第(+)一回偽物川小説大賞 結果発表

蕎麦食ったか!
大掃除したか!
年賀状書いたか!

というわけで年内滑り込みに成功した偽物川小説大賞、発表のお時間でございます。
ちなみにきょうじゅは蕎麦食う以外やってません。

さっそくですが、まず大賞の発表から参ります。

どぅるるるるるるる(自前ドラムロール)
でーん

栄えある第一回偽物川小説大賞、大賞受賞作は!

鍋島小骨さん 作
『弁天島カイレル良子の未来予知』になります!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054890074235

どんどんどんどんぱーふーぱーふー

続いて、金賞の発表に参ります。

『サマー・オヴ・オウルズ』
藤原埼玉さんの作品です!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892619411

どんどんぱふーぱふー

さらに銀賞二本!

『猫を被る猫』
作者 五三六P・二四三・渡さん
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893246549

この世界が終わるまで〜Honey Beeの世界〜
作者 青瓢箪さん
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892021723

以上二本です!

おめでとうございましたー!


では次に、各作品に対する審査員三名からの各講評となります。

■各作品講評

終わりの国のアリス
作者 千石京二
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892011114

教:じっくりと丁寧に書かれた恋と愛のおはなし。タイムループ&世界の終わりという、それ自体はまあそれなりによくある着想なのですが、それと主人公側のキャラクター構築とのマッチング、いわば調理の仕方が上手くいっていて、これは佳作以上の仕上がりです。閉じた世界の中の閉ざされた恋人たちの物語なんですけど、それでいて読後感は悪くない。千石さんの作品は初期から見続けていますが、これだけのものを書けるようになったというのは本当に成長を感じます。

巨:『時を超えるAI』 
終末を迎える地球の中でアンドロイドの女性と生きる博士の物語。
導入からして興味をそそる二人の関係で、三話で恋愛も物語も急加速し、博士の焦りやアリスの愛情が溢れ出て止まらなくなる良い人外女性作品でした。
時間に囚われてしまった博士がどうやって終末や時間遡行を解決するのか気になりましたが、恋愛がメインなのでそこは考え無くてもいいのかも。
次は恋愛中級と一緒に性的快感を司る感覚データチップも買いましょう。そうしましょう。アンドロイドなので八兆点。

刑:自作なのであまり語るのもおかしいとは思うのですが、硬めの文体と硬めのセリフ、そして世界観がうまく噛み合った作品だと思っています。「世界の終わり」というお題についてうまく消化しきれていない感は否めないです。ループしてますし。でも、それよりも博士とアリスの愛というか、不器用なコミュニケーションというか、そういうところは上手に描けた気でいます。感情がわからないアンドロイド女性、いいですよね。


血と灰のヴァイス
作者 千石京二
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892076388

教: 千石さんの普段の作風に比しては珍しい、ハードボイルド異世界ファンタジーの一編。多分こういうのは書き慣れていないだろうと思うんだけど、その割には骨太で重厚な筆致に感心させられました。推測で書きますが、「邪悪なるもの」のテーマとしての処理も単に「敵がそういう名前で呼ばれている」ということだけじゃなくて、主人公自身と、並びに数字で呼ばれるその魔術的伴侶のやっていることが「邪悪」なのではないかと言う疑問に浸してある感じがして、高度な筆さばきだったと思います。

巨:『弱くも強い、葬る為の火の意志』
しょっぱなからキツイ展開で進み、娘パートでは希望が見えるも父親パートは基本的に重い。めっちゃ重い。でもだからこそ娘のこれからが救いになるお話。
人類を侵略する謎の生命体はSFではお約束ですが、それを魔法のあるファンタジーの世界に持ってくるのがなるほどなと思いました。
娘の浮遊魔術と父親の転移魔術が五属性に縛られていない部分と、娘がヴァイスから産まれた部分がもっと話を広げれる可能性がありそうな感じです。
レギュレーションに合わせて2万字弱で綺麗にまとまってますけど、もっと文字数増やしていける設定だと思う。この話を導入部にして娘が主人公のメインストーリーが始まるとか。

刑:これも自作なのであんまり語るのはあれですが、やっぱり「邪悪なるもの」のお題消化が難しかったですね……邪悪の概念というかただのゾンビ感が否めないです。ファンタジー小説は書き慣れないので、精一杯やってはみたのですがまだ粗が目立ちますね。中二病感を出し過ぎてスベった印象も強い。でも、悲壮な世界の中で、守りたいもののために戦い続ける男の背中というものを描けたところは気に入っています。ラストも悲しくなりすぎずに落とせました、個人的には、いろいろ勉強になった作品だと思います。


閨怨の夢
作者 武州の念者
https://kakuyomu.jp/works/1177354054890898458

教:文体の完成度と世界観の構築度合いはとても高水準にまとまっている。全体的には好印象な作品でした。ただ、主人公が切り替わるあたりがちょっと唐突なのと、切り替わったあとの描写が駆け足になるのが惜しかったかな。せっかく字数には余裕があるのでもっと弟の人物像なりバトル描写なりを膨らませるか、あるいは逆に、そうしたくないのであれば「もっと駆け足」にして後半はばっさり簡潔に終わらせた方がすっきりしたと思う。

巨:『閉じられた輪と後庭の中で』
お、金持ちオッサンとイケメンショタの死○物か? と思いきや、金持ち側も美男子という欲張り仕様。その欲望、Yesだね。
大まかな内容はループ物とその解決。肛門で遊んではいけませんとよく言うけれど、僅か十二歳の前髪パッツンイケメンショタの魅力には勝てなかったよ。
割と強引な展開でクライマックスに行きますが、故事だとよくある事だよなって感じで全然違和感が無いです。こういう部分は武州の念者さんめちゃくちゃ上手いですよね。そしてショタがエロい。いけない道に目覚めそう。

