「スパイVSスパイ」
と言ってもレトロゲームではない・・・
自身マニアがついても不思議ではないぐらいゲームは好きだ。
いまだにバイオハザードだったりメタルギアの最新作やら
はたまたモンスターハンターもやる根っからのゲームファンだ・・・
おっと今回はゲームの話ではなく現実の話だ。
これは数年前、もうすでに私が勝手に塾長なんて名乗り始めた頃・・・
探偵になって探偵社のオーナーになって数年経った時の話である。
そんな探偵としてもお陰さまで順調に依頼をこなしていたある日のコトだ・・・
例のごとく探偵仲間でもあるオトコから
「ちょっと厄介な案件なんだけど手伝ってくれる?」という調査依頼から
この話は始まった・・・
私が今まで尾行・追跡した中でも間違いなくNO1のターゲットであろう・・・
ナニがNO1なのか?
それは、覚知能力・判断能力・危険回避術・対応力がである。
たった1日の調査でワシを震撼させた人物とは?
美人の中国人妻だった・・・
奇妙なミッションの概要だった・・・
いや実際の目的から言えば単純なのだ。
ターゲットの素行・・・
だが、クライアントである夫曰く、
どうやらターゲットは夫に内緒で働いているかも知れないそれが腑に落ちないというのだ・・・
しかも結婚して半年のまだ湯気が見えるほどの新婚だからだ。
納得できるというか悪く解釈するなら、その意思の疎通の無さに腑に落ちないでもない夫婦でもある。
何故ならクライアントは高齢の資産家で前妻とは死別、
再婚のきっかけはテレビ局が取材も行った事がある有名な
高齢者向けお見合いパーティー・・・いわゆる合コンの延長のネルトンパーティーだ。
40代だがかなり美人の中国人・・・これはかなりきな臭くなってきた。
もちろんクライアントも資産目当ての結婚詐欺を懸念しての依頼なのである。
さてそんな前置きもさることながら、
もう一つ厄介な事があった・・・それは・・・。
とは言うもののこれも良くある話だが、
ターゲットである美人妻の事前情報は
依頼者の息子が掴んだモノだというコト・・・
要するに散々尾行した揚句の依頼なのだ。
厄介だ・・・クライアントは当然気付かれてないと言うのだが、
覚知(ターゲットにバレてしまう)されたコトは、
対象者が言ってこない限りは探偵だって、
究極的には知る由もないのである。
かなり警戒している可能性は充分にある・・・
≪調査初日≫
朝自宅からの尾行ではあったが、依頼者の意向もあり、
こちらも注意を払い自宅の付近に潜むのではなく、
ターゲットのいつも通る道を事前に聞き取り、
その通り沿いで張り込む事とした・・・。
だが、やはりこういう時に得てしてイレギュラーな事態は起こるものだ・・・
さて私が現場へ向かって乗っている電車はアト3駅のトコロまでターゲットの最寄り駅に近付いていた・・・
珍しく早く現着した調査員から到着メールと同時に
「もうターゲットが出ました!!!」とクライアントからメールが!!
急いで調査員に連絡して対象者をキャッチさせる。
キャッチしましたとメールが届き一安心
ほどなく別の調査員からもうすぐ駅ですとメールが来た・・・
焦る気持ちがあっても到着は変わらない・・・
乗換案内等モバイルツールを駆使して調べたところ、
奇跡的に私が乗っている電車が最短の到着である・・・
密に連絡を取り合い乗車位置を予測し、
一駅ごとに車両の位置を換えて備える・・・
そして到着した瞬間降りて確認しようとするが、
地方都市とは言え流石にラッシュ時には目視は出来ずそのまま乗り込む・・・。
ここからはまずメールで服装を通知してもらい、
それを確認した後はターゲット下車するまで、
電話を通話状態のまま繋ぎっ放しにしてキャッチする、
そしてY駅にてターゲットは下車、調査員の電話越しの
「今降りました!!、○○の看板辺りを通過改札まで約40メートル」
と言う声の情報を可視化してターゲットと調査員を血眼になって捜す!!
