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キングオブ「結婚できない男」と無駄エロイタリアンをたしなむ【婚活放浪記】
新橋駅改札を抜け、高架下をてくてくと歩いていくと待ち合わせの店が見えてきた。
(おそらくここだ。うん、合ってるな、、うん。
うんうんなるほど)
ガラスの向こう側に漂う高級感。薄暗い店内を青い照明がところどころ照らしている。
スタッフは無駄に美男美女しかいない
絵も言われぬオトナ〜なお店。
....そう、ハッキリ言ってドエロである。
「佐藤で予約なんですが、、、」
「はいお待ちしていました。2階へどうぞ」
さて2階に上がってみるとひとっこひとりいないではないか!!!!罠か!?!!!!
「お待ちしておりました」
無駄に美しい女性スタッフが話しかけてくる。罠確定だ。
そして無駄美女はわたしを壁の前に誘導した。
???と思っていたら、無駄美女が壁をノックする。どうやらわたしが壁だと思っていたものは引き戸だったようだ。
そう、わたしが案内されたのは個室席だったのである。
キエーーーーー!!
こんなドエロの店のさらに個室ときたら、きっと中身は飲食店などではないはずなのだ。なんか千と千尋の神隠しみたいな気持ちになってきた。
はあ....あたくしはこれから親の借金のカタに身を売られるんだ....さよなら.....
恐怖のドアが開く。
そこには佐藤(42)がごく普通に座っていた。
そしてごく普通にシルバーとナプキンがセッティングされている。ありがたいことにごく普通に飲食店、そしてごく普通の成人男性だった。
「あーはじめましてーー」
「あーーはじめましてーーー」
婚活放浪第4回戦、無事開幕である。
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「一体なんなんですかこの店は!!!」
取り急ぎ佐藤を問い詰めた。
こっちは親の借金のカタで身売りさせられる寸前だったんだぞ!それはともかく予約までしてもらっておいてまじ失礼である。それと15秒前に会ったばかりだ。
「いやーーーーそっちかーーーー」
なぜか悶絶しはじめる佐藤。
「新橋って言われて、どっちかなと思ったんですよ。でもきっと平井さんインテリっぽいかんじだろうなって思って、さすがに大衆酒場なんか連れてけないからでもじゃあどこだって、めちゃくちゃ悩んで!!!いやーーーそっちかーーーー」
どっちなんだ。
しかし親の借金問題が解決した今のわたしにとって店の雰囲気などもうなんでもいい。
飲食店っつーのは食べ物が出てくる、それがすべてだ。
佐藤よ、何も気にすることなかれ。気にさせたのわたしだけど
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黒髪の知的な女性が来ると想像していたという佐藤はわたしを前に「なんか違う、、、」と終始苦しんでいた。
「平井さんは俺の友達の太郎ってヤツになんか似てます。高校の時の同級生なんですけどオウム真理教に入ってそれから音信不通で....」
そう言われてしまうと太郎の現在が気にかかる。絶対幸せでいてくれ。
「さてさて、佐藤はどんな女性がタイプなんですか?」
「巨乳です!」
パーフェクトアンサー。爽快である。
佐藤、それは最高の男。
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「あとモラルっていうか、善悪の感覚が近い人がいいですね。」
巨乳の後にもう何を言っても無駄だが念のため深掘りしておく。
「佐藤にとって悪ってなんですか?」
「道にポイ捨てとか」
「なるほど、、、わたしは道で痰を吐くときアスファルトじゃなくて植木とかに吐きますよ!」
「それは良い!!アスファルトはダメです!」
「わかるわかる」
善悪の基準ピッタリコンビ爆誕である。
実は自転車走行中に限りアスファルトにも痰を吐いてるがさすがにそれは内緒にしておいた。
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「俺3年前、結婚しよう!と思った日がありまして」
「ほう」
「誕生日だったんですよ俺の。当時の彼女が赤坂のめちゃくちゃいいフレンチ予約してくれて、そんでその日がちょうど皆既月食でね、、、」
「皆既月食」
「皆既月食ですよ!!そんな月を見ながら俺、幸せだなって。この子と結婚しようって。」
「お〜!!!!」
「でそのあと俺がふざけて彼女におっぱい小さいねって言ったら彼女怒って店飛び出しちゃって」
なるほど
「俺の誕生日なのになんでこんなことになってんだ!!って俺も怒っちゃって、そのまま別れることになりました」
なんかとりあえず最高である。
わたし以上に結婚できなそうな人間だ。
「あ、この話もnoteに書くんですよね?偽名どうしようかな。(長考)ん〜佐藤?佐藤にしよう。....あ、ゴンザレスとかはどうですか?」
佐藤さん(仮名※本人指定)、申し訳ありませんがゴンザレスは割愛してお送りしております。
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ふたりして結構酒を飲んだ。
わたしは人の話の内容をすぐ忘れちゃうところがある。酒なんか飲んでればなおさらだ。
この日のわたしは急にリスク管理能力が身についたのか、絶対覚えておくべきことを携帯にメモしていたらしく、それが後日発見された
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いやまじ無駄〜〜!!!!!!
佐藤ゴンザレスについてもしっかりメモってるところをみるとわたしも意外と人の意見を尊重しようっていう心意気のある人間なんだなと窺える。また自分の長所を発見してしまった。
あとはおそらく佐藤からのアドバイスをメモしたと記憶しているが、公衆トイレのノズルを凝視してるやつなんてまず見たことがない。
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佐藤の情報でひとつ追記がある。
佐藤は怖い話が信じられないくらい苦手なのだ。
「平井さんの趣味ってなんですか?」
「都市伝説とゆるキャラです」
「怖い怖い!!!やめて!!!!」
早すぎる。たぶんゆるキャラの部分とか全く聞こえてなかったとおもう。
しかし本人は全くふざけておらず、本気だ。
「うわ!佐藤!後ろになんか影が」
「やめてやめてやめて!!!」
これが妙齢独身男女らの逢瀬。
一体なぜこんなことになってしまったのだろう。
本当に最後の最後にもう一点だけ言わせてもらう。
佐藤はベッカムが好きだ。
笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑
なんかいいよね笑
佐藤、結婚なんかしなくてもあんたは最高だよ。
佐藤とは駅で解散となり、わたしはチェッカーズを熱唱しながら帰った。
婚活放浪記は続く