刑:閏怨(けいえん)という言葉もまず初めて聞いたくらいの読者ですので、読み始めは「難しいなあ」という印象が強かったです。分からない言葉はググりつつ読みました。強度のある歴史小説という感じ……男性同士のエロスもありますしね。正直第一印象はとっつきにくかったのですが、麗暉を助けたい一心で時間遡行を繰り返す魏恵国の深い愛と、それが報われなかった時の身を切られるような苦しさ、そして作品の所々に挟まれる漢詩の味わい深さが、自然と胸にすとんと落ちました。オチは悪い存在が倒されるシンプルなものですが、ひねりがないところが逆にいい味を出していました。勧善懲悪ものというほどの派手さはないのですが、最初のとっつきにくさを越えれば逆に読みやすくて分かりやすい、いいお話だったと思います。深い兄弟愛が描かれていたところも胸にしみました。


赤い魔物と魔法使い
作者 こむらさき
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892000032

教:割合がっしりとした筆致で書かれたファンタジー。封印された魔物(人外・女性)を目覚めさせた主人公が、その魔物との触れ合いの中で自分を見つめ直していく……と言った感じですね。ただ、主人公はいいんだけどライバルというか仇役というか、のポジションにいるルーカというキャラクターの行動の動機や目的が読む側に伝わってこなくて、いまいち疑問符の残る場面が多かった。1ウィズ1、かける2でほぼ構成されている物語である都合上、そこはしっかり描写した方が話がもっとキュッと締まったんじゃないかな。落ちはまあ悪くないと思います。

巨:『夕日に誓う赤い約束』
不良魔法使いと封印された魔物といけすかない金髪エリートとの学園物魔法バトル。
妖精が出たり髪の毛が魔力の源になったり魔物の真の姿が人外だったりと、こむらさきさんのお得意(勝手に得意だと思ってる)のファンタジー要素たっぷりで流石という感じ。巨乳も出るから俺に良し皆んなに良し全てに良し。下半身が怪物でも巨乳ですよ!?
師匠が居なくなった理由や記憶を失っていた事の補足は文字数が足りなかったのかなと思いますが、短編なら全然大丈夫。フィーリングでなんとなく分かります。
不良やんちゃボーイが大人の女性に手玉にされるかと思いきや、純粋な言葉で一矢報いてやるのっていいですよね。人外巨乳なので十億点。

刑:正統派ファンタジーという感じです。何より世界観が強い。魔法とか、魔力の込められたアイテムとか、呪文とか、妖精たちの語る言葉(英語でもないし何語なんだろう、作者さんの造語?)とか、そういう細かいところまでギミックが凝らされています。そういう細かいところまで描くと、ストーリーがおざなりになりがちなんですけど全然そんなことはなくて、主人公のキャラ造形がよく出来ているなと思いました。めんどくさがりで、うまくいかない日常にうんざりしているという、手の届きやすいイメージ像なので感情移入しやすいですね。もちろん魔法によるバトルシーンも見どころなのですが、フィールとクフェアの淡い恋というか、作中ではくっつきそうでくっつかない……と見せかけて最後! ラブ! みたいな盛り上げ方が良かったです。読み応えのある正統派ファンタジーラブ、人外女性の可愛らしさと強さ、見どころ盛りだくさんの満足セット。よかったです。


EIM計画の実験とその顛末
作者 白里りこ
https://kakuyomu.jp/works/1177354054891695997

教: SFですね。SFです。はじめ、大勢の能力者的なキャラクターが大勢出てくるんだけどいきなり大勢死んでしまうあたりで、計画の杜撰さなどに危機感を抱きつつ、それはいいとして、記憶を失っている主人公が何者なのか、という問題が大きなテーゼとして投げかけられる。その問題に対する答えはきちっと出されて、物語全体に一つの解決を見て結末が示される。この文字数であることを考えれば、いちおう綺麗にまとめてはあると思う。ただ、ちょっと言及するのも憚られるようなポリティカルにインコレクトな主題が扱われているため、正直賞とかに推すのは躊躇われてしまうのが痛いところ。まあそこが「邪悪なるもの」たるゆえんなのでしょうが。

巨:『与えられた情報だけで全てを信じてはいけない』
一人称で淡々と物語が進むのと実験の細かい説明が無いので一度読んだだけでは「あれ?」と思うことがありますが、読み終わってから最初に戻って読み直して色々と分かってきました。というかタグに書いてありましたね。
仲間があっさりと死んでいくのも主人公がそういう性格だから描写があっさりとしている感じなので、『その人が知っている情報や覚えた感情しか出てこない』という一人称の小説としては完璧なんじゃないかと思います。
読み終わってから読者同士で色々と考察をして楽しむタイプの作品なので自分は好きなのですが、人によっては『親切じゃない』って感じる人も居るかも。でも、刺さる人には刺さるので刺さる人は大好物。
とりあえずミュータントの人達はぴっちりタイツ着ててほしいですね。

刑:うーん、これはなかなか講評するのが難しい作品です。アメリカの移民問題という難しいテーマを扱っているというのもあるのですが、人体実験でミュータントを作っているお話……みたいな主題に対して、そのあたりの描写が結構淡白ですよね。一行くらいであっさり人が死んでしまう。人体実験のお話に抵抗があったわけではなくて、むしろそういう発想は好きなのですが、だからこそもう少し丁寧に描いて欲しかった感がありますね。発想はすごくいいです、実験体の一人が実は……というのもとても意外性があってよかったので、もう少し深掘りして描いて欲しかったとは思います。切ないオチもいい読み味でした。あれで救われたら、それはそれで少し「えー?」となってしまうと思うので、いいラストだったと思います。


サマー・オヴ・オウルズ
作者 藤原埼玉
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892619411