見つけた!
先に見覚えある調査員!そしてその5メートル先に帽子を目深に被ったターゲット!
調査員に「のっけからバタバタじゃねぇーか、捕捉したぞ」
と声をかけターゲットを捉えた事を伝える・・・。
そして追尾を続行する・・・。
ターゲットは改札を通り抜け地下鉄の路線に乗り換える・・・
乗り換えて3つ目の終点で降りる・・・
ココまでは朝のバタバタからは打って変わって非常に落ち着いた尾行だ・・・
何せターゲットの視界にも意識にも調査員である我々はほぼ入っていない事が確信できるからだ・・・。
しかしながら充分距離を取りあくまで気は緩めず尾行を続ける・・・
ココで何故かターゲットは歩行スピードを緩めているのに気付く。
スピードを合わせて進んでいるのだがどんどん距離は縮んで行く・・・
ついにはターゲットと我々が最後尾になりそうなので、
私達は一気にターゲットを追い抜く・・・
そして改札を出て券売機付近に人待ち顔で立つコトにした・・・
エスカレーターで地上にある一か所しかない改札まで距離はあるが
それでも中々調査員もターゲットも現れない・・・
すると携帯電話で通話しながらターゲットが改札を通過し、
程なく調査員も現れ私に向かってトイレと言ってるのを
読唇したのでその行動を気にも留めなかった・・・
さて改札を出て暫く地下道をゆっくりとした足取りでターゲットは歩き始める・・・
直線にして約300メートルはあるだろうか?
非常に尾行がしづらいポイントだ!
突然曲がって階段昇って地上に出て、
建物に入られでもしたら見失ってしまう可能性が高いからだ・・・
かといってラッシュも過ぎて閑散とした地下道を詰めて尾行するのは認識される危険性がある・・・
この距離感は尾行する探偵にとって一番大切な感覚である。
100メートル以上の距離を取り、曲がった瞬間に猛ダッシュ!!
これしかない!・・・暫く追尾してターゲットが曲がる
その瞬間猛ダッシュする私と調査員!!
我々が曲がった瞬間視界に入るはずの距離感なのに、
居ない!!
しかし、階段を駆け足で昇っているハイヒールの音が
カンカンカンカンッと地下街に鳴り響く!
!?急いで階段を駆け上ると駆け上るターゲットを視界にとらえた・・・
スピードを緩め視界から消えないギリギリの距離感で地上へ出る・・・
ターゲットは振り返っていない・・・警戒行動ではないらしい・・・
少しホッとしつつ繁華街へ向かって歩くターゲットの尾行を続ける。
しかしこのターゲットの行動は既に計算され尽くされており、
私達は既に術中にハマっていた事を後々思い知るコトになるのである!
繁華街に入っていくターゲットは少し振り向き、
徐々に不可解な行動をし始める・・・
まずは繁華街のど真ん中にある小さな神社に入っていく、
もちろん躊躇出来ない(通り抜けする可能性がある)のですぐさまアトを追う・・・
そうすると手を合わせターゲットは拝み、
すぐさま振り返って戻ってくる・・・「!」
ここで初めて調査員とターゲットは顔を合わせる事となってしまう・・・
そしてしきりにキョロキョロして携帯片手に会話しながら歩くようになる。
どこか迷っている様子に思える・・・距離を徐々にとり慎重に様子を見る
今度は上を見てキョロキョロしつついくつかの路地を曲がって、
とある雑居ビルに入っていく・・・
私達はあえてスグには近付かず数分たってからビルに様子を見に行く・・・。
そのビルにはパブやスナックが多数テナントとして入っており、
こんな時間に開いている店は無さそうだ・・・が、一つだけ中国輸入雑貨代理店
などというオフィスらしいテナントがある・・・ほぼココに間違いないであろう
エレベーターもそのフロアで停止している・・・
5分ほどその付近で様子を見て、クライアントに報告しようとした矢先
ターゲットがそのビルから出てくるではないか!?
