないイタズラの犯人である住民は驚くべき人物だった。

■調査終了■

同様の調査5日間を終えクライアントに報告をした。

犯人は内部の住民である事、雑巾を持って掃除のフリをするなど巧妙である事、ピンポンダッシュを不特定の部屋に行うなど、個人的な攻撃というより、むしろマンション全体へのイタズラである事をわざとアピールしているコト・・・。

そして何より犯人は隣の

「大家さんの娘」

であるという事・・・。

正確には義理の娘なのだが・・・

実は大家さんの敷地内にこのマンションは存在する。

クライアントの希望としては、とにかくこの下らないイタズラ騒ぎが収まって、無事平穏に暮らせればいいとのコトだったので、仲裁役を買って出た・・・(元来探偵の仕事ではないのだが・・・)

こんな状態を素人に無事平穏に解決出来るはずないと思ったし、なにせ依頼者は若い女性で交渉事も苦手だろうと思ったからだ・・・。

■数日後■

犯人が犯人だけに私も考えた、直談判は犯人を刺激しすぎて

クライアント探しが始まるはずだし、旦那に交渉しても犯人である妻を責めるか、かばうかは五分だ、そう!ここは大家である親に直談判するしかない!

そして直談判、丁寧にいきさつを伝える・・・イタズラがマンションで横行しているコト、その事を調査したコト、犯人がお嫁さんであるコト、そして何より、依頼者は無事平穏が取り返せればイイ!と切に願っているコト等・・・。

しかし、親である大家さんも気が動転していたのか、不動産屋と相談して連絡しますと、半ば門前払い・・・。

これはしくじったかと半ば失意の年が走った。

しかし、数時間後に不動産屋から連絡があり、大家さんを交え話が聞きたいとのコト、日時を決め再度話す事に・・・

そして不動産屋で話し合いの当日・・・。

以下かいつまんで記載する。

まず、当事者である大家の娘夫婦が既に不動産屋の一室に待機していた。

とりあえず、マンションでイタズラが横行していて、その事に困ったクライアントが相談してきて調査したコトを伝え、心当たりがあるか尋ねる・・・

普通ならココで謝罪するはずだが、そうではなかった・・・

私も被害者だと懇々と訴える・・・

だが、映像に映っているのはまぎれもなく大家の娘!?

ここで不動産屋の社長が割って入る・・・。

もちろん私より付き合いは長いだろうから、イロイロ知っているはず、

話に耳を傾ける・・・

すると、もう4年前ぐらいからイタズラが横行していて、そのたびに

娘さんから苦情が入っていたらしい・・・。

内容は・・・ドアの異物の付着、周囲の異臭、通路の汚物、壁や床からの騒音等多種多様なものだった・・・

不動産屋曰く・・・今を思えば自作自演だとしたら全てつじつまが合う、と何せ常に大家の娘の周りの部屋でそれが起こっているからだ・・・。

それでも、私は「やっていない」と言い張る・・・

仕方ない・・・私は撮影していた証拠のVを流した・・・

この映像はあなたですね、と確認をとる。

「ハイ」と娘・・・では、と例のピンポンダッシュの映像を見せる・・・

これはあなたですよね?と私・・・「ハイ」・・・と娘

意外にあっさりと認める・・・だがそれ以外はしてないと言い張る・・・

本当ですね?と念押しする私・・・。

確認した上で、異物をドアに付けている映像を見せる。

これもあなたですね?・・・「ハイ」・・・と娘

ここでもあっさりと認める・・・

「!?」ここで私も首をひねった・・・

直感的に統合失調症の一種かも?

と思ったワシはここで質問を変えた・・・

「何故こんな事を?」

すると、「私の部屋にイタズラしたり、文句をいったり、騒音を立てるから!」

やはり・・・

幻聴が聞こえるほどに、この大家の娘の精神状態は崩壊していた。

まあ、もちろん当事者本人には、本当に騒音や誹謗中傷が聞こえたり

するのだから仕方ない・・・

そこで私は・・・

「相当精神的に参ってませんか?」と話の流れで切り出した・・・

会話の途中で大家夫妻が現れた・・・

ここからは家族の問題と思ったワシは、

「ご家族でよく話し合いをされて、その結果をご連絡下さい」

と言い、その場を後にした。

不動産屋から当日に連絡があり、近日中に大家の娘夫婦はマンションから

退去する事となった。

今回は解決に導けたわけだが、近隣住民トラブルは後を断たない・・・

それは、希薄なために複雑で困難な近所付き合いや、人間関係の歪みが生じ、感情のぶつけどころを見失った人々の心の叫びなのかも知れない!

現代社会において、こういった事件の加害者にいつなってもおかしくないと背筋が寒くなった・・・。

END

2005/9/3

探偵業務日誌


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