教: 吸血鬼に処女はマジヤバイ。路上で柔道くらいヤバイ。心臓撃ち抜かれました。完全に趣味嗜好の問題であり、小説としての巧緻を評価してのことではないのですが(別にこの小説が下手だと言ってるわけじゃないよ)、銀の弾丸で心臓を撃ち抜かれたので(それは狼男の倒し方だがその辺はまあ気にするな)この作品に一票を投じることを読んでる途中で決意。それくらい俺のツボ。まあ作品としても、登場人物の配置、物語の流れ、おおむね過不足なく綺麗にまとまっていると思います。最後に出てくる某組織の出現がまあ唐突ではあるんだけど、落ちのためには必要だからああせざるを得ないだろうと思うし。ちなみに、結末は俺の予想(そして、俺ならこう書くと言う種類の話)とは違っていましたが、これはこれで好物なので別にいいです。

巨:『人に寄り添うウィンプヴァンプ』
貧民街で真面目に医者をしている変わり者吸血鬼と、その助手で元奴隷のめっちゃ美人な処女の二人の危険な物語。本当に色々と危険。気を抜くとエロさにやられる。
魔物が存在するifのロンドンというのがいいですね。吸血鬼が居ても違和感が無いし、最後に王立騎士団特務課への協力と所属という救いが自然に入ってきました。
医者で吸血鬼で実は強くて奴隷少女で高貴なる魂で父と娘と恋人と姉と父親と俺とお前とエセエクソシストとうさんくさい中国人とち○このメタファー。こんだけ詰め込まれた贅沢パックを嫌いな人なんていないでしょ。コメントでも言われていますが続きが読みたいです。本連載はまだですか?レギアス先生とは対話はしなくなったけど手紙でやりとりする仲ぐらいには戻るんですよね?レティシャが男とデートしているのを見かけてしまってショックを受けるクライドパパとかあるんですよね?そうですよね?ね?

刑:これ、すごい……すごくわたしの趣味に合致していて、アップされてすぐに一気読みしてしまいました。審査員やってる立場上、あんまり一つの作品に対して長々と「よい!!」というレビューをつけるわけにもいきませんから、講評のこの場が来るまでずっと待ってました。そのくらい好きです。「人に紛れて暮らしている医師の吸血鬼」というだけでだいぶ好きって感じですし、好きなシーンをあげればキリがないのですが、一つシーンをあげるとするなら、クライドがレティシャを奴隷市場で買うシーンがすごく良くて。売られる少女、少女に当てられるスポットライト、そこにやってくる一匹の蛾。レティシャはその蛾をそっと払いのけるんですが、虫が嫌い、というシーンではないですよね。あくまで「ここにいたらダメだよ、お逃げ」みたいな優しい払いのけ方。レティシャと蛾の一種の共生のように見えなくもなくて、それが作品ラストのクライドとレティシャの関係性を示唆しているようにも思えるんですよね。いや、すみません。ほんとうまく言えなくて申し訳ないんですけど、レティシャが蛾に向けた優しさとクライドに向けた優しさが重なって見えるというか。全体的に優しいお話ですよね。少女を吸血姫(ドラキュリーナ)にしたくないから吸血を我慢する吸血鬼も、その彼の苦しみを理解しようとして泣く少女も。あとは吸血鬼のつらい過去があり、そのつらさはなくならないけど、洗い流そうとしてくれる少女の涙も。何もかもが優しくて、じんわりきました。ロンドンの貧民街や魔物が跋扈する森の描写も真に迫っていて、読み応えはあるのに読みやすい、非常にいい作品でした。好き。


青白のフリンケンス=ティーン
作者 深恵 遊子
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892637061

教: なかなか表現力に富んだ出だしから始まって、全体に興味深く読ませていただきました。崩壊後の世界で、いわゆる「文明を維持している感じの部分」があって、しかしそこから追放されて崩壊しちゃってるフィールドに放り出される。一つの王道ですね。悪魔と呼ばれるキャラクターと主人公との掛け合いがよく書けていて、なかなか面白かったです。難点を挙げるならば、おそらく2万5000字の制限内では土台処理しきれない設定の組み上げすぎからくる、未解決プロットや投げっぱなし的描写などの問題ですね(特に、結末)。突然最後の最後で国の名前とか出すよりは、もうちょっとふんわり落とした方が綺麗だったんじゃないかと思います。

巨:『追放者達(悪魔、サイボーグ、亜人)』
都会で暮らしていた主人公が物理的常識外の化け物に変異した人が暮らす未開の地に落とされる話。なんですが、人間と亜人の話かと思いきや主人公は半分が機械のサイボーグという良い意味での裏切りがかなり良かったです。ファンタジーとSFの極端な文明の差萌えは性癖の一つ。
めっちゃくちゃ面白い。面白さを説明してもいいけど説明読むぐらいなら先に本文読んで?そしてめっちゃくちゃ面白いからこそ未完なのが『マジで?いくら払えば本連載開始するの???』ってなる。自分もよくやるんですが、字数制限ある短編で『物語はこれからだ』みたいな事をすると読者がかなりやきもきしますねこれ。

刑:ジャンルでいうとディストピアSFっていうんでしょうか、こういうの。機械と魔法みたいなファンタジーがいい感じに混ざり合った世界観で、不思議な読み味ですね。あとたぶん作者さんは物理とかそのへんに強そうですね。建物が崩れる描写や、六本足の機械が襲ってくるシーンでその物理ぢからみたいなものを感じました。そういう、物語を支える強いバックボーンがあるので、カイ・トーマと、どこか憎めない「悪魔」の飄々としたやりとりもよりリアリティも持って迫ってくるみたいな感があります。なんかその……村社会っていうと近代とは少し違う世界観なのですが、そこにメカニックの要素が混じっていることにより新しいビックバンが起きてるみたいな……不思議な……不思議な作品でした。なんて言えばいいんだろう。すごく面白かったし、物語がものすごく続きが気になるところで終わるので、カイのその後が読みたくなる作品なんですけど、それ以上に「不思議」が強い作品です。よいです。