そしてどんどん私に向かって近づいてくる・・・
振り返って逆方向に歩く訳にもいかず、とっさに私はすぐ近くの自販機に硬貨を投入し飲み物を購入する・・・やり過ごすぐらいの時間をかけたが、
なんとターゲットは私の前で立ち止まり「○○町はこの辺ですか?」
と話しかけてくるではないか!
「いやぁ~ココは地元じゃないので分かんないです」
などと当たり障りなく答えた。
が、もちろんこれで私の追尾は不可能になった・・・。
ココからはもう一人の調査員に託すしかない・・・
その場をさりげなく離れターゲットとは逆方向に歩いていき視界から消えて
もう一人の調査員に電話で説明する・・・
離れた場所から調査員は様子を見ていたらしく「警戒行動ですか?」と聞く・・・
「間違いないナ」と私は答えつつ尾行をまかせ近くの喫茶店に待機する・・・
すると程なく調査員から連絡があり、場所が割れたらしい・・・
変装をすませ連絡を受けた場所へ向かう・・・このビルのドコかです・・・
だがまたしても雑居ビルで住居やテナントが混在しているビルで判別が難しい・・・
仕方なくビルの出入り口が見える場所に車両で張り込むコトにする・・・
30分ほどして出てきたターゲットに驚いた・・・
ん?服装が違う・・・
スカートからパンツルックに帽子も脱ぎロングの髪はアップにされている・・・
しかしながらその端正で美人な顔立ちが災いしすぐに認識できた。
さて調査員が降りて追尾して行こうとするが、
すぐさま振り返りこちらへ向かってくる・・・
調査員はそのままやり過ごし、どんどんこちらへ向かってくる・・・
私は運転席にいたが少しずつシートを倒しタヌキ寝入りを決め込もうとした・・・
が、コンコンとガラスを叩かれ目を開けるとターゲットが電話を片手に
ちょっとこのヒトと話して下さい!などと話しかけてくる・・・
「あぁ・・・さっきの・・・どうしました」と冷静にとぼける・・・
それでも携帯電話を無理矢理押しつけて来るので、
「何言ってるの?なんで知らない人と俺が話するの?」と言いつつ
エンジンを掛け話を切り「気持ち悪いから行くよ」と
強引にその場を離れる・・・。
さてここからはまたもう一人の調査員が尾行するが、
アトで聞いた話ではぐるぐる歩き回り最終的にまた雑居ビルに入って行ったという事であった・・・
確実に私がバレてしまっているため別の調査員を手配し、
その雑居ビルに向かわせる・・・
数時間経過し、そのビルのとある料理屋で働いている姿を確認できたという報告を受けた・・・。
さてその帰りも大変だったらしい・・・
さてこの調査で何故私がバレたのか皆目見当が付かなかったのだが、
皆さんは分かったであろうか?
え?ヘボいとかそういうのは抜きですよ…。
さて・・・一体ドコで気付かれたのか?
一つ目のきっかけは駅で最後尾になった事・・・
ここで何人か人物を覚える・・・
地下街から繁華街への階段を上って最初に振り返った時、
ココでも何人か人物を覚える・・・
そして神社に入り振り返った時・・・
この時点で被った人物は尾行者だと確信している訳だ・・・
そして道を聞くふりをして完璧に尾行をガードする・・・
私達が複数で尾行するにはこういった場合でも対処出来るからだ・・・
だが最初の尾行でココまで出来るのは、
余程訓練されている人物でなければ到底出来ない・・・
その後(その後も様々なスパイと裏付ける疑いがあったがココでは書けない)
クライアントは離婚してしまったので、
アノ美人スパイの行方は知る由もない・・・
今も日本のドコかで何かしらの工作活動をしているのであろう。