弁天島カイレル良子の未来予知
作者 鍋島小骨
https://kakuyomu.jp/works/1177354054890074235

教: 正直に言いましょう。草野球の大会を企画したらなんか引退したメジャーリーガーが参加を申し出てきて、それと知らずに適当にライト守ってもらったらレーザービーム決めて観衆をビビらせた上にその裏でソロホームランを場外までかっ飛ばされた、みたいな気分を今味わっています。ちょうど、読み終えたところです。えー、何を言ったらいいんでしょうね。あまり深く考えもせずにお題を三つ出すという企画を主催したのはこの俺であるわけですが、それを三題噺的に三つとも読み込んでくるというのはあまり珍しくもないとして、マジで三つのお題が三つとも「完璧」に処理されている上に小説としても面白く、文章力もパないので腰を抜かしました。ていうかこれ、無料?無料で読んでいいの?後で請求書が来たりしない?とか言いたくなるレベル。タイトルがトンチキなのでそこで食わず嫌いの敬遠をする方も多いかと思いますが、この文章を読んだあなた、騙されたと思って読んでください。そんなに格別長くはないから、全部。はらたいらさんに全部。って古いな。さて。もうちょっとちゃんと、作品の内容に対する講評的なことを書きましょう。物語構造がいわゆる、セカイ系であることは途中でなんとなく分かるわけです。といっても、『涼宮ハルヒ』ではなく『Holy Brownie』の路線(もっとメジャーな分類名もあるのだろうけど俺がホーリーブラウニーしか知らんのでこう表現します)なわけであるが、そこまでの無駄のないギャグ描写と、ネタのひっくり返しからの急転直下の伏線回収やキャラクター造形が、どれも非常に高い水準でまとめられている。というわけで、良いです。もっかい言うが読んでない奴は読め。トラックに跳ねられたような気分になったぞ、俺は。そして感動したし、この企画を立てて良かったという感慨も得られた。

巨:『二人の為の世界』
面倒くさい友人と過激なSNSで語られるコメディチックな世界崩壊物。でも実は全てがお話の中の出来事であり、中々に雑で『ド下手クソ』(※この作品がド下手クソという意味ではない)
短編として完成度が高く、途中から関係性は変わらないのに内容がガラリと変わるのが良いですね。何回も読み直す楽しみもあります。そしてめっちゃ百合。薔薇が生えてたけど百合。
話が壮大なんですが結局は百合なので二人以外の物は全部オマケってのがマジで百合オブ百合。何人死のうがノーカン。二人が居ればそれでいい。神様なんかクソ喰らえ!!
全部終わってから事後に『ド下手クソ』と言われちゃうのがほんと好きなんですよ。好きすぎて牛《ぐう》すき焼き御膳になってしまいますわ。人外百合なので三億点。

刑:強い。
強いですね。
強すぎる。
大事なことなので三回言いました。文体も強いというか、わりと癖のあるタイプの作品だとは思うのですが、そこもいい。「友人がカルト宗教にハマっていて世界の終わりを語り出す、どうやら棺に入った女だけが生き残るらしい」という導入だけで充分強度がありますし、なんならその路線で耽美な百合に走っても完成すると思うのですが、その、強固な地盤の上に六本木ヒルズ建ててスカイツリー乗せて、それでも崩れないみたいな強すぎる世界観です。世界の終わりが囁かれ始めた世界の恐慌の描写も細かく、リアリティがあります。
でもそこじゃあないんですよねえ。
そこまでで充分強いのに、そこにヒルズ建てちゃうように見えるのは、読者に見せていた世界感が、果てしなく広い作品世界のほんの一部でしかないということがわかってからです。ここからは未読の読者の皆様にこの衝撃を味わって欲しいから講評しない……わけにもいかないのでネタバレとなります。
たった一人の悪魔を滅ぼすために終わり続ける世界、悪魔は人の手によってしか殺されないから世界を作りなおすしかなくて、何度やっても殺せない天使、邪悪な悪魔とどうしても殺せない天使……本当に? 邪悪なのは悪魔だけですか? という。何食べてたらこんな設定思いつくんでしょう、いやーすごい。すごいものを読ませてもらいました、この作品に出会えてほんとうに良かった。そのくらい面白かったです。「おまえは私に◯◯◯◯◯◯◯◯」の台詞がすごく好きなので、ここでは言わずにおきます。読んでね。


悪夢と触手と嘘と愛
作者 王星遥、或いは濃茶
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893121148

教:ありていに言いますと俺は恋愛小説、特に百合ものは専門外です。ですがこれはするすると読めたし、ちゃんと面白かった。物語の構造そのものは非常にシンプルです。登場人物は二人、導入は「謎めいた悪夢」。悪夢を見るようになったが、それは何故なのかという謎解きの形で物語は進んで行き、そして、片方の少女の意外な(そしてスケールのでかい)正体が明らかになり……と言った感じ。題解きとしては「人外女性」が「邪悪なるもの」である、という構造なんだけど、単純に「本人が邪悪なんじゃなくて、人外女性と邪悪なる者の間にある精神的葛藤」が書かれていて、それが物語全体の動機付けをうまく活かしていて良かったと思う。「邪悪なるもの」の登場がちょっとだけ突拍子もない感じはするかなとは思ったけど、まあそれもこの作品の味でしょう。

巨:『名伏しがたき純情な感情』
文芸部(廃部済み)のダウナー系先輩と、自分を産み出した化け物に逆らって生きる精一杯小悪魔系後輩のコズミックホラー百合。
放課後の部室で二人きりなんて何か間違いが起きるに決まってんじゃん?それが万能触手の生えた女の子による夢への侵入だなんて、それだけでご飯が三杯はいける。部室での会話の主導権は後輩にあるのに精神的な強さは先輩の勝ちなのいいですね。ご飯おかわり下さい。大盛りで。
二人の関係が進んだ後に奥手な後輩ちゃんがどんなぬるぬるな情欲を夢で先輩にぶつけるかが楽しみです。触手のヘタレ攻め超見てぇ。触手百合なので七億点。

刑:掴みがすごい。触手に捕まってる主人公。インパクトがものすごいです。もしやこのままグロ小説になってしまうのでは、なんて危惧も出ますがそうではなくて良かったです。文体はシンプルで読みやすい。洗練されている感じですね。あと登場人物のセリフが中性的で可愛いですね。「〜なのかい」と言う女子高生が可愛いので個人的にツボです。わたし、ラヴクラフト神話は全部読みましたが結構疎くて、全然分からないのですがそれでも大丈夫なくらいのほんのりラヴクラフトもの、という感じ。
でも百合強度は高めです。自分は化け物だから、先輩を不幸にしたくないから、傷つけたくないから、その思いで出会いをなかったことにしようとする新楽は健気で、泣いている小さい背中がありありと思い浮かんで、そしてそこで一悶着あってから主人公が言うセリフ。実に力強い。「最初から両思いで〜」のあたりのセリフ、すごく好きです。キュンキュンさせてもらいました。可愛くて強くてかっこいい女の子ぢから賞をあげたい。「つまり、新楽瑠璃は人間である」というコピーも良くて、人間なんですよね、恋してるから人間なんですよ。触手あるけど。


猫を被る猫
作者 五三六P・二四三・渡
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893246549

教:いい意味でも悪い意味でもスケールのでかい作品でした。二万五千字制限の限界ぎりぎりまで書いているとはいえそれでもよくもまあこの文字数にこれだけの世界観と筋書きを詰め込んだものだと思います。話自体は、カテゴリは歴史・時代とされていますが、まあファンタジーですね。和風ファンタジー、妖怪ものというやつです。物語の中核をなすのは行方不明になった一匹の猫をめぐる謎の追求ですが、その部分の着地点はなんというか正直……変化球が過ぎてボール球になっている感があります。でも、面白くなかったか面白かったかで言えば面白いんですよね。そのへんが評価の難しいところです。

巨:『我々は猫である。人に化ける故に』
化け猫の少女達が人と関わり生きていくモダンな昭和の話。
小説家と猫というゴールデンコンビな関係から、プリンアラモードを食べて変化が解けかけるミッション系少女達。そして三味線とかけおちを巡る事件と京都の妖怪と人間の喧嘩祭り。
色々詰め込みながらも完成度が高く、五三六Pさんの様々な要素を作品世界の雰囲気に調整して落とし込む手腕が流石です。人外百合なので三億点。
人の世に化け物が居るのが当たり前の世界ですけど、警察達が対抗する力を持っていたり破壊僧がめっちゃ強かったりと、なんだかんだで人間が強いというのが彼女達が人に化ける理由なのかもしれない。人は強い。そして、人になろうとする者も強い。
ところで、お姉様にちゅーるを食べさせたら余りのおいしさに変化が解けてしまったりするのでしょうか?私、気になりますわ。

刑:タイトルから内容が想像しにくい感じだったんですが、読み始めたら一気に世界観に引きずり込まれた作品です。世界観がいい。化け猫が書いた小説という体裁でお話が進み、化け猫同士で女学生ごっこをするシーンが微笑ましい。こういう小ネタというか、可愛らしいワンシーンをたくさん思いつける作家さんは強いと思います。物語に厚みが出ます。「猫牧場」のくだりではちょっと怖いお話になるのかな、とは思いましたが、まさかそこから始まる妖怪大戦争。つよい。象に化ける猫、虎に化ける猫、「隔離結界を張ろうとする神道系の警察官」。すごい。和風バトルって剣や魔法バトルよりも書くのに小説ぢからが要る気がしますが、さらりと読みやすく描かれていて筆力を感じました。なんかその……女学生ごっこの一見ゆりゆりしいシーンからのミステリー要素、和風バトル、そして最後に詰められた情感まで、一気に読ませるというか、目まぐるしい。否定的な意味ではなく、目まぐるしさが万華鏡のような小説だと思いました。絢爛豪華、美麗な挿し絵付きで読みたい作品です。オチでタイトルの意味が分かり、すっとする思いと、しんみりする思いが両方あり、とてもよかったです。


世界の端をめくるとき
作者 雪風
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893246556

教: いわゆる一つの不条理系ホラーですね。いちおうクトゥルーの神々の名前が出てきたりはしますが、フレーバー的な処理に留まっていて、全体的にコズミックホラーではあるものの「現代ファンタジー」的なそれではなく、確かにこれはホラーとして仕上げられた作品です。作品全体を俯瞰したときに一つ足らないなと感じるのは、主人公の行動の動機付けとそこからのストーリー展開の流れですね。いかんせん、割と安直に宇宙的恐怖への落とし穴に転落してそこで世界が破綻してしまう感じなので、コズミックホラーというのはそういうものだと言えばそれまでのことではあるんですが、そこがうまく書かれているともうちょっと全体が締まった感じになったのではないかと思います。

巨:『世界を覗く者、これより一切の可能性を棄てよ』
大学生の青年が大学生特有の楽観的な考えから取り返しの付かない事に手を出してハマってしまうコズミックホラー。名伏しがたき存在が出ているので⇔※♂◉Å点。
段ボールに詰めた本ってめちゃくちゃ重いですよね、自分も引っ越しの最中なので実感してます。まさか世界の端を押さえつけて引っ張ってしまう程のの重さがあるとは…
クトゥルフ関連らしく救われない話なのでそこは全然良いのですが、後輩の女の子二人との接触が後半はほぼ無かったのが勿体無いかなと思いました。
二人ともキャラが立っていてバックストーリーがありそうな感じだったので、最後に消えた先輩を探して家まで来て穴を見つけてしまうとかの更なるホラー展開に使えそうだなって。
それと、ファービーたんにセクハラしたらどうなるのかとても気になりますねぇ。なんだかんだで人間が好きなファービーたんだし、途中までは許してくれそう。

刑:「世界の終わり」というお題を、「世界の終焉」ではなく、「世界の終着点」と解題したお話といえばいいのでしょうか。ちょっと説明が難しいのですが、endには「終末」という意味も「端」という意味も両方あるようです。大学の教科書を取り出そうと、押し入れを探っているときに「世界の端」を見つけてしまう主人公。この発想はなかなか出ないと思います。つよい。そこで不思議な女性(ではない)に話しかけられて、物語が始まります。
淡々とした文体とSF世界観がいい感じにマッチしています。ちょっと説明的ではあるかもしれませんが、読みやすいのでそこまで気になりません。
未来が見えてしまう、未来は見た時点で確定してしまう、この発想はすごくよかったです。でも、欲を言えばもう一捻り欲しかった。そこまでがすごく良いだけに物足りなさを感じてしまいました。階段から落ちた後輩を助けに行くとか、あるいは辛くも運命から逃れた後輩が、主人公の最後のピンチに駆けつけるとか。そのようなオチがあっても良い気がしました。でも、こういうのってコズミックホラー的ではあるんですよね。クトゥルフ小説でもあるところがこの小説の面白いところでもあるのですが、最後どうにもならずに超次元的存在にやっつけられて怖さだけ残るというオチは、ラヴクラフト的といえばそのようにも見えます。なんだか厳しいことを言ってしまったような気がしますが、コズミックホラーとしてよくできた、面白い作品でした。


この世界が終わるまで〜Honey Beeの世界〜
作者 青瓢箪
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892021723

教:うーん。何て言ったらいいんだろう。読んで、面白かったか面白くなかったかでいえば面白かったと思う。勉強になったし、よく調べて書かれたものなんだろうなということも分かる。ただ、いかんせん、根底に関わる問題だからこれを否定すると作品自体を否定するに等しくなっちゃうんだけど、「動物の擬人化」というアプローチそれ自体が、何と言いますか、今回掲げた三つのテーマを消化するにはあまり向いていなかったと思う。しかし、かといってもっとあからさまに「フィクション」的な、物語性のある方向に舵を切るとコンセプトが変わってしまうしなあ。

巨:『自分が出来ることを、精一杯に』
語り手が命を終えながらバトンタッチして続いていく、蜂の生態とその終わりまでの一年を表したお話。教育用の教材にも使える程の高い完成度。完璧。
百合的な場面もおねショタな場面も蜂の生態だからセーフ。漫画にしたら蜜集めのシーンだけでもめっちゃエロくなりそうだけど、これは小説だからセーフなんですよ、セーフ。でも挿絵があったらめちゃくちゃ見たい。絶対エロい。
邪悪なるもの、人外女性、世界の終わりというテーマの落とし込みも上手く、このまま国語の教科書に載せていいレベル。全国の小学生の性癖を弄びましょう!

刑:人外女性、擬人化でミツバチを扱い、さらに「世界の終わり」というお題をハチの巣の消滅という形で描いた、斬新な発想の作品です。生物学的というか、ミツバチやその他の生物の生態については注釈が入り、親切な作品だなと感じました。ハチの生態について勉強になりますが、もちろん小説なので、そのあたりはリアリティをもったお話として楽しめます。
面白いんですよね。シンプルに。
ただハチたちの様子を描いているだけでは多分こうはならなくて、一匹一匹のハチごとに章が分かれて語るという手法で描かれているからこそ、リアリティが出るのだと思います。先輩バチのサナエさんが死んだ後、そのはなむけのようにかかる虹。それはハチの目にしか見えない二重虹で、我々人間には見られないものなのだと思うと、なんだかしんみりとしてしまいました。
女王バチの権力争いのくだりもよかったですが、それよりは雄蜂(ドローン)たちの悲哀が胸にグッときましたね。ハチの巣はオスとメスがいなければ成り立たないけれど、オスの仕事は子を残すために交尾をすることだけ。しかもその後死ぬ。せつない。マサフミという雄蜂のお話が、読んでて一番胸に迫りました。好きな子を守るために命を呈したし、本人(ハチ)はそこまで考えてなかったかもしれませんが、結果的に巣を守ることにつながったんですよね。よかった。よかったね……。でも滅んでしまう巣。やはりせつない。全体的に胸がきゅっとするお話でした、よかったです。


ヒューマナイズ・ラブロマンス
作者 武州の念者
https://kakuyomu.jp/works/1177354054891995903

教:えー、武州の念者さんの二本目です。今回もやはりボーイズラブもの。俺にそっち方面の嗜癖があるかと言えば全然ないのですが、この作品はすごかったです。素養のまったくない俺の魂を以てして震え上がらせるような、匂い立つようなエロスを感じさせる小説でした。率直に言えば、エロい。エロかった。玄冬の正体とそこから導かれる一連のシーンにはやや唐突な印象を受けたものの、そこはあくまでさらっと短く流していたあたりが全体の流れとして適していて好印象です。結末は、まあこの手の構造のSFラブロマンスとしてはまあよくある感じですが、ちゃんと着地していて悪くない。

巨:『ミステリアスショタロボの恩返し』
ショタい。ひたすら耽美でエロくてショタい作品。
ダメだって。いけない道に目覚めちゃうって。ダメダメ。でも読んじゃう。
特に7話が一番アレですね。アレです。エロ耐性ないと持っていかれるゾ。
個人的にはもっと触手ロボに頑張って欲しかったのと、ハッキングの最中に無防備なボディが壁にプレスされたりとかで半壊要素も欲しかったですね。最初の出会いの時の姿に戻るけど心の中は全く違うみたいな。
最後はハッピーエンドで良かったです。姉の感情も気になるし、おねショタもいけそうなのも強い。アンドロイドなので八兆点。

刑:武州の念者さん、二本目の参加ありがとうございます。
またもや男性同士の性描写あり、ということでちょっと身構えてしまいながら読んだのですが、読み味は「閏怨の夢」のエロスとはまた違った感じです。むしろ、こちらの方がエロス描写は多めで、生々しいといえば生々しいのですが、なんていうか。愛。愛ですねこれは。わたしは腐女子でもないし、BL小説も読み慣れないし、今まではどちらかといえば「ホモセクシュアルを描いた創作物」というもの苦手意識があったような気がします。現実に存在するそういう性の方には、特に否定的な感情も持っていませんし、性別なんて関係なく、愛の形は無数に存在するとは思っているのですが、だからこそ、創作の文脈で生々しく語られるとちょっと引いてしまう、みたいなところがありました。いや、それをいうなら男女のエロス小説だって同じなんですけどね。そういうことではなく。やはり、「創作世界での同性同士のエロス」というものに、ちょっと苦手意識があった気がします。
この作品はその苦手意識を超えてきました。薫と玄冬の間には確かに愛と呼べる感情があって、だからこそ離れたくなくて。別れのシーンのせつなさと、二人の心情を想像したときにの悲しさに脳が揺れました。
小六から老人まで薫の時代が流れた時、「あっ! 二人はまた出会えたんだ」と思わなくもなかったのですが、こちらではまた別種の別れの悲しさが発生します。寿命です。これもしんどい。この……なんていうか別離の悲しさというものを描くのが実に巧みな方だな、と思いました。
ラストシーン、陽光の元で。美しい別離の描写、その情感についても語らずにはいられないのですが、この作品を読んで、同性愛小説に対するわたしの感情が大きく変わった気がします。勉強になりました。ありがとうございました。


いけいけ!ぼくらの!ブラックサンタ団!!
作者 @dekai3
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892331914

教: いわゆる一つのスラップスティック・コメディー的なやつですね。異能者が入り乱れ、斬った張ったをしたりドラマを展開したりする感じの。ただいかんせん、尺に対して登場人物が多すぎます。特に三人組、あまりにも駆け足で紹介が入る上に個別の見せ場も少ないのが痛恨で、キャラを掴めないまま終わってしまいました。これだけのプロットがあるなら話をふくらませて長編でやるか、さもなければ必然のないプロットはばっさり本編から削ってシンプルにするか、どちらかが望ましかったかと。

巨:『冬の特撮映画。ブラックサンタと守護者のクリスマス』
ショタが ショタッ って登場するのはワールドクラスの常識。死海文書にもそう書いてある。

刑:「あんたは悪い子! この私、ブラックサンタが決めるわ!!」
いや、決めちゃうのかよ!
みたいな楽しいお話です。半角オノマトペでいちいち笑かせにくるような、王道なのか変化球なのか判断に迷う感じのドタバタエンタメ。「普通のサンタクロースとは違い、悪い子にじゃがいもや石炭を与える、サンタとは真逆の邪悪なサンタである」ブラックサンタは、精霊でありチート能力を持っているミニスカサンタという濃いいキャラクターなのですが、そのほかの登場人物も全員濃いいので存在感が互いに主張しあって非常に賑やかです。楽しい。なんかノンストップな感じでお話は進み、ノンストップな感じで激しいバトルに突入するのですが、物語に一切の隙がなく、つよいです。エンタメとしての骨子がつよい。つよいエンタメなので、多少の無理……というかキャラの濃さも全然気にならなくて、全員主役級はれるんじゃないかってくらいなのですが普通に面白いのは、単純に筆力が強いからだと思います。すごい。
ドタバタエンタメでありつつ、子供の間違いをちゃんと正す大人、という主題もきちんと描かれていて、爽快ですらあります。
読んでてむちゃくちゃ気持ちよかった、いろいろな性癖(ミニスカ巨乳とか)が詰まっていて、サイコーでした。クリスマス以外にも出てきて欲しいですね。季節外れのブラックサンタ参上(真夏)!!みたいな。


では次に、受賞作品の審査の模様です。

■受賞作品審査

教:では、大賞推薦作品三点の指定お願いしますー

巨:レベル高い作品ばかりで三つに絞るの大変ですね…
アンドロイド賞だと千石さんのが八兆点です

教:星だとアリスがぶっちぎりなんだよねー

刑:ありがとうございます……ブラックサンタはエンタメ賞。特撮みがあった

巨:青白のフリンケンス=ティーン、猫を被る猫、この世界が終わるまで〜Honey Beeの世界〜
  この三つが自分の推しです

刑:弁天島カイレル、猫を被る猫、サマーオヴオウルズ

教:サマー・オヴ・オウルズ、弁天島カイレル良子の未来予知、ヒューマナイズ・ラブロマンス

教:整理しますね
2票入った作品
サマー・オヴ・オウルズ/弁天島カイレル良子の未来予知/猫を被る猫
この三つが銀賞以上確定です
1票入った作品
青白のフリンケンス=ティーン/この世界が終わるまで〜Honey Beeの世界〜/ヒューマナイズ・ラブロマンス
このうちの一本が銀賞となります

あ、そうだ。誰がどのお題か、だけどきょうじゅが「邪悪なるもの」、偽の巨人氏が「人外女性」、偽の刑事氏が「世界の終わり」でした。

早速ですが大賞から決めて行きましょう

巨:吸血鬼・天使と悪魔・猫と、順当に強いし上手いのが候補に残りましたね

教:うむ。候補三点から 一人一票で 決戦投票でいいかな

刑:はい

巨:OKです

教:ではせーの

刑:弁天島カイレル

巨:猫を被る猫

教:弁天島

※この瞬間、『弁天島カイレル良子の未来予知』の大賞受賞が確定しました

刑:おー。弁天島、構成力が圧倒的だと思いました

巨:弁天島は三つ選ぶのに最後まで悩んだので確かにという感じです

教:トラックに突っ込まれたと思った。むかし、本物川で「トラックが来た」って言われたことがあるんだけどその感覚が初めて実感できた気がした

巨:トラック枠わかる

刑:最初読んだときは「?」てなってしまったんですけど後からじわじわわかる感がよかったでした。

巨:あるある系の奇人の話かなと思いきや、めちゃくちゃ壮大な百合

刑:そう!壮大なんですよね

教:暇を持て余した神々の遊び感ある。主人公は必死なんだろうけど

巨:天使と悪魔がイチャイチャする為に消費される世界という、人々からしたら迷惑すぎる話。で、「ド下手クソ」

教:次、金賞決めます。サマー・オヴ・オウルズと猫を被る猫、二択。これも決選投票でいきましょう

刑:せーの

巨:猫を被る猫

刑:サマー・オヴ・オウルズ

教:サマー・オヴ・オウルズ。ではサマー・オヴ・オウルズ 金賞、猫を被る猫 銀賞、以上決定です。

刑:おめでとうございました

巨:おめでとうございます!パチパチパチパチ

教:ではまずサマー・オヴ・オウルズについて。

刑:人間に隠れて暮らしてる吸血鬼ってわりとベタなんですけど、いろいろな要素が入っていてよかったですね。少女とか。魔物の血をすうシーンとか

教:人間の世界に混ざろうとしてあがく吸血鬼の物語。美しい。ちなみに俺が書くとレティシャが吸血鬼にされて終わる。でも苦しむ吸血鬼もいい。

巨:レティシャが赫手を抱きしめるシーンがエロすぎでしたね…

刑:わかります。そのあと頭痛が治ってるのもよかった

教:脇役というか、世界観の奥が深いのもいい。カイレルは世界観が虚構で、薄皮一枚なのがスリリングだけど、サマーは奥深さをのぞかせるのがいい

巨:カイレルは弱虫なままなんですよね

教:では次、銀賞一本目「猫を被る猫」

巨:猫チャンKAWAII!!!

刑:和風バトルのシーンが圧巻でした。そこに至るまでの女学生わやわやゆりゆりみたいなのもよかったし、ミステリー要素を帯びるところもよかったです

教:猫も時代小説も俺の守備範囲なので、どうしても逆に点が辛くなるんだよね

巨:妖怪が居て当たり前の世界がいいですよね。警察も強いし坊主も強い。妖怪好きとしては推さざるを得ない作品でした

径:あのさいごの猫が生き残らずに終わりを選ぶところがエモかった

教:エンタメとしては結構するする読めた。ちなみに作者、「ごぞうろっぷにしみわたる」氏です。そういうペンネームだそうです。

刑:センスいいなと思ってました

巨:この読み方に気付いた時はアハ体験でした

教:さて、銀賞二本目。どうしようか

巨:ちょっといいです?青白と蜂が自分の出した候補ですが、この二つなら蜂を残します

教:りょうかい

刑:わたしも、どちらを選ぶかと言われたらハチです

教:俺がどれに入れても同じだな。決定!銀賞二本目、この世界が終わるまで〜Honey Beeの世界〜。では論評に参りましょう

巨:小学校の国語の教科書に載せましょう

刑:ハチの擬人化と巣=世界という視点が新しかったのと、ものすごく調べて書いたんだろうなという感じがひしひし伝わってきました。その一方でちゃんとエンタメ(身を挺して好きな子を守る)みたいなこともしててよかった

教:小説大賞じゃなくて 偽教授杯の方だったら グランプリに選んだかもしれない。ただ 凄いんだけど なんていうか一撃必殺の威力みたいなものがもうちょっと欲しかった。

刑:なんていうか……小説なんですけど……

巨:教材ですよね。シートン動物記みたいな。

刑:そう、そんな感じです

教:エロいんだけど、童話だよね。大人の童話。
  では、2票入ってますのでその作品についても少し。

刑:青白、物理ぢからで殴ってくる感じの小説でした。悪魔を女の子にしたら人外女性もクリアできたのではと思った(少年でしたよね?確か)

巨:青白のフリンケンス=ティーンは単純に未完なのが惜しいかと。絶対に面白くなるけど、序章のみという

刑:「続きが読みたい」と思いました。切実に

教:長編で読みたいプロットだね。
  ではラスト、ヒューマナイズ・ラブロマンスについて。

巨:エロい

教:エロかった。

刑:エロい。

巨:www

教:新しい性癖に目覚めそうになる。すごい破壊力。

刑:新しい何かに目覚めそうになりました。性の目覚めではなく視野が広がるような感動があった

巨:武州の念者さんのショタと後庭の作品は危険ですね…洗脳力がある

教:最後に、全体について。

巨:全体的にレベルが高かったです。

教:粒揃いだったよね

刑:一万字以上のラインを書ける人となると自然とレベルが上がってくるので、皆さんハイレベルな作品をあげているなと思いました。

教:いっこ忘れてた。これ訊いとく。自分の出したお題をクリアした という意味で一番評価する作品は?

刑:(世界の終わり、を出題)弁天島ですかねやはり

教:(邪悪なるもの、を出題)俺も弁天島

巨:(人外女性、を出題)終わりの国のアリスです

教:では、偽物川小説大賞はこれにて終了ということで。おつかれさまふたりともありがとー

巨:お疲れ様さまでしたー!

刑:お疲れ様でした


 というわけで、以上をもちまして第一回偽物川小説大賞は終了となります。

 ご参加の皆様、読者の皆様、ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!

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